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病院での決断・選択に後悔しないために【DoctorTのスポーツ・エクササイズ医学】

こんにちはDoctor Tです。夏の極端な暑さは和らぎ、過ごしやすくなってきましたね。皆さんの体調はいかがですか?

先日、大学生やトレーナーを目指す学生に、健康に関する授業をしました。私は、正しい知識を身につけることはとても大事だと思っています。若いうちに色々なことの基盤となることを知っておくと、その後の人生でより広い視点で物事を見られると思うので、若い人への教育には特に力を入れています。

将来教える立場になる学生たちが、将来の自分の生徒や選手、子どもたちにもその学びを伝えていってくれることも期待しています。というのも、海外でも課題となっていますが、日本人のヘルスリテラシーも決して満足できる状況ではないと感じるからです。今回はそのヘルスリテラシーについて紹介します。


ヘルスリテラシーとは

ヘルスリテラシーという言葉はご存知でしょうか?健康に関するリテラシーのことです。リテラシー (literacy) は読み書きの能力を意味しますが、金融「リテラシー」のように、その分野において知識だけでなく判断する能力も含みます。

正しい知識は適切な判断と行動の基礎

ヘルスリテラシーでは、「信頼できる情報源を見つけ出す→理解する→適切な行動を取る」までの能力を指します(Nielsen-Bohlmanら2004)。行動に移してこそ、健康に反映されるわけですが、正しい知識や情報にアクセスする事ができなければ、適切な行動に移すことはかなり難しくなります。

正しい情報収集が難しくなっている

昔と比べ、インターネットが普及し、アクセスできる情報量は比べものにならないほど増えました。しかし、量が増えたらその分リテラシーが上がるとは限りません。溢れかえる情報の中から、正しい情報を選び出す能力が求められるからです。

インターネットでの情報収集

日常診療の中で、インターネットで症状を検索して不安になっている患者さんを多く見かけます。その場合、情報源の信頼性の吟味がなされていないことがかなり多いと感じます。聖路加国際大学のYouTubeがわかりやすいので、検索方法がわからない方は一度視聴してみてはいかがでしょうか?

ヘルスリテラシーを改善する上で、理解しておくべき前提がいくつかあります。今回は2つ紹介します。1)リスクのない選択肢はない 2)病気や体調不良になると冷静な判断が難しくなる です。

1) リスクのない選択はない

健康だけではなく他の分野にも当てはまりますが、選択には必ずよい点(効果)と不都合な点(副作用やリスク)があることを理解しておく必要があります。
情報検索で不安が煽られたり極端に楽観的な選択をする場合はこの理解の不足が原因であると思います。

グレーの中での選択

現実の選択の中で100%の白や黒はありません。白(効果)と黒(副作用やリスク)があることを認め、その中でより良い選択をすることを考えましょう。つまり、より白に近いグレーを選ぶということです。

海外では物事にリスクは付きものと考えられており、私がイギリスで受けた学校の試験では良い点と悪い点を挙げて、自分はどちらを選択するかを、その理由も付けて答えさせられることが多くありました。日本ではこのようなスタイルの教育がほとんどなく、日本人にとっては不慣れな考え方だと思います。

人によってグレーの濃さは違う

健康や病気に関するグレースケールは、個々人の持病や体力などで、その白黒の濃淡は違います。それがリスク評価です。持病、遺伝(家族歴)、今飲んでいる薬や生活習慣がそれに当たります。だから、医療機関ではこれらをお聞きするわけです。あなたの今の状況の中でより白に近い選択をするヒントにするためです。

グレーの濃淡を考えるポイント

効果やリスクも「あり」と「なし」だけではなく、程度と頻度があります。健康に関するこれらを考えるときには、医師やその他の医療職がサポートをしますが、このように判断材料は単純ではないため、患者さんも、最善の選択というのは、できるだけ白に近い「折衷案」になるということはあらかじめ知っておくとよりよい判断ができると思います。

2) 病気になると冷静な判断が難しくなる

健康に関する情報を理解して、判断・選択をしなければならないときというのは、自分や身近な誰かが病気になった時がほとんどなので、冷静な判断がしづらいというのも忘れてはならないことのひとつです。

多くの健康な人はそれが当たり前であるため、健康を見直すのは、多くの場合、自分や周りの人が病気になったり、亡くなったりしたときです。軽い体調不良でそれに気づけばいいのですが、そうとは限りません。

元気なとき、子どものときにも教育を

これらの理由から、ある程度の基本的な知識や調べる能力は、元気なときに身に着けておいたほうがいいと思うのです。私は、子どもの教育でももっと教えてもいいのではないかと思っています。

ヘルスリテラシーがよくなると

適切な情報を見つけ出し、理解することができるため、健康になるだけでなく、不安が減るということも期待できます。病気になりにくくなるというのはなかなか実感しにくいことですが、不安が減るというのはそのメリットを感じやすいのではないでしょうか?

グレーを知ったうえで、正しく危機感をもちましょう。今、闇雲にネットサーフィンをしてしまっているとしたら、それよりは不安が減ると思います。

まとめ

  • ヘルスリテラシーとは健康に関する情報収集・理解/判断・行動する能力のこと

  • 今は正しい情報収集が難しい

  • 医療でリスクのない選択はなく、「より良い」選択をする

  • 病気・体調不良のときは冷静な判断ができない

  • 日頃からヘルスリテラシーの底上げを

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