ウチのカレー
子供の頃からこだわりが強く、食いしん坊のくせに食べられないものが多かった。野菜、嫌い。肉、嫌い。好きなものは梅干と卵と納豆。
うちの母のカレーはいわゆるTHE 日本のカレーで、玉ねぎ、人参とじゃがいもがごろっと入ったポークカレーだった。「カレーは辛いから食べられない」、多分そんなふうに文句を言ったのだろう。母は私のために、別鍋で甘口を作ってくれた。
大人になり好き嫌いも大分克服し、インドカレー、タイカレー、欧風カレー、日本のカレー、いろいろ食べるようになり、カレーの深さがわかってきたが、結婚して子供ができると子供たちが好きなものを中心に料理するようになった。私に似て好き嫌いが激しい子供たちも、日本のカレーが大好きだ。
海外に住んでいるので夏休みぐらいしか日本へは行けないが、滞在中はカレー屋さんに何度も足を運ぶ。カツカレーが大好きな次女がリクエストをするためだ。
最近は子供たちも大きくなって、多少自分の好みではないものを食卓に出しても文句を言わないようになってきた。
そしてパンデミックになり、私は家で野菜を作り、添加物が多い市販の〇〇ミックス等を使わなくなり、自分でスパイスを合わせてカレーを作るようになった。
今年の夏は茄子が大量に採れたので、昨日はオーブンで焼いたものをカレーに乗せてみた。野菜とスパイスたっぷりのカレーのルーはスティックブレンダーで全部滑らかに潰し、茄子と豆腐をトッピング。
自分でも納得できる自信作に仕上がった。
カレーに脂身の多い肉をたっぷり入れたりすると油の量が増えたりするが(といっても自宅で作るカレーの肉は、店で出しているのと違って脂の量はそれほどでもない)、熱いうちは溶けこんでいてうまいし、残った分を冷蔵庫で保存するとピュアな肉の脂は塊になって浮いくるので、(少しは)冷たいうちに取り除くことが出来る。
市販の(日本の)カレールーで作るカレーは、ルーの中に脂が溶け込んでいる形で、冷たいまま舐めるとザラザラと舌にまとわりつく。温めるとあまり感じないのだが、この頃は年のせいかすぐ胃がもたれるようになってきた。どれくらいの脂がどうやってあの固形のルーに収まっているのか、素人の私にはよくわからないが、出来ることなら”なぜ”がわかるものを食べたいと思う。
子供たちが好きな、日本のカレー。
私自身もカレー屋巡りをしてみたいし、小売店に並ぶレトルトカレーを眺めているだけでも楽しい気分になる。そのうちいくつかに手が伸びてしまうが、材料に肉類が入っているものは海外のうちには持って帰ることが出来ないので、「美味しそうだから食べてね」、とさも母のために買ってきたようなふりをして実家に置いてくることになる。
でもこれから、日本のカレーがうちの食卓に上がる機会は減る一方になるだろう。
いつか、小さな子供たちがうちに食事に来てくれたら(縁があるかわからないが、孫という存在ができたら)、甘めの日本のカレーを作って一緒に食べたい。