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熱中症はなぜ起きる③暑熱順化を実践する【Doctor Tのスポーツ・エクササイズ医学】

こんにちはDoctor Tです。夏真っ盛りですね。日中屋外に出ると日光の強さを文字通り、肌で感じずにはいられません。

早速ですが、2回連続でお話してきた熱中症の第3弾です。前回、暑熱順化(しょねつじゅんか)が熱中症予防の鍵になると説明しました。自律神経が暑い環境にあわせて体を調整させているということでした。(note:熱中症はなぜ起きる②暑さに体を慣れさせておく

今回は「どうやって身体を暑さに慣れさせていくか」です。誰がどういった目的で暑さに慣れる必要があるのかで中身は変わりますが、今回は中学生のスポーツを対象にした推奨をご紹介します。

暑熱順化をどう行うかのガイドラインは、まだ発展段階

暑熱順化が熱中症予防のキーになるというのは共通の見解になっていますが、実際にどうしたらいいのかはまだ議論されている部分もあり、全てにおいてコンセンサスが得られているわけではありません。

とはいえ、実際に猛暑の中運動するのであれば、現時点で推奨されていることから実践していくのがよいのではないでしょうか。2021年に出されたアメリカのアスレチックトレーナー学会の推奨を紹介します。

暑熱順化には2週間かかる

「シーズン初回の暑熱順化は2週間」というのは、概ねどの情報源を見ても共通しています。これは子供でも大人でもその様に推奨されています。

同じ日に複数回暑さに暴露しても効果はない

推奨は1日に運動1セッションです。1日に数セッションの運動をしたからと言って暑熱順化のスピードが速まるわけではありません。

まだ慣れていない体で無理な運動をすることになり、熱中症になってしまうかもしれません。

暑さの暴露から離れると暑熱順化の効果は減弱する

当然、暑い環境からしばらく離れればまた新しい環境に体は慣れていきます。

但し、1日も暑い環境から離れてはいけないと言っているわけではありません。CDCによると1週間離れると順化の効果が減弱し始め、1ヶ月で元の状態に戻るようです(リンクはこちら)。

暑い環境下で運動することがなくても、代わりにエアコンの効いた環境で運動をすれば暑熱順化の効果の減弱は弱めることができますし、減弱してもまた暑熱環境下で慣らせば、最初より速やかに順応が進みます。2回目であれば2−4日で、最初の10日分くらいに戻れるようです。ワクチンのブースター効果に似ています。

中学生向け 暑熱順化推奨枠組み

プロテクターを装着するスポーツ→野球、ソフトボール、ラクロス、アメフトなど
間欠的に有酸素運動のあるスポーツ→バスケ、サッカー、水泳、バレーボール、テニス、レスリングなど
耐久性スポーツ→クロスカントリー、陸上など

練習の組み方で考慮すること

1) どのような環境であれ、暑熱順化のためのトレーニングにおいて、1日目から7日目は1セッションあたり120分を超えない

2) トレーニング8日目から14日目は1セッション150分以内

3) 暑熱順化1-6日目は1日に1セッションのみ。ただし、作戦や動作確認のためのセッションを60分までであれば追加してもよい。この場合、メインのトレーニングとは別で、少なくとも3時間は涼しい部屋で休憩してからでないといけない。

4) 暑熱順化の7日目までは1日2セッションはダメだが、そのあと1日2セッションやる場合は連日で行わない。第1セッションと第2セッションの間は少なくとも3時間、エアコンの効いた部屋でしっかり休憩してから

5) トレーニング場所に利用できる休憩場所を用意しておく。選手が休憩できて制限なく水分が手に入る日陰など。可能であれば冷やすための道具(ファンや冷えたタオル)を休憩中に使う。

6) 強度の強い運動を含むコンディショニングを暑熱順化1-14日目にやる時は、①別のセッションとして計画、その日はそのトレーニングだけを行う。 もしくは②熱中症のリスクを下げるために練習の最初に行う。

7) 暑熱順化の間はコンディショニングのためだけの練習は空調の効いた屋内もしくは外の気温は低い時間帯(朝早くもしくは夕方)に、環境に合わせた運動量の調整をして行う。

8) 中学生運動協会などの団体は、気温が高くなる時期にシーズンが始まるスポーツの初回の公式大会前には14日以上暑熱順化のための時間を確保すべきである。

成人の労働者向けのCDC websiteはこちら
https://www.cdc.gov/niosh/mining/userfiles/works/pdfs/2017-124.pdf

まとめ

  • 暑熱順化の進め方は、運動をする人の年齢や目的に合わせて計画を変える

  • 暑熱順化の具体的な方法の研究や分析は現在進行中である

  • 焦らず14日の計画で進める

  • 暑熱から離れるとその効果は減弱するが、一度順化していればその後の復帰は速い

何度も言いますが、異常な暑さの中で健康を害するような場合は、運動自体を見合わせたほうがよいです。

でも、この暑さはこれからも続き、付き合っていかなければならないことを考えると、少しでも自分たちにできることをして被害を小さくした方がいいですよね。

練習の目的はなにかを考えてみましょう。目的は我慢の競争ではなく、上手くなること、よいパフォーマンスを発揮することです。体調不良になっては、長時間練習してもその目標は達成できないというのを忘れないでください。

やるべきことは難しいことではありません。今年これからでも、来年の夏のシーズン前でもぜひやってみてください。

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