完璧な韻文で書かれた物語詩、ルイス・キャロルの「The Hunting of the Snark」。
韻文とは文字通りに韻を持つ文のこと。
文章の終わりの単語の音のパターンと、続く文の終わりの音の形が一致すると韻を踏んでいると言います。英語でRhyming。
現代詩には韻を踏まない詩が多いのは、韻を踏むと伝統的な形式を踏襲する詩の形式を持つようになり、格調高くなるといえますが、逆に音の言葉の形式にとらわれて自由なことを語れなくなるからです。
韻と踏まない詩ならば誰でも書けるけれども、韻を踏んだ、音のリズムを重んじて書かれた詩はまさに名人芸の言葉遊び。
そういう詩は音読すると詩の面白さが最大限に楽しめます。
韻文と言っても、格調高い文章ばかりではなく、語呂合わせや言葉遊びに特化した詩もあり、そういう作品はジャンル的に Limerick(五行で書かれたユーモア詩、韻を踏むことが決まり)と呼ばれます。
個人的には英語の俳句よりもずっと面白いと思います。
英語俳句は韻を踏む必要はないので自分には面白くない。音の面白さが欠如しているのです。
例えば、シェイクスピアを揶揄ったリメリックには次のようなものがあります。シェイクスピア劇の物語を知っているとニヤリと笑えます。
音読してみてください。
韻を踏んだ言葉の面白さを楽しみながら読み進めてゆくのは、英語というリズミカルな言語を理解できて本当に良かったと思える瞬間です。
物語そのものよりも、むしろ英語のリズムや音の面白さを味わうことに、英語詩を読む醍醐味があるかもしれません。
英語詩は音楽なのです。
ルイス・キャロルの詩は、英語の中でも最も音楽的に楽しいものの一つです。
作者は言葉遊びの達人なのですから。
我々が優れた楽しい日本語で書かれた百人一首や谷川俊太郎の現代詩を楽しめるように、英語ネイティヴはこんな音の響きの多彩さを楽しむのです。
ですので、日本語に訳されたものだけ読んでも、おそらく原詩の面白さを半分も味わえないことでしょう。
だから英語の詩に挑戦してみてください。詩は子供のためのものもたくさんあり、難しいものばかりではないのですから。
音読を聞いてみる
でもルイス・キャロルのスナークはあまりに長いので、少しずつ頑張って声を出して読むか、誰かに呼んでもらうか、無料の音読版をYouTubeなどから聞いてみるといいですね。
読み上げると30分前後かかるにもかかわらず、音読がいくつかYouTubeに上がっています。
コメント欄には「子供の頃に夢中になって読んだ、小学生の頃に舞台で演じた、英語のリズムを最高に味わえる」などの楽しいコメントを読むことができます。
音読は最初から最後まで読むと30分前後かかりますが、それでもとても愛されている物語詩なのです。
詩を原語を理解しない外国人が味わうのはなかなか困難なのですが、解説付きで読むと、何が面白いのかをすこしずつ理解できるようになり、世界が広がると思います。
この淡々としたナレーターの朗読はとても良いですね。
こちらは女声によるよりドラマチックな音読。
舞台で俳優たちに読まれることもありますが、この人形劇による映画はなかなか楽しいです。
ご理解いただけたでしょうか?
ルイスキャロル特有の造語も混じっているので、完璧にこの詩を理解できる人はいるはずもありませんが、音の面白さゆえに聞けてしまうのです。
でもゆっくりと各行の意味を吟味しながら読むと面白さは倍増します。
だから自分としては、わざわざ日本語に翻訳してみて、こうしてアウトプットして皆さんと楽しんでいます。訳すと深く文を理解しながら読むので、とても勉強になります。
三回目の今回は、第一部で記憶喪失で自分の名前を忘れてしまったけれども、それ以外のことはたくさん覚えているパン屋(パン焼き)のお話。
Fit the Third:The Baker's Tale
第三部: パン焼きの話
こうして、謎のスナークがビージャムだったら、自分たちは一瞬にして消えてなくなってしまうということをパン焼きの口から聞かされた船員たち。
スナークがなんであるのか、いまだにさっぱり意味不明なのですが、次からは長い航海の末にたどり着いた島を探索してスナークを探すのです。
ルイス・キャロルのノンセンス
作者の形容詞はかなり矛盾だらけなのですが、それがまたノンセンスらしさ。
静寂だと言っておきながら、金切り声なんてないとか。普通ならば、木の葉一つ動かないとか虫の声しかしないとかなのに。
やはりルイス・キャロルはおかしな人です。
そして彼の詩が発表されてから150年を経ても、こうして彼のヘンテコな詩を楽しんでいる人たちがたくさんいるわけです(笑)。
英語学習はキャリアやビジネスなどのための道具かもしれませんが、英語という言語そのものをこうして楽しめると、趣味としていつまでも遊べる対象になりますよ。
言葉遊びできるようになると、言語学習は最終ステージです。英語で駄洒落を言えるようになりましょうね(笑)。