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【読書】 “就活”が自分ごとになったある日 |朝井リョウ『何者』
光栄なことに作家の朝井リョウさんに取材する機会をいただいた。
同じ大学出身で、本を書くことを生業とされている。ただそれだけを手がかりに声をかけたのだが、思った以上に快く引き受けていただき、取材はすんなりと決まってしまった。
恥ずかしながら『桐島、部活やめるってよ』くらいしか読んだことがなかった私は、その日を境に朝井リョウ作品を読み漁り始める。
その豊かな想像力、論理的な物語構成、なにより得体の知れない学生団体の取材を快く引き受けてくださりめちゃくちゃ有益な話をしてくれたご本人の人柄に惚れこみ、今では「好きな作家は?」と聞かれれば「朝井リョウさんです!」と即答するまでに至った私だが、そんな私が『桐島〜』以来初めて手に取った朝井リョウ作品が『何者』である。
「就活」という年々現実味を帯びてくるテーマを扱ったこの作品は、言うまでもなく私の心を抉った。“読者”として物語を楽しんでいた私は、物語後半で一気に“当事者”にさせられてしまった。読者まで巻き込んだどんでん返し。理香の言葉のひとつひとつが痛くて、こわ〜いと茶化さないととてもじゃないけど読んでいられなかった。
いつから人のことを「あの人はああいうタイプ」「あそこが空回ってる」って分析できる身分になったんだろう。思い当たる節がないわけでもなくて反省してしまう。仲のいい友達のこと“分析”した気になってないかな、冷静に俯瞰できてるフリして斜に構えてないかな、読んだ後も思考がぐわんぐわんと回り続けるような、そんな作品だった。
さて、『何者』を読み終えたちょうど翌日、出版関係者が集まるイベントの受付バイトに行った。イベントにはアフターパーティーなるものがあり、『何者』で散々言ってたやつだ…!とテンションが上がりつつ、ちゃっかり参加。そんな中で、実際の就活を勝ち抜いた大学生の方とお話しする機会があった。
「好きなものをとにかく極めて、アピールするといいと思います!」
なんかコツとかありますか?私の浅はかな質問に、彼女はそう答えて微笑んでくれた。
好きなもの、一生懸命取り組んでいること、私には何かあるだろうか。できることは全部やれているだろうか。かっこ悪いくらい本気になれているだろうか。この日から、そんなことをよく考えるようになった。これまで自信を持って進んできた自分の人生の先にある“将来”が突然雲隠れしたような気分だった。それと同時に、とにかくやるしかないという少し頼りない決意も芽生えた。
読書体験が実際の体験と繋がり、来る就活が怖くなったある日。私に新しい視点と刺激をくれた一冊と出会ったある日の出来事。
私たち出版甲子園実行委員会は、12/15(日)に国立オリンピック記念青少年総合センターにて、出版甲子園決勝大会を開催します!
小説家の三浦しをんさんをゲストにお迎えし、学生による白熱のプレゼンバトルが繰り広げられます。
イベントの詳細は↓から!
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