アントン・ブルックナーのアダージョ(弦楽五重奏曲)

交響曲作曲家ブルックナーの室内楽の大傑作「弦楽五重奏曲」が私の街で演奏されるというレアな機会があったのですが、仕事の折り合いがつかず、聴きそびれてしまうことがありました。それ以来、この曲を死ぬまでに実演で聴いてみたいと思い続けています。

ブルックナーはポピュラーな小品などには無縁だったので、音大でピアノを勉強しても、ブルックナーなんて知らないなんて人はたくさんいて、ブルックナーを好むのはむしろ、楽譜も読めない、楽典もろくに知らないという、素人の音楽愛好家がほとんど。でも聴かせるための音楽、聴いてもらうための音楽。そういう音楽があってもいい。

音響に身を浸しているという素敵な音楽体験を、誰よりも味わわせてくる大作曲家ブルックナーを聴く醍醐味は、まさに音の森林浴。

手元に弟子フランツ・シャルクがピアノ編曲した楽譜がありますが、#が6つも並んだ変ト長調の半音階的転調だらけの音楽。演奏する弦楽奏者たちが怖気づくのも無理はない。滅多に演奏されないことにはわけがあるのです。でも聴いている人にこれほどの音楽的至福を与えてくれる音楽は数少ないという素敵な癒し系音楽、聴いてみてください。

でも実演で聴けるのはいつの日か。

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