
起業 - ムーンショット事業を立ちあげた理由
初めまして!
今月、新しいサービス "spixn(スピン)" を立ち上げ、挑戦の第一歩を踏み出した大河と申します。
このノートでは、spixnに込めた想いや、起業家としての挑戦を綴りながら、皆様と共に、新しいカルチュラルムーブメントを起こしていきたいと思っています。
spixnを立ち上げた背景や僕自身の物語を、3つの「なぜ」に沿ってお話しします。この初投稿では「なぜ起業か」という問いに向き合い、僕自身の物語を紐解きます。
ぜひお付き合いください。
「なぜ起業か」 - 未来を構想し実行に移す意義
「大河さん、役員への道筋を具体的に立てていきましょう。」
前職の上司から提案されたこの言葉は、安定と成功を象徴するものでした。
キャリアを総合商社でスタートし、海外留学を経て戦略コンサルティング会社に転職してから早3年。
提示されたのは地位、収入、そして安定という確かな未来でした。
しかしその瞬間、心に浮かんできたのがこの一言…
「これで、本当にいいのか?」
この問いこそが、これまでの人生で僕を突き動かしてきた原動力でした。
17歳の挑戦
スタートは17歳。プロサッカー選手を目指す挑戦から始まります。
当時、僕はサッカーの強豪校出身でもなく、プロを目指すには遅すぎると言われる年齢でした。
そんな状況の中、一つのライフイベントをきっかけに、心に突き刺さる問いが生まれました。
「自分の人生で本当にやりたいことは何か?」
その答えが、サッカーでした。当時の僕が最も真剣に向き合い、心を燃やしていたものだったからです。
「できるか分からない」なんて考える前に「まずはやってみよう」と腹をくくり、挑戦することを選びました。
計5年間、がむしゃらに挑戦しました。
しかし、プロへの道は断念しました。
その理由はシンプルです。実力が足りなかった。
ただ、その原因を振り返ったとき、ある根本的な真実が浮かび上がりました。
「目標の高さが足りなかった」
なぜ日本代表や欧州クラブ、極論、世界一の選手を目指すという目標を掲げなかったのか。
僕自身で気づかぬ内に限界を設けていた、それこそが結果を左右していたことだったと痛感しました。
この時、次に挑戦する時は、圧倒的に高い目標を掲げ、覚悟をもって挑むと心に決めたのでした。
サステナビリティとの出会い
総合商社での経験、MBA留学、そして戦略コンサルティング会社でのキャリア。
そのすべてが一本の線で繋がり、僕の中で明確になったテーマがありました。
それがサステナビリティです。
この分野との出会いは、国内の大手プラント会社が二酸化炭素回収・利用技術を開発し、それを普及させるプロジェクトに携わったことがきっかけでした。
その現場で目の当たりにしたのは、地球規模での課題の深さと、その解決の難しさ。
そして同時に、僕の人生を通じて挑戦したいテーマだと確信しました。
その後も多くの企業がサステナビリティに取り組むプロジェクトを支援する中で、
「他社を支援するだけでは物足りない。自分が事業者として主体的に動かなければ」
という思いが次第に強まっていきました。
そんな中で提示された、上司からの「役員への道筋」という提案。
安定した未来が目の前に差し出された瞬間、再び僕の中に問いが生まれました。
「本当に自分にあった挑戦とは何か?」
その答えを求める衝動に駆られ、僕は社内制度を活用してスウェーデンへ1年間赴任することを決意しました。
この決断が、僕の価値観をさらに深め、次のステージに導いてくれたのです。
スウェーデンで得た気づき 問題解決<未来の理想像という考え方
スウェーデンを選んだ理由は、
サステナビリティにおいて世界的な先進国であること。
そして、この決断はのちのspixnのアイデアに繋がる大きな転機となりました。
スウェーデンで最も印象的だったのは、社会課題への取り組み方です。
それは、目の前の問題を解決することを軸にするのではなく、未来の理想像を提示し、それに共感した少数派と共にムーブメントを起こすアプローチでした。
この手法で成功を収めた企業がいくつも存在していたのです。
その中でも特に学びが多かったのが、以下の2つの事例です。
1つ目は、H2GS(グリーンスティール)
鉄鋼業界は、世界全体の二酸化炭素排出量の8%を占める環境負荷の高い産業です。
そんな中、H2GSは、従来の鉄鋼生産過程で排出されるCO₂を約75%削減する新しい技術を開発しました。
驚くべきことに、同社は重厚長大産業である鉄鋼業界に於いて、市場が存在しない段階で、工場建設にも着手していない状態で、社長のHenrik Henriksson氏は構想を示したプレゼン資料だけで主要な自動車メーカーや建設会社から調達コミットメントを獲得し、金融機関から1兆円規模の資金調達を成功させたのです。
この「H2GSショック」はArcelormittalやThyssenkrupp等の伝統的な鉄鋼会社にも波及し、結果的に鉄鋼業界全体の脱炭素化を5〜7年加速させるほどの影響を与えました。

2つ目は、フェアフォン
フェアフォンは、消費者に「修理する権利」を提供するスマートフォンを開発しました。
本来のスマートフォン業界では、定期的な買い替えが前提とされていましたが、同社はそのルールに異を唱え、パーツごとの修理や交換を可能とする設計を採用し、長期利用できることを可能としました。
特に当初のフェアフォンの性能は、iphoneやSamsungなどの製品と比べて明らかに劣っていました。
それでも、買い替えを前提とする既存のルールに違和感を覚える消費者から熱狂的な支持を得て事業をスタート。
このアプローチが支持され、現在では欧州での市場シェアを拡大させるだけでなく、欧州や米国での「修理する権利」に関わる法整備にも影響を与えています。
フェアフォンの挑戦は、単なる製品改善ではなく、消費者の価値観そのものを変えることに重きを置いています。

上記2つの事例に共通していること、それは現状の課題解決にとどまらず、
「社会の価値観そのものを再定義し、新しい未来を形作る」というビジョンです。H2GSが産業の脱炭素化を加速させ、フェアフォンが消費文化に一石を投じたように、これらの企業は未来志向の大胆な挑戦を通じて大きな変化を生み出しました。
この考えが、スウェーデンでの経験を通じて得た最大の教訓であり、僕が起業に向けて進む原動力となったのです。
ムーンショット(Moon Shot)

スウェーデンでの経験を通じて、僕の中で確信に変わったことがあります。
それは「到達不可能に思える目標への挑戦=ムーンショット」こそが、僕の生き方そのものであり、起業の本質だということです。
「ムーンショット(Moon Shot)」とは、月に向かってロケットを打ち上げる計画という意味です。
月面着陸を目指す、第35代アメリカ大統領のJ.F. ケネディ氏のアポロ計画のように、壮大で非常に困難が伴うが前人未到で可能性に満ちた計画のことをいつしか「ムーンショット計画」と呼ぶようになりました。
ムーンショット、通常の枠を超えた高い目標を掲げ、それに全力で挑むこと。
その精神が、spixnという事業に込められています。
次回ご紹介するspixnは「資源が眠らず、巡り続ける」世界を実現する為の挑戦です。そして、次のような信念が込められています。
● 現状の市場規模や課題解決にとどまらず、未来の理想像を描くこと
● 従来の価値観を超えた新しい可能性を示し、人々の行動を変えること
● 大胆な挑戦を通じて、社会全体を新しい方向にシフトさせること
次回は、「なぜspixnなのか」というテーマで、サービスに込めた意味や背景をお話しします。ぜひご期待ください!