やりたい事ありきのプライシング_前編【実践!スポーツビジネス道場#28】
ポッドキャスト番組「実践!スポーツビジネス道場」の文字起こし記事です。
「実践!スポーツビジネス道場」は一般社団法人スポーツビジネスアカデミ(SBA)の公式オンラインサロン「THE BASE」が毎週木曜日に配信しているポッドキャスト番組です。
スポーツビジネス界で奮闘する若手ビジネスパーソン、酒井翼さん(東京都社会人リーグ2部所属のサッカークラブ「TOKYO.CITY.FC」でスポンサー営業を担当)が日ごろの業務での葛藤や悩み、アイディアをスポーツビジネス界の第一線で活躍し、SBA代表理事を務める荒木重雄さんに壁打ちし、成長していく様子をお届けしています。
酒井)こんにちはTOKYO.CITY.FCの酒井翼です。前回は指定管理者についてお伺いしたんですけれども今回はもう少し細かい話でスポンサーメニュー、プライシングについてお話を伺いたいなと思っております。
ちょっと詳しくお話をさせて頂きますと僕がスポンサー営業に携わらせていただいていて法人向けのスポンサーメニューがミニマム年間30万円というプランにしています。ただ Jリーグクラブを参考にすると一番下のプランが数万円から一番安くて10万円位を最安値金額としています。スポンサー企業を増やしていくためには安価なプランを作った方がいいのかなと思っている一方で、安価なプランを作った場合に、例えば30万円でも契約してくれていた企業さんがまずは安いところからやるよという感じで契約することになると、僕ら目線で言うと機会損失になっているんじゃないかなと思っています。あとは一度金額を下げてしまうとそこから金額を上げるとなると難しいので、プライシングというところをどういう風にやって行けばいいのかっていうところをアドバイスいただければなと思っています。
荒木)はい、プライシングね。プライシングって一言で言えば需供バランスが取れるところがベストプライスじゃん。買う側からしたら払うお金に対して自分が思っている価値より高ければいいし、売る側はその逆…という言い方したら語弊があるけれども。いずれにしても買う側の論理だから、売れなかったらいくらプライシングしたって意味がないわけで。お金を払っていただくっていうことはそこに対しての価値を感じてもらうっていうところ。何の世界でもそうだし、寄付だってそうだよね。自分だが寄付したいと思える対象がその寄付に相応しいかどうか、それに尽きるわけだけども。例えばスポーツの世界で言うとトップスポーツの広告みたいなことになると、それって価値の可視化じゃないけど露出の算出みたいなところで一つ理屈が通っているけれども、今のTOKYO.CITY.FCの段階では、圧倒的な露出効果みたいなところを露出すればするほど深みにはまっていてしまう現実がある。
酒井)はい。
荒木)スポーツの競技団体は大なり小なりちっちゃいクラブもそうだけれども、基本的には価値って二つあって現在価値と将来価値っていう二つしかないわけですよ。現在価値に対して商品を作っていく、これは現在価値だから現在ある価値だからそれを可視化していくわけ。今あるものに対してこれくらいの価値だよねっていうのが合えばお金を払ってもらえるだろうし、その価値がないと思えばお金がもらえないわけなので。現在価値っていうのは最初のうちは、なかなかしんどい。それでももちろんいいけど、どこで勝負するかと言うと将来価値で勝負する。普通の経済の話でも同じで、出資とか投資って将来の価値を見越してそこに対してお金を投じる。スポーツのスポンサーシップもそれに近いところがあって特にTHEビッグクラブみたいじゃないところは将来価値をどう作り込むかというところが商品設計作りになるわけで。30万円とか5万円って安いとか高いとかって何に対して30万円、5万円だっけ?っていう話で。個人マネーだったら別にいいけれどもそうじゃなく何らかの形で社内を通していく作業ということを絶対的に必要になってくるわけですよ。例えばオーナーの一言で出してもらえるっていう会社があったとしてもそれは大変ありがたい話かもしれないけれども、今後の事を考えた時にそういうお客さんだけで囲い込むのは限度がある。しっかり基盤を作って永続的にスポンサーシップをとっていく為には、やっぱり会社組織としてのスポンサーシップをとっていかないと今後広がっていかないよね。個人店みたいになっちゃうから。そこって難しかったりするんだよね。そうすると何らかの形で社内の稟議を通すようなロジックを意識して商品作りしないと、こないだ言った谷町じゃないけど谷町は限度があるわけですよ。全部谷町だと将来的な絵が描けないから、今の時期からでもちゃんと社内を通して、これいいじゃないか30万払おうぜって言って頂けるようなこういう商品を作っていかなければいけない。
じゃあ将来価値にどうプライシングしていくかっていうことだけれども、一つ例を挙げるとするとクラファンとかってヒントになるなと思っていて。クラファンって目標額があるじゃん。目標額があって、こういうことをやりたいっていう将来価値って言うか”僕たちこういうことやりたいんです”があって、そのためには500万円必要ですと言って、一口いくらでサポートしてくださいっていう夢(将来価値)をしっかりコミットした上でそこに対して出資者を求めているっていうのがクラファンじゃない?それに多分将来価値バージョンのスポンサーシップってすごく近くて。僕たちがクラブとして今年ここまでやります、来年こうなります、将来こうなります、画に対してこれくらい必要なんです、それを100口で集めたいと思っています、だから一口30万円なんですっていうところを割り切って言っちゃう。今ちっちゃいクラブだけじゃなくてJリーグのチームもそうだけどディスクローズしているので、例えば人件費も他のクラブも明らかになっているわけですよ。どんぐらい人件費かけているかっていうことが。そうすると僕たちここに行きたいんですここに行くためにはこれだけ人件費が必要なんです、でも僕たちにここまでしかないんです、だから予算感を増やして勝ちに行くためにはこのぐらい稼がなきゃいけないからこういう商品を作っているんで協力してください、みたいな。現実問題は最初のうちは夢を明確にして、その夢を作るための予算を明示してそれの口数を公表して、そこに対してスポンサーを募るみたいな、そういう作業っていうのが現実的なんじゃないかなと思うよね。千葉ジェッツが大成功してるけど、千葉ジェッツだって最初はクラブチームだったんで。
酒井)打倒トヨタみたいな
荒木)そう、打倒トヨタでしょ?中小企業の町で中小企業のみんなでトヨタをやっつけようみたいな夢を掲げて、そこにいっちょ乗った!っていう人を増やしたっていう事例もあるよね。そこでの一口いくらっていうのはプライシングじゃないわけ。プライスっていうのは価値に対する対象だから。そこはどちらかと言うと一人の出す価値に対して一対一で紐付けるんじゃなくてむしろその夢があってそこに対して投資ができるような仕組みを作ってあげるって言うのも一つの考え方だと思うし、それを言ってしまうともちろんそれは一つあるけれども、それで会社の稟議が通るかっていうところがあって。1クラブの夢にお金を出す理由を、どうやって社内で通すかというところ。もちろんオーナー企業とかだったら行けちゃうかもしれないけれども、そうじゃないところももちろん視野に入れないといけない時に、当然それも社内稟議を通すためのシナリオ作りが出てくるよね。それがハイブリッドっていうか他の商品化にもつながってくると思うし、そこに対してどういう価値が現在価値・将来価値をうまく活用しながらどういう商品提供していくかっていうところ。前回の指定管理の行政の立場と同じだけど、 必ずしも頭下げて協力してください僕たちの夢に乗ってくださいだけだと稟議は通らなくて。逆サイドで、どうやったらクライアントのメリットに手助けできるのか、彼らの課題に対して寄与することができるのかという視点が当然必要になってくるわけで。少し発想を広げてできるかなっていうひとつのヒントとしては、今までのスポンサーシップ=広告宣伝費っていうイメージが強かったわけだけれどもその広告宣伝費だけだと露出効果がどうだとかいうのが始まってしまうので、最初のうちはそこで勝負するのはきつい。その時に企業は複数のお財布があるというところに目をつけましょうってことで、前に話したことがあったかもしれないけれども、9つの財布って言われてるのがある。それこそ採用、教育、CSR、福利厚生、いろんな販促、営業接待費用とかいろんなお財布が企業にはある中でそれがTOKYO.CITY.FCとしてその企業さんのお財布にマッチしたような商品サービスをしてそこで価格を合わせていくとか。価格ありきの事は絶対になくて。
やっぱり将来価値のポイントっていうのはちっちゃい将来価値だとなかなか難しいんですよ。
酒井)うーん
荒木)多分5万円の将来価値を創るってすごく難しくて。それがもし仮にできたとしても1社でそれを乗るみたいなのってなかなか難しいじゃない?個人でやっている事じゃないから。もう少し大きな画を書いて、わかりやすい言い方すると何口集めるとそれが達成するみたいな画を提示してあげて、スポンサーを取っていくカタチにしていかないとうまくいかないんだろうなと思うよね。だから妥当な数字とかっていうよりはそれをやるためにこれくらい必要なんです、くらいな感覚が必要なんですよ。
≪第28話 終わり≫
■登場人物
➤荒木 重雄 Shigeo ARAKI
一般社団法人スポーツビジネスアカデミー(SBA)代表理事。
株式会社SPOLABo、株式会社スポカレ代表取締役。2005年に千葉ロッテ球団の執行役員・事業本部長、パシフィックリーグマーケティングの取締役執行役員を歴任。日本サッカー協会(JFA)の広報委員をはじめ、官公庁のスポーツ関連プロジェクトなどにも多数参画。
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➤酒井 翼 Tsubasa SAKAI
J1から数えて8部に相当する、東京都社会人リーグ2部に所属するサッカークラブ「TOKYO CITY F.C.」にてスポンサー営業などを担当。
スポーツクラブで働きながら、1000万円プレイヤーになることを目指し、日々奮闘中。
TOKYO CITY F.C. 公式サイトはコチラ
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