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英語の言葉遊び(18): だじゃれ編
今朝、上司から面白いメイルが届いたので紹介いたします。
わたしはNZの国立大学に長年勤務していますが、大学は基本的に教養ある人たちの集まる場所なので、言葉遊びの達人が集うところでもあるのです。
同僚たちがランチやティーブレイクに使うキッチンがありますが、そこの水道の蛇口が長らく故障していました。
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お湯とお水が一緒の蛇口から出るタイプの蛇口、タップ、漢字で混合栓などというようなのですが、オーストラリアやニュージーランド、またはアイルランドや一部の英国などでは特に Bille Tapと呼ばれます。
このタイプのタップ(混合水栓)はオーストラリアで発明されたものらしく、オーストラリアではキャンプで水を沸かす鉄製の缶を「Billycan」と呼んだので、お湯が出てくるタップのBilleみたいなものだから、Bille Tapと呼ばれています。
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これがBillieと呼ばれているのです
Billeはご存じのように、Williamの愛称。ウィリアムはとてもよくある名前ですが、典型的な英国白人っぽい名前なので、英語では「ビリーの缶」はどこかの権平さんの缶みたいな意味。
さてその水道の名称を踏まえたうえで、こういうメッセージが届きました。
Great to see that the Billi tap is back in action in the tea room. Tea-riffic news. Mug-nificent. Great tea have it back. Seems it was really mist.
Sorry…will chai harder on the puns next time.
これを一読して笑えたり、吹き出したりできれば、あなたの英語力はたいしたもの!
わたしは開いた口がふさがりませんでした(笑)。同僚らも同様に面白がっていました。
こういう英語を楽しめてこそ、英語や英会話を勉強する価値があるといえます。頑張ってこんなシャレを笑えるレベルにまでなって下さい。
ここでのダジャレは同音異義語 Homonym を駆使したものではなく、似たような音の単語をお茶を飲むための共同キッチンを踏まえたうえで作られています。
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この写真は借り物ですが似ています
ちなみにダジャレのPunの発音は pˈʌn。牧神やピーターパンの Pan pˈæn とは違って(「エ」の口で「ア」の音を出す)弱く発音するアの音です(逆に(「ア」の口で「エ」の音を出す)。
さて、すこし解説してみましょう(冗談は解説するようなものではないのですが)。
Great to see that the Billi tap is back in action in the tea room.
ここではまだシャレは始まりませんが、BとBの音が重なっています
だからわざわざBillieなんて言葉を入れています
普通はWater Tapで十分
Tea-riffic news.
ティーリフィックとは Terrific=素晴らしいの「テ」の音をお茶 Tea にしたのです
Mug-nificent.
マッグニフィスントはMagnificent
Mag/mæg/をMug/mˈʌg/に変えています
Mugは当然ながら=「お茶を飲むカップ」です
Great tea have it back. Seems it was really mist.
Great have it backで通じますが、TeaはGreatのTの音を引き延ばした口語の言い方を誇張してます
MistはMissed。同音異義語
お茶を沸かすと湯気=Mistが出るのでMissedはMistです
Sorry…will chai harder on the puns next time.
Chaiはチャイティー。カルダモンなどのハーブと熱いミルクを入れて作るミルクティー
ここではChai/ tʃaɪ /はTry / traɪ /の代わりに使われていますが
英語ネイティブには理解されますが、少し苦しい(笑)寒いシャレかも。
だからSorryと言って、次はもっといいもの書きますって言ってるのです
ユーモアあふれる上司なのです!
まあこんな具合です。
さらにはこのシャレに対して、みんなが喜んで騒いでいる中、ある同僚はこう返しました。
I'm green with envy at your abili-tea
Green Eye=Green with envy
はシェイクスピアの「オセロー」由来のことわざで嫉妬するという慣用句
それに緑茶をかけている
Abilityは同音のAbili-teaに
なかなか秀逸な返しですね
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あれは憑りつかれたものを嘲る緑の目の化け物ですぞ
シャレの作り方
同音異義語でなくとも似た音を組み合わせるとシャレになる。
だから英語の下手な人が英語をしゃべっても、知性の高い英語ネイティブは考えて、こういう意味だろうとあなたのしゃべっている間違った発音の言葉でも理解してくれる。
たいていの言葉は発音が間違っていても通じるものです。
アクセントさえ合えば会話はできるんです。逆に発音完璧でもアクセントがズレてると通じない。
シャレの場合も似たようなもので、同じ音ではない、似た音なので耳で聞くと違和感がありますが(聞き取れない可能性もあり)、こうした書き言葉だとすぐにわかります。
これとよく似た例で、ある靴屋が店の名前を「Bootiful」にしたりしたのを見たことがあります(BeautifulとBootsをかけたもの)。
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同音異義語では英文学史上もっとも有名なダジャレはシェイクスピアの悲劇「リチャード三世」の冒頭の言葉。
悲劇なのに、シャレから始まるのが喜劇の達人でもあった言葉の魔術師ウィリアム・シェイクスピアらしさ。
彼の名前もウィリアムなので、ビリーと呼ばれたかも(笑)。
Now is the winter of our discontent
Made glorious summer by this sun of York;
SunとSonは同音異義語
この劇は前作「ヘンリー六世」の終わりに
宿敵ランカスター家のヘンリー王を殺して(つまり冬の時代は去った)
同じヨーク家の兄エドワードに英国王位を継がせた(われらの夏の到来)
リチャードが兄を除いて自ら王位に就く物語
非常に素晴らしいシャレによって悲劇が開幕するのです
英語のダジャレと言葉遊びに素晴らしく長けた作家で私が最も好きなのは19世紀ヴィクトリア英国のルイス・キャロル(「不思議の国のアリス」の作者)ですが、ルイス・キャロルの本がいまだに大人気で読まれるのも、私の同僚のような人たちがこういう言葉遊びのウィットを日々楽しんでいるからですね。
Have a great day!
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