ジョン・カーペンターとジョン・カンペーターとゼイリブ

ジョン・カーペンターをジョン・カンペーターと言ってしまう確率は異常。

という事で、ゼイリブである。

私達が生まれた時から当たり前に存在している〝お金〟とか〝政府〟とか〝メディア〟とか言う概念。
生まれた時から当たり前に存在しているので、当たり前にそれを使ってモノを買ったり(資本主義経済)、当たり前にそれに従って生活を送ったり(法治国家)、当たり前にそれを見たり読んだりして情報をインプットする(マスメディア)。

当たり前すぎて、それらの事に疑問を持つこともあまり無い。また、それらによって巻き起こる不条理や悲劇に対しても「仕方がない事」とスルーしている。
だが、疑問が浮かぶ。
果たしてそれらはいつ、何処から発生したのだろうか?

この鬼才ジョン・カーペンター監督が描くゼイリブ(彼等は生きている)という映画は、その当たり前に存在している資本主義社会、政府、マスコミなどが、実は地球侵略のためにやって来た宇宙人が人間の姿に化けていつの間にか社会の中枢に潜り込んで構築し、そのシステムにより人類を洗脳して奴隷化していたというお話である。

何気なく拾ったサングラスを掛けた主人公が、その実は真実を写す特殊なサングラスを掛けた瞬間、生まれた時から当たり前に存在していた社会が、宇宙人により支配されていた奴隷社会であったという事実に気付き、レジスタンス達と一緒に反撃を開始する。

この特殊なサングラスを通すと、今まで当たり前に見ていた華やかな広告には「BUY」(買え)と無機質な文字が書いてあるだけだったり、当たり前に見ているテレビ番組には「OBEY」(従え)の文字。そして、当たり前に使っている紙幣には「THIS IS YOUR GOD」(これはお前の神だ)の文字。
真実が見えた時、広告やテレビや金は人間を洗脳し奴隷化するためのツールだったのだ。

この映画は、単なるSF映画では無い。SFというフィルターを通した社会風刺であり、だからこそ、この30年前に作られた低予算のB級映画が、カルト映画として現代でも熱烈な人気を誇るのである。

ジョン・カーペンターがこの映画で伝えたかったこと、それは決してアナーキズム(無政府主義)ではなく、「当たり前を盲目的に信じたり従ったりするな。疑問を持ち、それが不正義だと思ったら戦え」という事である。
何かに従って生きているだけだから、自分が何のために生きているのか分からなくなるのである。

真実に気づいた主人公が、支配者階級の宇宙人達をショットガンで次々に撃っていくシーンの痛快さは一級品である。

ラストシーン、主人公達の命をかけた反撃により宇宙人が構築した人類洗脳マシーンが破壊され、全てが明るみになった時、ベッドを共にしていた夫が実は宇宙人だと分かり驚愕する妻。
そう、あなたを〝結婚〟という当たり前の制度により奴隷化しているパートナーも実は凶悪な宇宙人かもしれないのだ笑

おわり

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