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書くことの難しさ:文章読本を読んで

2023年1月の読書会(21)1月22日(日)9:30〜『文章読本』三島由紀夫|noteで読書会をためしたら
☆この投稿は読書会課題本の読了感を書いています。

本を読むことで,著者に共感を覚えたり,目から鱗の気づきが得られたりという知的好奇心の刺激作用が生まれることがあります。他方で,著者対し(本当かな。内容を吟味したりする必要がありそう。む。客観的に見てツッコミどころがありそう。論点がずれてないかしら。)と自戒と共に疑問が生まれることも。三島文章読本に関しては,個人的に後者であったのですが,考えてみたことがなかった「文章読本」と書くことについて思考するうえで面白いきっかけを得られました。読書会のおかげです。

三島由紀夫著『文章読本』中央公論新社.1973. 
三島は,小説に用いる語彙の多様性に優れていることが確認されています。
静岡産業大学学術機関リポジトリ (nii.ac.jp) 確かに語彙は豊富。

1.疑問点 

しかし三島の文章読本を読むうちに,私にフツフツと疑問が沸きました。三島は「階級的区分けによって文章を評価してゆく一部の風潮に反感を感じますp203」としつつも前文で「粗雑な文章の生まれやすい…その一例が新聞記者の書いた文章を読まれれば明瞭でありましょう」と書く。ここに矛盾があるように思われます。署名入りの記事を書く記者にとってこの指摘はどうなのでしょう。
(例)研鑽を積んで書くジャーナリストの集合知が詰まった本 
日本科学技術ジャーナリスト会議編「科学ジャーナリストの手法 プロから学ぶ七つの仕事術」化学同人.2007
(内容紹介)ジャーナリストのテーマ選びと着眼点→情報入手→表現方法がスッキリ系統立ててあり、素人にも腑に落ちる、読ませるなぁという読了感。「事実から真実に迫る」では、掘り起こした事実の積み重ねがあって初めて真実に迫ることができるのでは、との指摘。

2. 編纂者の目線

科学者やジャーナリストの文体吟味・本を編纂する側の目線・翻訳する側の目線が,三島の文章読本には薄いように思われます。(目次に「翻訳の文章」があるのですが。)「読者が翻訳の文章を読むときにも,日本語および日本文学に対する教養と訓練が必要なのでありますp121。」と指摘しており,池澤夏樹が「翻訳は再創造である」と下記で述べるのと対極にあるようです。

 池澤夏樹著.「編纂・翻訳・創作ー文芸論の序説のためのメモ」
 佐藤=ロスベアグ・ナナ編.『翻訳と文学』みすず書房.2021.pp.9-26
昭和時代の作家による紐ときに加え,私は現代の文芸家の目線を加味したいと思います。
池澤は,編纂で世界文学全集・日本文学全集発刊。翻訳で『古事記』の現代語訳『カヴァフィス全詩』,創作で長編小説を書いています。https://www.kawade.co.jp/nihon_bungaku_zenshu/interview/
インタビュー:なぜ今,日本文学全集なのか?https://www.kawade.co.jp/nihon_bungaku_zenshu/wp-content/themes/nichibun/pdf/02.pdf
日本文学全集30巻パンフレット☆池澤の選書基準に新時代を感じ,私的にツボでした。

「古事記は周到な基準と規範により編纂された作品であるp15-7.」と池澤は述べており,三島が「古事記は原始的男性の素朴さ。論理および理知の特質をすべて外来の思想にまったのでありますp.17」とする点と大いに対極にあるともいえそうです。「文体をもっているのは小説家だけではない。」という池澤独自の捉え方が私には新鮮で興味深い。

3.
  私見


ここからは,読むこと書くことについての個人の意見です。
1)編纂する側の書く文章には,客観的な見方と幅広い知見が詰まっている可能性がありそうです。推敲(される側・する側)両方の経験が反映されるためです。例えば,文学について丸谷才一と対談した湯川豊。編集者でもあり作家でもあり,質問の投げ方,答えの引き出し方が豊潤。同様に池澤夏樹も。
2)読むこと /読まれることについて 読まれる文章の要素はなんだろう。①時代に合う文章,時代を切りとるテーマか。
②伝えたい熱いものを文章化したもの。
③ニッチな分野・他の人が手をつけていなスキマを捉えている。④その他
3)丸谷才一は著作「文章読本」中央公論新社.1980.第二章 名文を読め で磨かれた文章をよむことを薦める。名文とは何か。定義が難しい。
4)「書く」をブラッシュアップする道筋を考える。
ひとりで読み,さらに読書会に参加する。ここで得られる複数の捉え方・切り口・相互作用もひとつかも。その後,共有した内容を文章化してみることで振り返りを試みることも含めて。

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