リリー・ラスキーヌ演奏のヘンデルのハープ協奏曲

先日は名伴奏楽器としてのハープを語るためにシュポーアのコンチェルティーノを紹介しました。

伴奏楽器としてもっとも本領を発揮するハープの魅力は、ソロ楽器としても確かに素晴らしいのですが、あまりに演奏が難しい楽器で、以前カナダから来たハーピストのソロリサイタルを聴いたのですが、最初は良くても、ソロハープの音色だけを一時間以上も聴いているのは辛いなと感じずにはいられなかったのでした。

彼は確かに世界ツアーを敢行するほどの名手でしたが、同じ音ばかりだといささか単調だったのです。でもハープばかりでも聴いていて飽きることがないという、ものすごい演奏家も歴史上には存在していました。

20世紀最高のハープ奏者として知られていたフランスのリリー・ラスキーヌ(Lily Laskine 1893-1988)です 。彼女のハープは雄弁さの限りを尽くしたもので、グランドピアノのようなハープといえるでしょうか。

何を聴いても素晴らしいですが、ここではやはり分かりやすい合奏を選びましょう。全てのハープのための音楽の最高峰といってもいい、ゲオルグ・ヘンデル(ジョージ・ハンデル)の協奏曲はいつ聴いても心弾みます。

第一楽章の跳ねるメロディの愉悦感、第二楽章の愁い。第三楽章は旋律的魅力にいささか劣りますが、ハープの妙技をしっかりと楽しめます。

ヘンデルの生前からの大ヒット曲でもあったので、名オルガン奏者の作曲者ヘンデル自身が演奏できるように、オルガン協奏曲にも編曲されていますが、ハープで演奏されるのが一番いいと思います。

ラスキーヌがフルートのランパルと共演したモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲K.299」も、同曲最高の録音として名高いものです。軽やかなランパル並みのフルート奏者は今後も現れるかもしれませんが、ラスキーヌを超える輝かしい音色のハープ奏者は想像できません。こんなにも粒のそろった拍節感がしっかりとしたハープは彼女だけ。

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