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新規事業担当者の行動量を評価することで、真のやる気を見極める。

「結果がすべてだ。」
このように考える方は多いかと思います。特に、プロフェッショナル意識の高い人はそうでしょう。

結果がすべて、という例でよく取り上げられるのが、プロスポーツ選手です。例えば野球選手は世界一練習しても打率が上がらなければ、世界一の報酬をもらえるわけではありません。成果が出なければ解雇されるでしょう。まさに結果がすべての世界です。

アメリカでもプロフェッショナル職は、結果がすべてで数字を出さなければ解雇の危機に立たされるといいます。その点、日本は甘い。日本人はぬるま湯につかっているという論調があちこちで見られます。

では新規事業にこの結果制度を取り入れるとどうなるでしょうか?

例えば、会社の目標が5年で100億円の全く新しい事業を作ること。できなければ解雇(ちなみに目標が高すぎる、と感じられる方もいるかもしれませんが、ある程度の規模の会社ですとこのような目標は珍しいものではありません。)。

ある程度、新規事業開発の現状を知っている方であれば「これは、完全に泥船だ。」と思うでしょう。そうすると何が起こるのでしょうか。

要するに物事を現実的に考えられる社員は、たとえやる気があっても新規事業部門には行きたがらない。という現象が発生します。無理やり移動させる方法もあるでしょうが、結果で評価される限り既存部門よりもはるかに悪い評価となりますので転職される可能性が高まります。

その結果、新規事業に関する知見が社内でたまっていかず、衰退が確実に決まっている既存部門の利益にすがり続けるという事態に陥ってしまいます

では、どうすればよいのでしょうか?

少なくとも新規事業部門の初期段階では、行動数を評価するのが良いと私は考えます。これは、なにも私だけが考えていることではありません。かの有名なキーエンスご出身の岩田さんが「数値化の魔力」というご著書で、キーエンスの行動評価制度を公開しています。

この著書の中でも
結果=「行動の量」×「行動の質」
で示される。と記載されており、仕事の結果=確率だと述べられています。単純なことですが、意外に忘れ去られやすい考え方であり、真理をついた不変の公式です。

鋭い方ですと、「結果」は「行動量」に比例するのだから、新規事業だろうが、既存事業だろうが「結果」で管理すればよいのでは?と思うかもしれません。まさにその通りではあるのですが、重要なポイントは新規事業と既存事業とでは「行動の質」に大きな隔たりがある。ということです。

既存事業は、ありとあらゆるデータや商慣習が蓄積されていますので、打つべき行動の質は新規事業に比べて圧倒的に高いのです。また、既存事業では、ある程度のブランドや認知度も確立されているでしょうから、能力が同じ人であっても、まったくブランド力のない新規事業より既存事業のほうが、圧倒的に行動の質が高まります。

「数値化の魔力」でも述べられていますが、「質」よりもまずは「量」を改善するほうが容易ですから、そこに新規事業では着目すべきです

もちろん、がむしゃらに行動しても無駄ばかりが生じますので、まず一定の行動量を設定したうえで、質をいかに高めるか?ということに注力すべきでしょう。(注意したい点は、質と量のどちらを優先させるかはその組織の文化によるところがあります。やたら行動だけは速いが結果が全く出ない、という組織では質がなぜ低いのか?を考察するほうが良い結果をもたらします。)

また、行動量を数値目標化することで面白いことがわかってきます。
それは新規事業担当者の真のやる気です。

大抵、「新規事業開発についてモチベーションは高いか?」と尋ねると、多くの場合yesと返答してきます。また、年配の方ですと、武勇伝を語りながら、あれがよい、こうすべきだ、などいろいろな意見を出してくれ、やる気を表現してくれます

ところが面白いことに「じゃあ、毎月、どれぐらい達成したか行動量で確認することにしましょう。」といった途端

「そんなものに意味はない。」「別にやることがあるはずだ。」「そんな行動量では新規事業の成功は評価できない。」などなど、さっきまでやる気満々をアピールしていた人が、一気に、てのひらを返してくるケースが多く見受けられます

では、「どのような行動が新規事業の成功につながるのか?」と質問すると「それはやってみないとわからない。」と言い始めます。

「では、具体的に何をするのですか?」と質問すると
「展示会に行ってくる。」とか「〇〇会社にヒアリングに行ってくる。(ちなみに〇〇会社にはその方の知人が在籍している)」といった返事があります。

「展示会に行くことによって何が得られるのですか」と問うと「まず行ってみることで様々な情報が得られる。」と言い、「では、得られたその情報は次に何に生かされるのですか?」と問うと、「アイデアにつながる。」と言います。

ここまで来て、「では、展示会後、アイデアを20個発案して、みんなに公表してください。」と言うと露骨に嫌な顔をしたりする人がいます。

おそらく、こういうタイプの方はやる気は無いのでしょうが、面白いもので「自分はものすごくやる気がある。」と躊躇なく言うことができたりするのです。

もしかすると本人は、本気でやる気があると思っているのかもしれませんが、そうであれば、自分を客観視する能力が著しく低いことを示しており、別の意味で問題なのです。

少し厳しい意見かもしれませんが不確定要素が高い事業は、その不確定さを言い訳にさぼる人も出てきます。新規事業に遊び心は必須ですが、ぷらぷら遊んでいるだけで大成功できるほど世の中は甘くありません。

口だけ達者なメンバーは新規事業開発組織全体のモチベーション悪化につながりかねませんので、客観的に評価できる基準は設けておきたいところです。

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