どうして英語ってこんなに難しいの?: (24)カタカナのウとUとOU
前回、英語の二重母音がいかに単母音と違うかを紹介しましたが、Uの音が難しいなとますます実感するようになりました。
日本語のアオイウエオの音は全て英語の中にあるように思えますが、実はどれも微妙に違う。
英語発音を必死に勉強されている方はアの違いを意識しておられますよね。
四つある日本語の「ア」に似た音は別の音として発音しないと通じないので、英語発音上級者は必ず努力して違いに取り組みます。
例えば、RUNという単語。
「走る」などの意味で普段から使われるので、基本語です。
でも現在形と過去形、母音を区別できないと相手に理解されない。文脈から相手は理解してくれるのだろうけれども、それでは英語力不足。
おかしな音でも文脈から相手に理解させる人はコミュニケーション能力が非常に高いと言えるのかもしれませんが(笑)。
この二つの音は実は全然違う音。聞きなれてきて英語耳が育つとそう思えるようになります。
英語にはたくさん母音がある。でも全ての母音が難しいわけではない。
曖昧母音(シュワSchwa)はそれほど難しくないし、HeartやSharkのアはほぼ日本語と同じで問題なし。
短いイのことは前回解説しました。アクセントのないイは、口をすぼめて軽く息を出す。これだけで日本人英語の癖は雲散霧消します。
Measureなどのエも日本語のそれよりも奥からで、EggやEightのエと区別されないといけない。これはそんなにも難しくないし、間違えても癖があるけれども、まず通じます。
オは「オー」という場合と短い「オ」があるけれども、まあこれもさほど問題にはならない。
アメリカ式とイギリス式では「ア」に入れ替わったりするので、ネイティブの間でもなんだかいろいろな発音パターンがあるので、許容範囲の個性=アクセント?癖?とされるのかも。
でもとても難しいのはアイウエオの「ウ」。
そして二重母音の「オウ」です。
日本語のU
「ウ」の音はあらゆる言語で基本母音なのですが、やはりいろんな言葉で発音寳方法が微妙に異なります。
検索しているとこういう言葉に出会いました。外国人日本語学習者は日本語の「ウ」は難しいといわれる。
日本語ネイティブは、いかに日本語の「ウ」が世界言語中で特別な音なのかを認識していません。
もちろん私もそうでした(笑)。
英語話者はThの音がどれほどに世界言語の中で特別で特殊なのかを知らない(北欧諸国だけに特有な音。英語のThはヴァイキングの影響)。
でもここでは英語との違いにだけ、着目します。
英語のU
フランス語や中国語のウは全然英語とも違いますが。英語やヨーロッパ語では口をすぼめて前に突き出すことが多い。
さて、日本人間でも方言によって母音は大いに変わりますが、標準日本語ではやはり、英語ほどには口をすぼめないという音。
逆に日本人は英語の「ウ」を発音するには口をすぼめないといけない。
でもすぼめるだけならば、そんなにも難しくはない。
こういう音は日本語の「ウ」のままでも通じるけれども、口をすぼめて発音するとネイティヴっぽくなる。
さらには日本語の「ウ」よりも舌を後ろの方に持ってゆくとさらに英語的になる。後ろは後ろでも上の方に下を引くと、完璧ネイティヴになる。
「ウ」の音は口の奥の上側で作られることがわかります。
でも口の形も大事、
その上に舌を真ん中ほどに持ってゆく、というか舌の位置を低くする。英語は喉ばかりか舌の言語でもあるのです。
舌も筋肉でつながっています。筋トレですよ。舌を思いきり動かす練習をしないといけません。負荷をかけると、筋肉が発達するのは、腕立て伏せでもスクワッシュでも同じこと。
単音の「ウ」はさほど問題でもないかもしれない。一応日本語そのままでも通じるから(でも違う音ですよ)。
問題は「ウ」を伴う二重母音です。日本人は
「アイ」Isolate, Climb, Isle, etc
「エイ」Communicate, Take, Stomachache etc.
などには困らないけれども(母国語次第ではこれらの音も難しい)、
「オウ」Boat, So, Road, Show, Only, Alone, Goal, No, Go etc.
が全くできない。
訓練しないと、この二重母音の後ろの「ウ」の部分はまず発音できません。
Yes/Noの否定語を「ノー」ではなく、まずは「ノゥ」と言えるようになるといいですね。
二重母音ができないと区別できない単語
日本語の「ウ」そのままでも単音ならば通じることは多いです。日本人なので日本語訛りがあると相手に理解があれば、理解してくれます。
でもよく知られた例、
などは発音上で区別できないと理解されません。Today is cold(今日は寒い)と言いたいところで、発音が悪いとToday is called(今日は呼ばれた)と相手には聞こえるかもしれませんよ。
混同しても文意からこれらの言葉はしばしばきちんと理解されますが、相手に無理に理解を求めているアクセントのある英語と言えるでしょう。
カッコいい英語は「オウ」をキチンと発音していないとだめです。
Won'tとWantならば、日本語のウを入れれば「ウォゥント」と「ウォント」で区別できるといわれるかもしれないけれども、
本来の間に入るべき「ウ」はwではなく、ʊ。
このUみたいだけれども、壺のように真ん中が膨らんでいる「ʊ」を発音できないといけない。
舌の位置の違いが判るでしょうか。「U:」では舌が奥の方に引かれている。
日本語的な長い「ウー」は無意識に舌が後ろに引かれてしまうけれども、二重母音のための「ʊ」は意識して下に動かすようにしないと英語的に「オゥ」とは響きません。なんとなく舌を下の歯の方に押し下げる感じ。
すぼめた口の「オ」からさらにすぼめた「ウ」に。舌を下に動かすように!
とにかく英語の「ウ」の発音。
舌を動かしてみて音の変化を体感してみてください。舌の位置の違いはとても微妙だけれども、馴れてくると出てくる音は全く別の音に思えてきますよ。
この下の位置で上記のShouldやWoodを発音すると、日本語の癖が抜けて、英語ネイティブの音になります。こういう単語たちです。
二重母音にもこの中間の位置の舌で「ハウス(ハゥス)」とか「スープ(スゥプ)」とかを発音すると、英語ネイティブの発音です。
くぐもったような「ウ」の響き。これを体得できると
と言えるようになりますよ。
英語上級者の発音でも、わたしはこのウの音からネイティヴではないなとか見破ったりもします(笑)。
「ア」や「イ」や「エ」を完璧にマスターしている上級者でも、なかなか発音できていない母音と言えるでしょうね。
さて最後に日本人には飛び切り難しい二重母音の英単語をご紹介いたしましょう。
「Sumoは相撲だよ、日本の国技だよ」と言いたくなるけれども、英語ではMoの音は二重母音。
この単語を英語を喋っている中で、英語式に喋れたら、あなたは本当にすごい!(笑)
日本人は英語の中に日本語は日本語ネイティブとして発音してもいいかもしれないけれども。外来語として英語に取り入れられた相撲は音が違うんです。カラオケも同じですね。
Sumoがなんであるかを知らない人は、日本語的に正しい発音だと(英語的に間違った発音だと)まず間違いなくSmallと聞き違えます。
舌を真ん中の位置に持ってゆかないと、AI発音矯正ソフトでは「ʊ」は子音のWと理解されてしまいます。Wは舌の位置を動かさないで日本語的にウと短く発音すると発音できる日本人にはおなじみの音です。
súːmoʊはsúːmowと勘違いされてしまう。何度やってもAIはだめだと言って苦労しました。
機械の判定はシビアです。
ああ英語って難しい。
参考文献:
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