ノヴェンバーソング(ピアノとピッコロのための11月の歌)

おはようございます。11月(November)にぴったりな、素敵な紅葉が降り積もる情景が目に浮かぶ素晴らしいピッコロの歌があります。

小さな黒い菅体の楽器の高音域の音の威力は破壊的で、オーケストラが大音響で鳴り響いていても、たった一本のピッコロのフォルテはオケの音を貫き通して、コンサートホールの全ての観衆の耳に届くほどです(ショスタコーヴィチの交響曲など)。

でもあまりに高音であるがために、フルート・ピッコロ奏者は大抵、キャリアの終わりには右耳を壊してしまいます。高音を耳元で鳴らすのは危険なことなのです。ピッコロを収納するケースには耳栓を入れる空間が必ず設けられているほど。わたしの右耳が難聴気味であるのは間違いなく長年のピッコロ演奏のため。音楽家はこうして体のどこかを壊しながら音楽を奏でているのです。

ピッコロの高音は演奏者の肉体的限界に迫る恐るべきものですが、ピッコロの低中低音域の慈愛溢れる音は可愛らしい響きです。ニューヨークのユダヤ人作曲家マイケル・アイザックソン (1946-) のNovember Songはピッコロという小さな横笛の魅力を何よりも伝えてくれる佳曲です。

なんとも愛らしくてアニメの主題歌にでも採用できそうな懐かしさ。ピッコロを初めて手に入れたとき、この曲を毎日吹いていました。

国民的RPG「ドラゴンクエスト」の作曲家すぎやまこういちさんの名言に「音楽は心のタイムマシーン」がありますが、この曲を聞くと、ピッコロに夢中になっていたあの頃のことがあっという間に蘇ってきます。

音楽ほどに記憶と深く結びついているものはないのだという人の脳の仕組みの不思議に感動します。

「ドラクエ」の音楽を聞くと夢中でアフガルドを冒険していた中学生の頃のことが昨日のことのように、「風の谷のナウシカ」のメロディを聞くとリコーダーが大好きだった小学生の頃がまざまざと思い出されるのです。

アイザックソンのNoember Songもまた、わたしの大切な心のタイムマシーン。11月の小さな笛の歌、あなたにも好きになってほしい素敵な音楽です。

N響の名ピッコロ奏者、菅原潤さんのCDを愛聴してきましたが、YouTubeでは聞けないので、この録音でどうぞ。

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