父子鷹の饗宴:ヴィヴァルディの合奏協奏曲作品3の8
父親ダヴィードは20世紀最大のヴァイオリニストの一人。ソヴィエト連邦の音楽を体現した人でした。息子イゴールも相当の手練れです。そんな二人が共演したヴィヴァルディのダブルコンチェルト。
この曲はヴィヴァルディが生前に出版した代表作。全12曲の曲集ですが、今回取り上げた第8番を含めた、うち5曲をヨハン・セバスティアン・バッハはオルガン曲に夭折するヴァイマル公子ヨハン・エルンストのために編曲しています。
BWV593が第8番。バッハが編曲したヴィヴァルディはイタリアの明るさがバッハ的な緻密な和声と対位法と組み合わさって、メロディのキャッチ―さにおいてはヴィヴァルディの方が上なので(バッハは万人受けする通俗的なメロディは書かなかったため)バッハの全てのオルガン曲の中でも最も魅力的なもの。
原曲の合奏協奏曲は現在ではバロック時代の楽器を復元した古楽器で演奏されるのが一般的です。メロディを派手に歌えない古楽器だと生き生きとしたリズムがとても印象的になりますが、ヴァイオリン音楽としてはカンタービレなモダン・ヴァイオリンで聴くのが好きです。
作品3第8番は全12曲のなかでも最もメロディの魅力に富んだもの。バッハのオルガン編曲で親しんできましたが、教会の楽器オルガンではないヴァイオリン・オリジナル版を聴くと、ヴィヴァルディが生きていた遠い18世紀ヴェネツィアを吹き抜ける風を体感するような思いにとらわれます。
第二楽章のソロヴァイオリン二本のデュエットはバッハのドッペルコンチェルトBWV1043 にも匹敵する深い情感にあふれています。バッハのオルガン編曲版よりもこの部分はオリジナル版が好き。
鮮烈なイ短調の調べは今日もまた頑張ろうという思いを引き出してくれるものではありませんか。元気にしてくれる音楽。今日も精一杯頑張りましょうね。
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