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あれから半年

【あれから半年】

バタバタとキッチンで仕込みをしていました。
キッチンの窓からは山苞の道がみえます。その歩道脇に制服を着た学生が1人チョコンと座り込んでスマホをみていました。時刻は10:30、学校では?と思いましたが仕込みも立て込んでおり気にせず仕事していました。

でも座り込む学生の後ろ姿が妙に気になっていました。オーラというか雰囲気というか……やはりピンと来たら行動に。

店を出て座り込む学生の隣に私も座りました。

「おはよう!どしたん?学校休み?」

学生『…あ、いや、学校です』

「そか!なんか合ったん!」と微笑みました。

急に学生がポロポロと泣き出しました。

「どうした?どうした?何かあった?」肩を抱き寄せ背中を摩りました。

少し落ち着きを取り戻した学生が静かに口を開きました。

学生『朝、母親に校門まで送ってもらったんですが、やっぱり学校に行きたくなくて死のうと思ってこの山に来ました。学校にあまり馴染めずにいて、いじめにもあっててもぅ。でも母親は学校には行きなさい!というので。。』

「そか、学校なんてさ、行かなくていいよ。学校行かない選択肢この時代ありだから。死ぬ勇気あるならこれから何にでもなれるから。そっちの選択肢は一旦忘れよ、これから沢山の人と出会い沢山の仲間や味方が出来るから、応援してくれる両親やその友達や味方を大切に生きたらいいんだよ。嫌なヤツはどこにでもいるよ。社会に出てもいるから。でも必ず君には味方がいることを考えたら何故か心が強くなれる。もう既にほら!Spoonのシェフが味方だよ。それくらい君には魅力がある!だから。。ね」

学生『はい、ありがとうございます』
また号泣してハグをしながら
「家は近いかな?シェフが送ってあげるよ。」

学生『少し遠いです。』

ランチ開始時間に間に合うかな…難しければ妻にお願いしようと思っていました。

「一旦お母さんに連絡しようか?シェフが話ししてあげるからさ」

学生『……』

スマホの画面がチラッと見えてしまったのですが、LINEで

{お母さんごめんなさい、もう死にます。ごめんなさい。}

「よし、シェフがお母さんに電話するから、ちょっとかけてよ。大丈夫、まかせて!」

静かに頷きスマホで母親にかけて私にスマホを渡しました。

母親〈もしもし!○○君?〉

「もしもし。すみません、私田主丸町でレストランを経営しております井上と申します。○○君と今一緒にいます。学校行きたくなくて山をフラフラしていたので、お預かりしています。」

母親〈そうだったんですか、お世話かけ申し訳ありません!先ほどLINEをみて心配でずっと着信していたのですが、出てくれなくて。。〉泣いている様子。

「とりあえず今は落ち着いていますし、大丈夫だと思います。」

母親〈すぐに迎えに行きますので、すみません、本当にありがとうございます!〉

「お母さん、私がいうのも何ですが、今は無理して学校に行かなくて良いと思いますし、色々な選択肢をお子様と話し合われてはいかがでしょうか?」

母親〈はい、本当おっしゃっる通りで昨夜家族で話しして学校には行きなさい!ときつく言ってしまいました。もっと息子の気持ちを理解してあげれるよう話し合います。すみません。すぐ迎えいきます。〉

「○○君お母さん迎えきてくれてるから、お母さんも泣いていたよ、きちんと話ししようね。お母さんにもシェフからもお願いしているからね。とりあえず店においで。」

泣いている学生を店に連れて行き、巨峰ジュースと杏仁豆腐を出しました。

「待っている間これ食べり!」

杏仁豆腐を食べて心が散乱していたのが落ち着いてホッとしたのか静かに泣きながら食べていました。

スタッフまで陰で泣いていました。

カウンター越しに色々な話をしました。部活の話しなどたわいもない話も。彼に活力が戻ってきているのが分かりました。

もう、死のうなんて思わないはず。

と感じました!するとお母さんが迎えにきました!

母親〈命を助けていただき本当にありがとうございました!また改めてご挨拶に伺います〉

「いやいや、大丈夫です、ゆっくり話をしてあげてくださいね。あと○○君名刺あげとくから、何かあったらまた連絡してね、LINE交換しようかね!」

学生『はい!この度はありがとうございました!もっと強い気持ちで生きていきます。』

その後も彼とはLINE友で連絡を取りあっています。
更に学校も行きだし、部活もして友達も出来て順調に学校生活を送っているようです。

スタッフが言いました!
『彼はきっとSpoonに来るようになっていたんでしょうね!でないと、この広い耳納山のSpoon前に座ります?シェフでなければ救えない命だったと思います。』

営業前のドラマのような出来事でした。

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