がんの人にも運動が効く【DoctorTのスポーツエクササイズ医学】
こんにちはDoctor Tです。いかがお過ごしですか?最近は、朝スカッと晴れていても、午後から曇ってくる日が多いような気がします。いい天気のときにパッと出掛けないとダメですね。と言っていたら梅雨入りしました。
がん予防・治療としての運動
今回はがんと運動について書きます。生活習慣病は運動で改善するということはみなさんご存知でしょう。それ以外にもメンタルヘルスや転倒予防にも効果があります。がんもその一つだと知っていましたか?医者でももしかしたら知らないかもしれません。
運動の効果は癌の種類による
予防効果があるという強いエビデンスがあるのは下の表にあるがんです。リスク減少率が15−20%というのは予防効果として大きいですね。ただし、乳がんでも閉経前と閉経後、大腸がんでも近位か遠位かで効果が変わるので参考程度にご覧ください。
日本で多いがんは、運動で予防効果のあるがんが多い
下の表は日本で多いがんを示しています。ほとんどが運動で予防効果のあるがんに含まれますね。これはいいニュースです。運動によってがんを減らせる可能性が高いということです。実際世界中のがんの3分の1は防ぐことができると言われています。「人口の約半分ががんになる世の中だから…」と諦める前に、運動してがんになる可能性を下げてみませんか?
運動することでリスクを一つ減らす
確かに加齢はがん発症のリスクの一つですが、これは避けられません。しかし、年齢だけががん発症のリスクではありません。欧米化した食生活や動かない生活による肥満もリスクの一つです。リスクが増えれば増えるほど、がんになりやくすなります。なので自分で減らせるリスク(=運動不足)を減らしましょう!(参考:自分で減らせるリスクとそうでないリスク)
運動ががんの体へのダメージを抑えるメカニズム
実は上記のような統計だけでなく、体の中で起きていることの研究でも、運動ががんの予防や、がんになってしまってからのコントロールに有効であることが分かっています。
細かなことを知る必要はありませんが、がんの人の体では炎症が起きていて、その炎症のせいで全身の代謝や免疫系統を異常にしたり、筋肉をやせ細らせたりしています。運動にはその炎症を押さえる作用があります。だから、予防だけでなく既にがんになった人にも運動が効くのです。
ただし、がんの治療は多角的に行う必要があり、運動が化学療法やその他の治療を上回るということではありません。
がんの診断がつくと人は活動的でなくなる
運動がいいのは分かっても、がんと診断されると多くの人はそれまでのような活発な活動をやめ控えめに過ごすようになります。30%ほど活動量が減るというデータもあります。落ち込むこともあるでしょうし、実際に体がしんどいということもあるでしょう。
ただ、病気なんだから安静にしておかなければと自制する必要はないということです。
どんな運動をどれだけするかはまだ結論が出ていない
運動とここまで言ってきましたが、着替えて気合を入れて行ういわゆる「運動」でなくてもPhysical activitiyといって日常生活の中でもっと体を動かすというだけでも効果があるという説は、多くの論文で一致しています。
仕事で体を動かす、通勤などの移動で体を動かす、趣味のスポーツなどなど、自分に合ったものから取り組んでみましょう。
今はがんの種類によって、どんな運動をどのくらいの強さで、どのくらいの頻度でやると安全で効果的なのかを世界中の研究機関が調査中という段階です。少なくとも、体重が増えないように一般的に勧められている運動は実施しても良さそうです。
↓は英語ですが、具体的なエクササイズが書いてありオススメです。
https://www.exerciseismedicine.org/wp-content/uploads/2021/04/EIM_Rx-for-Health_Cancer.pdf
大事なのは安全にやること
運動は勧められていますが、もちろん安全第一です。化学療法をしている時は体力が落ちるのでそれに合わせた負荷にする必要がありますし、免疫が落ちるので人の多いジムやプールに行くのは勧められません。自己判断せず、必ず主治医に相談してください。
がんの有無に関わらずしばらく運動をしていなかった人は、急に運動をすると体が追いつきません。軽い負荷、できることから始めて徐々に負荷を上げていきましょう。
まとめ
運動はがんの予防、治療にも効果がある。
日本で頻度の高いがんの多くは運動効果が期待できる。
運動の抗炎症作用が様々ながんの体への悪影響を抑える。
まずは体を動かしてみる、じっとしていないことから。
安全第一で、注意事項は主治医に確認。
病気と運動の効果について、がんを例に説明しました。Exercise is Medicine! これからも他の病気と運動の関係についても発信していきたいと思います。
一つの病気にかかっても他の体の機能はできるだけ維持したいですよね。その病気が治らなくても運動によって自己肯定感が上がったり、睡眠の質が上がったりします。今の生活の質というのは、どれだけ長く生きるかと同等もしくはそれ以上に私達にとって大切なことだと考えています。
PS.参考サイト 英語ですが、患者さん向けです。
海外でもこれくらいがん患者に運動を勧めています。
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