今からでも遅くない。運動で、老後の脳に投資をしよう【DoctorTのスポーツ・エクササイズ医学】
お久しぶりです、DoctorTです。あっという間に梅雨が終わりました。梅雨の期間中も十分気温が高かったですが、これから更に暑くなります。暑過ぎると感じる環境下での運動は危険なので絶対にやめましょう。安全第一です!
今回は運動と認知機能について面白い記事を見つけたので、ご紹介します。
みなさんは運動が認知機能にも影響を与えることをご存知ですか?
どの年齢で運動をしても
将来の認知機能低下にブレーキ効果?!
論文の結論から書くと、大人になって以降、どの歳で運動をしても、全く運動していない人と比べ、将来の認知能力(69歳時点)に差が出るのではないかということがこの研究で示されています。(ただし1研究に過ぎないので研究の限界には注意が必要)参考論文はこちら↓
この研究は1946年生まれの1531名(項目によっては1273名)のイギリス人のデータを遡って分析しています。この調査期間の長さがこの研究のすごいところです!!
アラフォー、アラフィフ、60代での運動習慣で比較
運動習慣の有無を5つの年齢で調査し、earlier-life (36, 43歳), mid-life (53歳), later-life (60,69歳)の3つに分け、それぞれのタイミングで習慣的に運動をしていたかで、69歳での認知機能に違いが出るかを調査しました。
認知能力を何で見たかというと、
①集中できるかどうか、言葉がスムーズに出てくるかどうか、記憶力、言語、空間を理解できるかどうか(ACE-Ⅲ)や②15個の言葉のリストからどのくらい言葉を思い出せるか(word learning test)、③1ページに書かれたたくさんの文字の中から1分間でどれだけPとW見つけ出せるか(visual search speed)です。けっこう実践的な高度なことでチェックされています。
運動の「積み重ね」が認知能力を維持させる
下の図をみてください。運動していたタイミングの数が多いと69歳での認知能力はゼロの時より高くなっています。これは飛び飛びでもカウントされます。
当然、5つの期間つまり36歳から69歳まで継続的に運動していたグループの能力が最も高くなっています。
どの時期に運動していても効果はある
さらに、運動習慣が全く無かったグループとearlier life, mid life, later lifeそれぞれで運動習慣があった(アクティブ)グループを下の図のように比較したところ、どのグループでも運動していたグループのほうが69歳での認知能力は高かったという結果が出ました。
例えば、53歳のmid lifeの時期のみ運動習慣があった人でも全くやっていない人と比べると69歳の時の認知能力には差が出たということです。
年を取ったからと言って諦めてはいけない
これは喫煙と似ています。「これまで動いていなかったから今更やっても無駄」という患者さんの言葉を時々耳にします。この研究の結果から考えると、今からでも遅いということはありません。そして、若すぎるからまだ将来の役に立たないということでもなさそうです。
今後、これらの結果をさらに固めるためのデータの蓄積が期待されます。
まとめ
運動は身体能力だけでなく将来の認知能力にも(認知脳への)効果がある
連続でなくとも運動している期間が多いほど効果がある
どの年代に運動しても効果がある
確かに、年を取るに従って体も頭も能力が落ちていくというのは誰しも避けられません。ただ、その速度を緩める方法はあります。そのひとつが運動です。
私が運動を勧める大きな理由は、その効果の幅が広いからです。薬はごく限られた効果しかありません。例えば、血圧の薬が血糖、コレステロールを下げてくれることはありません。しかし、運動はそれら全てを下げる効果があるだけではなく、さらには、系統の違う認知能力や精神にも効果を発揮します。もちろん体の衰えにもブレーキをかけてくれます。
将来の脳への投資は少なくとも30代から(もしかしたらもっと前からかも知れません)始められます!さっそく体を動かしてみませんか?
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