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Sports放映権ビジネスの今後(FBやTwitterはSports観戦をどのように変えるのか)

MIT SSAC訪問レポートの第一弾として(SSAC自体の説明はこちら)、今回のカンファレンスの中で4大スポーツのリーグ関係者、メディア企業が多く話題に取り上げて見た放映権ビジネスについて、カンファレンスの中で議論があった内容を纏めて見たいと思う。

この話が特に盛り上がっていたのは、"The success of streaming: The new media model"というタイトルのパネルディスカッションで、パネラーはNBAのSVP, Digital MediaであるMelissa Brenner、MLB Advanced MediaのEVP of BusinessであるKenneth Gersh、WWE(World Wrestling Entertainment/アメリカのプロレスコンテンツプロバイダー最大手)のChief Revenue & Marketing OfficeのMichelle Wilsonの3名。 

WWEはいち早く、2014年に、従来のプロレスコンテンツをケーブルTV会社に対してライセンスするビジネスモデルから、Direct to consumers/OTT型のSubscription型のサービスを開始して、2015年にはSubscriberが1.5百万人・売上139百万ドルと全ビジネスの20%近くを占めるビジネスまで成長し大成功している。一方で、MLBやNBAも昨今、同じくCable TVへのライセンスからDirect to consumers/OTTのビジネスにFocusしている。特にMLBの子会社であるMLB Advanced MediaはそのOTTサービス提供(ストリーミング等)のインフラに多額の投資を行い、自社コンテンツの提供だけでなく、WWEやPGA Tour、NHL、HBO等のOTTビジネスにも貸し出しているところは興味深い。*詳細解説:MLBは多額のキャッシュと多くのゲームコンテンツがあるので自社のストリーミングインフラに投資する余力・メリットがある一方、その空き容量等を他社に貸し出す余裕がある。PGAやNHL等はビジネス規模が小さく自社でインフラ投資・管理する余裕がないことからMLBのインフラを使うことで初期投資や管理コストを抑えてOTTコンテンツを提供できるという相互メリットがある。後述のe-sportsのコンテンツ取得の件も含めて、MLBはスポーツストリーミングインフラの元締めになろうとしている様。

以下、議論があった内容の纏めになるが、「スポーツコンテンツの消費形態の変化(TV->PC/Mobile)によるOTTの増加」、「新たなスポーツコンテンツの出現(e-sports)」、「SNSのメディア・ユーザインターフェースとしての台頭」、「インタラクティブなコンテンツの重要性の増加」等の環境変化により、旧来型のMLB, NBA, プロレスといったコンテンツプロバイダーが、非常に積極的に仕掛けている、という点が印象的であった。日本でもパリーグTVやDAZNのJリーグの配信等、少しづつOTTの流れが来ていると思うが、まだまだユーザ体験を向上させる余地は多々残っている印象。USの最新のトレンドがら学べることは多くある。

・今後のスポーツコンテンツ提供の方向性:Direct to consumerによるコンテンツ提供は、今までの多くのコンテンツをバンドリングして定額で提供していたCable TVと比較して、よりそのスポーツ・コンテンツの価値を高く評価してくれるファンからダイレクトに収入を得やすいという点だけでなく、顧客の視聴行動のデータを個別に取れることも大きい。これによりコンテンツの改善やクロスセル(チケットやファングッズのセールス等々)にも繋げられる。NBAもMLBも、今までは月間や年間でのSubscription型視聴パッケージの提供が中心だったが、これからは顧客の好みの多様化によりフレキシブルなコンテンツの提供が求められる。一試合毎の支払いや、月数試合までといった新たなパッケージも提供してゆきたい。あとはアメリカ以外の国のファンには時差も考慮して(例えば欧州はアメリカのゴールデンタイムが深夜になるので)、翌朝に昨晩のハイライト動画の配信を行う等、個別の対応も重要になって来る。

・TwitterやFacebookがスポーツコンテンツのStreamingプレイヤーとして参入してきたことについて(Twitterは2016シーズンからNFLの木曜日の試合を配信開始、Facebookも2017年3月にMLS(Major League Soccer)の試合を配信することを発表):TwitterやFacebookの持つユーザー数、データはスポーツコンテンツプロバイダーにとっては脅威でもありチャンスでもある。もともとプラットフォームがInteractiveな性質を持っているので、その観点でもスポーツファンの観戦のBehaviorとの相性が良い。ただし、2時間や3時間の試合をFacebookやTwitterで全て観戦するようになるとは思っていない。実際に今のインターネットのスポーツコンテンツのStreaming配信でも65%のユーザがBig Screenで観戦しているというデータもある。やはりユーザは大きなスクリーンでSportsを観戦したいという希望がある。TwitterやFacebook, Youtubeでのコンテンツはもっと短時間のハイライト動画(無料)にフォーカスしてゆくことになり、そこで興味を持ったファンが公式サイトの有料のフルゲームコンテンツに流れてゆく、さらにはそこでさらにファンになり試合観戦に来る、というファネルの流れになるのではないか。SNSはユーザデータも多岐にわたり持っているので、ターゲティングを行いながらの潜在的ファン層のEntry獲得ソースとしては最良。SNS含めて基本モバイルをターゲットに配信されるコンテンツはSnackable(短時間で気楽に見れる)でなければいけない。こうしたモバイルネイティブなコンテンツ作成の重要性は増してきている。何れにしても、TwitterやFB、Youtubeをうまくファン獲得のツールとして利用してゆくという共存の姿勢が大事。

・MLBのe-sportsとの提携:2016年末にMLBのStreamingインフラ提供サービスである、BAMTechが最大のe-sports、League of Legends(LOL)の大会の独占配信権を6年間300百万ドルで獲得した。この狙いとしては、MLB等の試合がない時間のStreamingのインフラの空きを利用したいことに加えて、LOLの大会はすでに数千万人が観戦する最大のスポーツイベントとなっており、顧客がどのようにゲームのコンテンツを通してお互いにInteractするか、Consumeするかという顧客データを取るための良い機会になると考えているとのこと。e-sportsはLOLだけでも数十億ドルの売上となっており、トラディショナルなスポーツ産業にとっても無視できない存在になりつつある。ちなみにLOLのゲームは引き続きSubscriptionではなく、広告とスポンサー、In-app課金(ゲーム用のアイテムの購入等)のみでMonetizeしてゆく方針。

・違法ストリーミング対策:違法ストリーミングを取り締まることも当然重要であるが、当然ファンのためにはその代替となり得る高品質でAvailableな正規ストリーミングの提供もmust。そうでないとファンがコンテンツから離れてしまう。

・ゲームのコンテンツを利用してファンが作成するコンテンツを取り締まるか利用するか:MLBは取り締まりのスタンス。NBAはむしろファンが作成するコンテンツを積極的に活用する方針。NBAはNBA PlaymakersというFan Creator向けのプラットフォームを提供しており、試合映像の提供やYouTubeへのアップロード、Fan madeコンテンツのコンテストの実施等、Fanがコンテンツに対してよりDeepに関われる機会を提供している。

・VR/ARの試合観戦への利用:特にAugmented Reality(AR)には可能性があると思っている。Google Glassのようなデバイスを利用して、ゲームのプレイに意味のあるスタッツのデータを重ねることができる。例えば、NBAなら特定の位置でのシュートの平均的な成功率を見せることで、どれだけ難しいシュートだったか判断することができる。何れにしても乱雑にデータを見せれば良いというわけではなく(これはむしろ観戦体験を損ねる)、フィールドやコートで何が起こっているかを説明するためのデータ、を見せるのが重要。一方でVRデバイスを利用した自宅での、まるでスタジアムにいるようなリアルな観戦体験については、やはり友人とのInteractionをどのように提供するかが鍵になる。スポーツファンは試合を見ながら友人と色々話したり感情を共有したりするのが楽しいのであって、VR観戦でそれを遮断してしまうのは本末転倒。VRデバイスを利用しながら、友人とInteracteできる仕組みを入れ込めるかが鍵。

・クレジットカード(CC)を持っていない若い世代への対応:(従来のCable TVでのコンテンツ提供と違い)ストリーミング等によるOTTでのコンテンツ提供は、CCがないとサインナップできないことから、CCを持ってない若いファンをどうやってengageするかという課題がある。一つの解決策としては、Walmart等の小売店と提携したPre-paidカードの提供。加えて、若いファンからは今の時点で金を取らなくても良い、という考え方もある。学生ファン向けの無料プラン等を提供し、その人がBig Fanになってくれれば所謂Customer Lifetime Valueは非常に高いので、十分payする。

次記事: 2)Sportsにギャンブルは必要か(Fantasy Sportsの米国スポーツに与えている影響)

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