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二十世紀最大のパイ食い競争

アニメ世界名作劇場の第三作「あらいぐまラスカル」をここ数週間かけて見ていて、パイ食い競争が出て来ました。子供の頃には見たことなかったので、自分には初めて見るアニメです。

名作として誉れ高い素晴らしいアニメで、大人がこうして見ていても楽しめるし、いろいろ学ぶべきことが多いのです。

意図的なのか、アニメ製作者たちの英語力欠如が露呈したのか、Pai=Pie?
なんだかこのアニメに時々出てくる英語は文法など間違いだらけ
A contestは文法的に正しいけれども、横断幕に不定冠詞はなにか不自然
5$は今でも子供なんかがこんな書き方をします

1977年、日本の年号でいえば昭和52年の作品。

40年以上前の作品だからこそ、2022年の作品では決してこうは表現されないであろうという場面にしばしば出会えることは今まさに見るべき価値があるということですね。

作品のことはまた後日語りたいのですが、第31話のお祭りでのパイの話は面白かった。

パイ食い競争はアメリカならではですね。ラスカルは第一次大戦の頃、世界中でコロナに似たスペイン風邪が大流行していた頃のお話。

わたしはブルーベリーの産地であるニュージーランドの北島の内陸部に住んでいますが、ここにはパイ食い競争みたいなイヴェントはありません。

こういう品位のない、食を無駄にするイヴェントは文化的には考えられませんが、ところ変われば考え方も変わる。

こういうアメリカらしさは外国人には楽しいものです。フードファイターなんてものが存在する世界。大食いが見せ物になることが彼の国の文化です。ファーストフードも量り売りする国。わたしにはカルチャーショック。

日本も真似して日本にも大食い競争ありますが、わたしは個人的に好みません。

さてラスカルのパイ食いコンテストは、早食い競争なのであまり食を無駄にしているようには見えないのでいいですが、アニメではラスカルが主人公スターリングの早食いに闖入してご主人様と一緒になって大きなパイを平らげます。

手を使ってはいけない決まりで、出場者は手を縛ります。顔をパイに突っ込んで食べるわけです
腹ペコラスカルは必至の形相でスターリングを援護?

当然ながら反則なのですが、こういうラスカルは本当に見ていて微笑ましい。これがこのアニメの魅力の一つ。作品の真の魅力は別の部分にありますが、それはまた次回に。

パイ食い競争と言えば必ず思い出す映画があります。

ホラー映画の原作で有名なアメリカの大衆小説家スティーヴン・キングの「スタンド・バイ・ミー」です。

原作はThe Body。小学校を終えた四人の少年たちが数ヶ月後には別々の学校へと行くことになっているのですが、人生の大きな曲がり角、四人は最後に一緒に事故で亡くなったと言われる別の少年の死体を探しに出かけるのです。

映画は1986年のロブ・ライナー監督による不朽の名作。わたしはバッドエンドな原作の方が好き。でも美しい映像と少年たちの名演技は本当に素晴らしい。

夭折したリヴァー・フェニックス River Phoenix (1970-1993) の演じた繊細な心を持つクリス。リヴァーが早くに死んでしまったからこそ、本当に永遠の少年のまま。

不良っぽく振る舞っているけれども、
誰よりも誠実でゴードンを誰よりも理解する本当の兄貴のようなクリス

さて、スタンド・バイ・ミー。

主人公たちは森の一夜で小噺を披露するわけですが、主人公ゴーディーはある少年の復讐譚を語ります。

どういう風にこの物語が始まるかは映画をご覧になってください。

いつも馬鹿にされていじめられている肥満の大食い少年デイヴィはブルーベリーパイの大食い競争に参加。

町中の人は彼のお姉さんも含めて彼をLard-Assと呼ぶのでした。こういう肥満体少年はアメリカならではでしょう。

Lardは豚の脂。Assはお尻。つまりデブ Fatよりもひどい言葉。

少年がやりたかったことは勝つことではなく、いつも自分を馬鹿にしている町中の人たちに仕返しをすること。

だからデイヴィはコンテストの前に Caster Oil ひまし油をひと瓶飲み干して、生卵を食べておくのでした。

これでお腹がどうかならない方がおかしい。

でもすぐにはそうはならない。そこでコンテストに臨み、ひたすら食べまくります。ブルーベリーをひたすら飲み込むように咀嚼もしないで全てを胃の中に流し込んでゆく。

結果はもちろん思いのまま。

デイヴィの策略通りに思い切り吐いて、競技者は嘔吐物の匂いに釣られて吐き気を催し、みな嘔吐。そして会場中に嫌な匂いが充満して聴衆らもみなそこらじゅうに吐きまくる!

最後にはLardass Davieの勝ち誇るブルーベリーまみれの笑顔!

これで自分を馬鹿にしていた街の人たちに一泡どころか胃の腑を空っぽにさせて、彼は溜飲を下げるわけです。

40年ほど前にこの映画を見て以来、忘れられない名場面(?)。

これが語り手ゴードン少年の言うところのBarf-o-rama!

今日の英単語。

  • Lardass 直訳すれば、豚脂のケツ野郎、ケツのでかいやつ。太った人へと最低な悪口。使ってはいけませんが、理解できると英語理解が広がります

  • Barf 吐くもどすという意味の動詞や名詞。Vomitは普通の言葉ですが、Barf の方がくだけた言葉。嘔吐物といえばvomitusですが、これは堅苦しい言い方。Barfは文字通り「ゲロ」という俗な言い方。

  • Barf-o-rama を素晴らしい日本語にするのは大変ですが、-o-はof で、ramaはDrama。なのでゲロ劇場、ゲロ舞台という意味。嘔吐劇と訳すと格調高すぎ。英語は造語力に乏しいと言われますが、こんなふうに新しい言葉を作り出すこともできます。酷い言葉だけれども。

さて映画とアニメに触発されて自分もブルーベリーパイ焼いてみました。

アルミを底に使わなかったので、柔らかい中身が移すときに少しこぼれてしまいましたが、美味しいブルーベリーパイ出来ました。

焼き上がり直後は綺麗だったのに大きすぎて熱くて一人でまな板の上に上手に移せませんでした。フォトジェニックでなくて残念。

これからこちらはブルーベリー収穫シーズンです。来週にでも摘みにゆきます。

ほんの小さなサポートでも、とても嬉しいです。わたしにとって遠い異国からの励ましほどに嬉しいものはないのですから。