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『赤線地帯』溝口健二監督

赤線地帯 溝口健二監督 1956年 を観ました。
溝口監督の遺作です。

(内容に触れるので、まだ観ていない方はご注意)

出だしから黛敏郎の風変わりな音楽、
これがドラマチックでモダンでいい…
一気に物語に引き込まれていきます。

豊満な足を組んだ裸婦の石像がカウンターにでんと出てくるのもよい。。

それがつるんとしてプラスチックで出来てるみたいで雰囲気出してます。
まあ、キッチュというのかな?

キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』の衝撃のオープニングに受けた印象を
思い出しました。


溝口監督の『赤線地帯』の方が10年以上前の作品のようです。


はじめて観た溝口健二監督。
凄かったです。
世界観がある監督なんですね。。

人物描写がリアルで普遍的とも言えるくらい、あぁ、こういう人身近にいるって思えました。
登場人物が生き生きしていて全く古く感じなかったです。

京マチ子がバーンと迫力の元気で。
若尾文子が美しい猫のような
とらわれない女性の強さを出しています。

とにかく美しい✨

女性たちはいろんな事情で赤線地帯に働かざるを得ないでいるわけですが、

わたしが一番好きになったのは、
乳飲み子を抱え、気弱な亭主と貧しい所帯を
持ちながら必死に生きるハナエ(木暮実千代)です。

なんて芯のしっかりした、強さも弱さもある素敵な演技、女優さんなんでしょう…

(檀れいさんの憧れ、理想は、
溝口監督作品の木暮実千代さんなんだそうです。

檀れいさんのドラマ「八日目の蝉」とても胸打たれた作品です。あの母親役から受けた印象に、木暮実千代さんが重なるところがあり、あぁそうだったのかと納得しました✨。)

ハナエの台詞は、苦しんできたたくさんの女性の代弁のようで、
わたしはぐっときてしまい涙がこぼれました。

「赤ん坊のミルクひとつ買えないで何が文化国家だ!」

「わたしは泥棒はしていない。自分の体を売って生きているだけ」

困窮し、先が見えずもう生きていけないと自殺をはかろうとした夫に体当たりして

「今生きてるじゃないか…」

男は観念的というかそこが弱さで、全部自分が悪いみたいな考え方をしていました、

ハナエは、周り、国家や社会が見えてるんですね。聡明なんです。衣装の眼鏡が良く似合ってました。「見届けてやる」と言ってました。自分も社会も。すごい芯が強いです。

映画を観た後も、悲惨な話ではありましたが、ひしひしと生きる強さを感じて今も余韻がさめません。

その力強さに共鳴することで、
わたし自身の力が沸いてきたような感じがします。(映画を観るって素敵なことなんですね。)

それにしても、なぜここまで女性たちが追い込まれなければならないのだろう。

考えずにはいられません。

今も昔も「貧しさ」に追い込まれていく民衆。その原因のひとつに戦争があるのは間違いないです。

映画の最後に、まだ幼い顔の少女が客引をする場面。。繰り返されるこの世界。
なんとも言えない気持ちになりました。

❄️
さて。

サヨナラを言おうとしています。

この言葉に導かれてきました。

サヨナラはバイバイ
バイバイは売買…

「赤線地帯」は人身売買の話です。

それは形を変えながら、
日本で、世界中で、今も尚
行われていることを考える。。

サヨナラに導かれて観た映画
熊井啓監督の「サンダカン八番街娼館」

この作品はからゆきさん
大きな人身売買であるからゆきさんの歴史を知った衝撃の作品でした。

昨日、松本清張原作の映画「ゼロの焦点」を観たのです。立川のパンパンが出てきて、そこから気になり、調べて今日溝口健二監督の作品を観ることが出来ました。

ひとつの作品がまた別の作品へと導いてくれるようです✨

作品を観ながら、いろんなことを考える。
この時間を大切にしたいです。

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