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UBP(ユニーク・バイイング・プロポジション)とは?「ビンゴ」が購買につながる理由
購買行動に影響するブランドの価値をどう伝えるかを考える上で役立つ概念が「UBP(ユニーク・バイイング・プロポジション)」です。
この記事では、関連するキーワードである「ビンゴ型コミュニケーション」のことも交えながらUBPについて噛み砕いて紹介します。
UBPとビンゴ型コミュニケーション
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トレンさん
年齢不詳のマーケター。物知りでトレンドにも敏感。
どんなちゃん
トレンさんの後輩。マイペースだが好奇心は旺盛。
どんな:マーケティングの新概念で「UBP」というものがあると聞いたのですが…。
トレン:UBPはユニーク・バイイング・プロポジションの略で、消費者から見た「自分だけが見抜いているブランドの価値」を意味します。これが、消費者にとっての「その商品を買う理由」になります。
横山隆治氏が提唱した概念で、書籍『SNSから抽出するパーセプションでつくる ビンゴ型コミュニケーションプランニング』で詳しく解説されています。
UBPについて順を追って説明しますね。どんなちゃんは、カスタマージャーニーマップを作ったことはありますか?
どんな:はい!消費者が購買に至るプロセスをすごろくみたいに描いたものですよね?ワークショップで作ったことがあります。作ったは良いものの、結局それっきりなんですが…。
トレン:そういう方も少なくないでしょう。カスタマージャーニーマップを作ることで、社内で共通認識を得られたり、施策のヒントになることもありますが、マーケティングの実務に活かせないというケースも珍しくありません。
というのも、実際の購買行動は、カスタマージャーニーで描いたように理想的な一本道を辿ることのほうがむしろイレギュラーだからです。
どんな:そうなんですよね~。購買というゴールまでの道筋が消費者ごとにバラバラで…。
トレン:そこで、消費者のブランドに対する「パーセプション」の組み合わせがビンゴカードのように揃うことで購買に至るというのが横山氏が考え出した「ビンゴ型コミュニケーション」です。パーセプションとは、商品やサービスを消費者がどう認識するかを表す言葉です。
商品を買ってもらうためには、購入の妨げになっているパーセプションを購入につなげるパーセプションに変える必要があります。消費者がそうだと思い込んでいる古いパーセプションを、実は〇〇という新しいパーセプションに変えるということです。
パーセプションが変わることでUBPが生まれ、「買う理由」というビンゴの穴が空いていくわけです。
どんな:それがいくつか揃うと、購入につながるというわけですね!
トレン:そういうことです。ビンゴになる番号が人によって違うように、購入につなげるために変える必要のあるパーセプションも人によって違うのです。
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「NINEパーセプション」でパーセプションを抽出する
どんな:ビンゴカードに並んでいるようなパーセプションって、どうやって導き出したら良いんでしょう?
トレン:パーセプションを抽出するためのフレームワークとして「NINEパーセプション」があります。次の9つの項目でパーセプションを考えていくというものです。
売り場パーセプション
コストパーセプション
企業パーセプション
カテゴリーパーセプション
選択パーセプション
ベネフィットパーセプション
マイナスパーセプション
トレンドパーセプション
ソーシャルパーセプション
この9つそれぞれで、現在のパーセプションを「Before」とし、目指すべき変化後のパーセプションを「After」に整理していきます。これを「ビンゴリスト」と呼びます。
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どんな:消費者のパーセプションを考えるヒントってないんですか?
トレン:企業視点ではなく消費者のリアルなパーセプションを集める方法としてSNSを使ったソーシャルリスニングが有効です。詳しくは書籍を読んでくださいね。
ワイヤレスイヤホンでビンゴリストを考える
トレン:イメージしやすいように、ある「ワイヤレスイヤホン」を例にビンゴリストを整理してみましょう。
あくまで「例え」なので、実際に分析して抽出したパーセプションではありませんよ。雰囲気をつかんでもらえればと思います。
このイヤホンは、新興メーカーから発売された商品で、特徴的なデザインが評価されているとしましょう。機能的にも自分好みの音に調整できたり、こだわって作られています。その分、価格はやや高めです。
この商品のビンゴリストを作ると、こんな感じになります。
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どんな:なるほど~。順番関係なく、これらのパーセプションのいくつかが変わると「よし買おう!」となると考えると、イメージしやすいです!
トレン:「Before」のパーセプションを「After」に変える方法を考え、マーケティング施策に反映していくということになります。
「自社ならではの価値」を意味するUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)は有名ですが、USPの思想だとどうしても企業視点になってしまいます。
消費者の立場でリアルに物事を捉えるためにも、UBP発想も取り入れていきたいところですね。
どんな:はい、わかりました!
参考文献:『SNSから抽出するパーセプションでつくる ビンゴ型コミュニケーションプランニング』(宣伝会議)
執筆:スプ論編集部