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ブルネロ・クチネリ著.岩崎春夫訳「人間主義的経営」を読んで
降参です。
(私にとって,今年No.1の本に巡り合ったかもしれません。)
ブルネロ・クチネリ著.岩崎春夫訳「人間主義的経営」株式会社クロスメディア・パブリッシング.2021
ハドリアヌス帝,スピノザ,ソクラテス,セネカ,フランシス・ベーコン,デカルト,ベネディクト・クローチェ,エルネスト・エロー,ヘラクレイトス。
各章の始まりは,歴史上の巨人の格言が,灯台となっています。
役者あとがきによると。
“世界で一番美しい会社に学ぶ,資本主義の使い方”に,ひっそりと開かれたある集会の模様が記述される。
そこにはアマゾン,ツイッター,リンクトインなど米国のシリコンバレーからきたIT企業家のCEOの名前が。
訳された方は,偶然にも現在私が語学教室でご一緒している方です。驚愕。ご縁を感じました。
その方が,「きもちわるい」と実感したビジネスの世界と対極にある本著。
とある読書会でもご一緒し,静かな佇まいと背景の豊かな博識を知り,(読むしかない)とこちらの本を手に取りました。
魂が深いところから揺さぶられました。
荒廃した古城を買い取り,本社にする。
劇場,図書館,職人学校の設立。
古城は,歴史的価値が高まるよう保存するために購入するのだ,と。
クチネリ氏にとっての「経営」は,「贈与」が収益を産み,収益を贈与に振り当てる循環が成立しているとのこと。
投資により高級カシミアのブランドの付加価値に繋げているため,支持層を獲得した。
クチネリが創り出す独自の領域を,彼自身は,管理人・保護者・番人と称している。
大切に育てて慈しみたい領域を,環境と美観を育みながら与え,関係性を保護しながら価値を生み出す。
フト。
私の脳裏に,そういった領域の構想を持つ人物が浮かびましたね。
その方が着想を実現される時に巡り合えたとしたら,少し支える立場であれたらいいな,と想像がふくらんで嬉しくなりました。
巻末には図版目次もあり。(市民の描写ほか)
手元に置きたくなる本。
深いです。
私は,イタリアの何を今まで見てきたつもりでいたんだろう。