おもちゃの宣伝のために書かれた「おもちゃの交響曲」

オリジナルのドイツ語だとKinder Symphonie なので「子供の交響曲」なのだけれども、日本語では「おもちゃ」の交響曲。でも意味的には全く正しい訳。

未だ作者不詳なのですが、交響曲の父ヨーゼフ・ハイドン作であるとされた時期もあり、またハイドンはハイドンでも、モーツァルトのザルツブルク宮廷時代の同僚のミヒャエル・ハイドンであるともされたこともありましたが、現在ではほぼパパ・モーツァルトのレオポルト作ということで落ち着いたようです。ザルツブルクに近いチロル地方のベネディクト会修道院の僧侶エドムント・アンゲラーの作である可能性も否定できないのですが。

この曲は正式名称は「シンフォニア・ベレヒテスガーデン」。ベレヒテスガーデンはザルツブルクに程近いために、ザルツブルクにゆかりの深い作曲家がこの曲の作者であるはずなのです。

ベリヒテスガーデンはおもちゃ工房で有名。「工房で作られたおもちゃ」の宣伝用に注文されて、たくさんの音楽が書かれたのですが(子供の頃のメンデルスゾーンも作曲:作品は行方不明)その中でもこの曲は最高傑作でしょう。

ちなみに風光明媚なベレヒテスガーデンはナチスのアドルフ・ヒトラーの山荘があった場所としても有名。手塚治虫の「アドルフに告ぐ」にも大事な場所として登場します。

ヴァイオリン界の鬼才ギドン・クレーメルはバルト三国の若手音楽家たちとカメラータ・バルティカを結成して、斬新な解釈によるクラシック音楽アルバムを作りました。

最高傑作は「アフター・モーツァルト」と題されたモーツァルトの影響を受けて書かれた現代作曲家の作品を収めたアルバム。「おもちゃの交響曲」は子供のおもちゃの音が効果音としてたくさん取り入れられている、現代音楽としてのモーツァルト!ずっと私の愛聴版です。気に入られたなら、第二楽章と第三楽章も探して聴いて下さい。音楽って音を楽しみながら奏でるものという原点に立ち返る演奏です。楽譜に指定されていない、愉快なオモチャがたくさん追加されていて、レトロフューチャーな一曲。

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