点から 線へ
あの人が願っていたこと では
寄付を お願いすることにしている
価格をつけることも
できるだろう たぶん
そうやったとしても 受けてくれる人も
いてくれるだろう たぶん
しかし それは
何かが 違う気がして
寄付という形に している
展示会を 終え
一度見せる機会が 得れたら
描かせてくれた 本人に
送るというのを 決めている
*
その日も 他の会と同じように
インタビューから スタートした
いろんなことを 聞きながら
描くために 必要なエッセンスを
対話から 集めていく
多岐にわたる話を 聴かせてもらい
十分 素材は整った
そうして 絵の構想を
はじめようとした その時
語り手さんが 伝えてくれた
「お礼はどうしたら いいのでしょう」
お お礼
その言葉に 僕は驚いた
確かに 今までも
伝えてくれた人は いる
けれど そのタイミングは
絵を 描いた後に訪れているものだった
僕はまだ
インタビューしか していない
絵も 描いていない
詩も 書いていない
なのに なぜなのか
好奇心が湧き どうして
お礼を 考えてくれたのかを
聞くことにした
*
理由は こうだった
ああ そう受け取ってくれたのか
価値を すでに
受け取っていますよと
その人は 教えてくれた
確かに 自分の関わりは
点ではない
話を聞く前から 時間を作り
好奇心を持って 願いを聞く
いつからなのか なぜなのか
時折 問いをかさせながら
対話を続ける
エッセンスが 集まったら
次は絵の構想を 練る
一番に 願っているものは なんなのか
それを 象徴するものは 何か
台紙の色を 選び
発色を見るために 試し書きをしながら
仕上げていく
一日に 取り掛かる時間は
そこまで 長くはない
時間を重ねながら すこしづつ
絵は できあがっている
線の 関わりなのだ
それを 改めて伝えてくれた
*
大切に作り上げた プロセスだ
だけれども どこかで
それを小さく 扱ってしまっている
自分がいるような 気がした
いただいた言葉は
それに気づかさせてくれる言葉だ
届けている ものを
今よりも もう少しだけ
大きく 考えてみる
これからは それを
試してみようと思う
点から 線へ
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