顧客体験(CX)改善の「はじめの一歩」に使えるフレームワーク
「顧客体験(CX:Customer Experience)」という言葉はよく耳にされると思いますが、実際のところ、これってマーケティングにどう活かせるの?まず何をしたら良いの?って思っている方も多いんじゃないでしょうか。
この記事では、顧客体験(CX)を改善するためにすぐに活用できるフレームワークをご紹介します。
そもそも「顧客体験(CX)」とは?
顧客体験(CX)とは商品やサービスを利用する際の顧客視点での一連の体験のことを指します。具体的には以下のようなものが含まれます。
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店舗での接客
店内の雰囲気
製品やサービスの使用感
アフターケア
つまり、購入前から購入後までのさまざまな体験すべてがCXに該当します。フィリップ・コトラーは『コトラーのマーケティング5.0』のなかで「CXは顧客が製品に触れる可能性のあるすべてのタッチポイント」であるとし、「CXは事実上、企業がより大きな顧客価値を生み出し、提供するための新しい効果的な方法になっているのである」と述べています。
なぜ「CX」が重要なのか?
顧客ロイヤルティの向上
CXは顧客のロイヤルティを高める上で非常に重要な要素の一つです。CXを向上させることで、多彩な効果が得られると期待されています。
差別化の新たな手段
昨今、多くの企業が「自社の商品・サービスが選ばれ続ける理由」探しに苦心しています。なぜでしょうか?
それは、成熟した市場においては商品・サービスの機能や品質面で差別化することが難しくなっているからです。そこで注目されているのが、「体験」による差別化なんです。
驚くべき効果
実際、CXの改善がもたらす効果には驚くべきものがあります。アメリカのウォーターマーク コンサルティングが2024年に行った調査によると、CXリーダー企業は、そうでない企業と比べて、なんと総収益が5.4倍も高いそうです。
だからこそ、今や世界中の一流企業がCXの改善に本気で取り組んでいるんです。日本企業も、この波に乗り遅れるわけにはいきません。
CXを改善するには?
では、自社の商品・サービスが選ばれ続けるようなCXを提供するには、どのように取り組んでいけば良いでしょうか。ここでは3つのステップを紹介します。
Step 1: 現状のCXを正しく把握する
CXの範囲は広く、一度にすべてを改善しようとしてもうまくいきません。まずは現状を把握し、「どこから着手していくか」を決めることが大切です。
ここで活用できるのが「カスタマージャーニーマップ」です。これは、顧客が商品やサービスを購入するまでを旅になぞらえて整理し視覚化したものです。
カスタマージャーニーマップを作成する際は以下の点に注意しましょう。
『認知』『情報収集』『購入』といったシーンで現状を洗い出す
企業の目線ではなく顧客側に立って考える
時系列に項目を並べていく
カスタマージャーニーマップの詳しい作り方は、次の記事をご参照ください。
Step 2: あるべきCXを考える
現状が整理できたら、次は「あるべき姿」を考えます。ここで使えるフレームワークが「ゴールデンサークル理論」です。
ゴールデンサークル理論とは、サイモン・シネックが提唱したもので、「WHY(なぜ)→HOW(どうやって)→WHAT(何が)」の順番で伝えることで人々からの共感を得られるというものです。
従来の多くの企業コミュニケーションでは、「WHAT(何が)」「HOW(どうやって)」の部分が重視され、「WHY(なぜ)」の部分が省略されがちでした。しかし、「WHY」から始めることで、顧客の感情や信念に訴えかけ、行動を促しやすくなるのです。
サイモン・シネックはAppleのプレゼンテーションなどからゴールデンサークル理論を見出しました。Appleが重視するのは、商品そのものの説明よりも「なぜその商品を開発・販売するのか」という部分。この姿勢が、Appleの商品が発売のたびにヒットし、ファンに愛される理由となっています。
iPhone 12発表時のプレゼンテーションは次のような構成になっています。
WHY(なぜ):私たちは、テクノロジーは人々の生活をより豊かにすべきだと信じています。
HOW(どうやって):そのために、私たちは直感的で美しく、そして驚くほど強力な製品を作ります。
WHAT(何が):私たちは世界最薄のスマートフォン、iPhone 12を発売します。
多くの企業は「WHAT」、つまり「世界最薄のスマートフォン、iPhone 12」という部分からプロモーションを始めがちです。しかし、「WHY」を中心に据え、「HOW」「WHAT」と続けることで、顧客の印象に残りやすくなります。
Step 3: 改善案を考え、実行する
CXの現状と理想的なストーリーを照らし合わせながら、以下のように具体的な改善案を考えていきましょう。
Webサイトで会社の理念(WHY)をよりわかりやすく伝える
商品説明で、開発の背景(HOW)にもっと触れる
顧客の声を集めて、製品改善に活かす仕組みをつくる
まとめ
CXの改善は、一朝一夕には成し遂げられません。しかし、コツコツと取り組むことで、必ず成果は表れます。
「カスタマージャーニーマップ」を使って現状のCXを正しく把握し、「ゴールデンサークル理論」によりあるべきCXの姿を明確にしましょう。
今回ご紹介したのは、あくまで最初の一歩です。CXの改善に終わりはありません。しかし、一つずつ着実に進めていけば、きっとお客様に愛され続ける企業になれるはずです。
執筆:ヒロキ(Sprocket)
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