#02 - minolta-16
我が家の防湿庫にはいくつものカメラが眠っていますが、特にフィルム式カメラは最近ではすっかり出番が少なくなってしまいました。そんなカメラたちの「せめて note でお披露目させてもらえれば」企画の第2段として、今回は minolta-16 を紹介させていただきます。
出会い
夏休みのある日、日本橋の電気屋街を一通り見て歩いた帰りに、難波の小さなカメラやさんに立ち寄りました。この店はLeicaなどの高級中古カメラもありましたが、奥のウインドウには雑多な中古カメラがごろごろと並んでいました。その中で気を引いたのが黒い minolta-16。ウインドウから取り出して触らせてもらいました。全体的にきれいで、乾いた機械的シャッター音が心地よく響く。完全機械式のメカニズム。手のひらにすっぽり納まる 精悍な黒のボディー。魅力的な価格。店のご主人にこのカメラの逸話や出所など話をうかがったのち少しまけてもらって結局、
「これください!」
(わたしには小さく精巧なものに妙に惹かれる特性があるようです。)
どんなカメラ?
16mm フィルムカメラってご存知ですか?
戦後、日本が復興していく頃に生まれた、Minoxほど無理に小さくなくて、35mmに比べるとはるかにコンパクトなサブミニカメラです。
こんなサイズ感です。
撮影するときは、ボデイの一部を引っ張り出します。これでファインダー(写真右の窓)が使えるようになり、シャッターボタンが現れます。レンズ部(写真左の窓)の内部に青い丸が見えますが、シャッターを切るとこの丸が消えます。もう一度ボディを戻し、再度引っ張り出すとシャッターチャージが完了します(青い丸が出現)。この辺りはMinoxと同じ。
W:80、H:42、D:25mm、重さは 157g と本当にコンパクトなカメラです。
レンズは ROKKOR f2.8, 22mm。焦点距離固定のパンフォーカスです。
絞りとシャッター速度は、本体横のダイアルで設定します。自動露出が一般的になる前のカメラなので、露出は撮影者が考える必要があります。
16mm フィルム
残念ながらこのカメラの16mmフィルムは1990年に製造が中止されており入手は困難です。
でも、「せっかくだから撮ってみたい」
ということで、一度トライしたことがあります。
そのときはフィルムの空マガジンもなかったので、アクリル板を曲げてマガジンっぽいものを作って、押入れの中に入って(簡易暗室)、35mmのモノクロフィルムをカッターの歯で16mmにカットし、カメラに装着。現像タンクや現像液を調達して、風呂場で現像に挑みました。
画像が被っていたりしていたものの現像は成功しました。でも、それで満足してそれっきり。(ネガもどこかに行っちゃった…)
現像プロジェクトから数年後、フィルムの空マガジンを入手しました。
これさえあれば、ちゃんと撮影できそうです。(試していませんが)
minolta-16 の歴史
戦後の復興の先駆として、無名メーカーによる豆カメラが爆発的に売れました。これがピークを迎える1950年ごろには本来のカメラメーカーも積極的に参入し、16mmフィルムを使った本格的なカメラに置き換わっていきます。
その代表的なのが Mamiya 16 (1949)。その1年後、甲南カメラ研究所のサブミニカメラ「ミカオート」を千代田光学精工(ミノルタ)が協力して、コーナン16オートマットが世に出ます(1950)。
コーナン16は、アルミによる軽量化など改良を加えた Minolta-16 (1957)に引き継がれ、セレン式の露出計を備えた16EE (1962)やCDS露出計を備えた16EE-II (1963)で自動露出化、minolta-16QT (1972)では、ゾーンフォーカスながら焦点調整を可能とするなど発展を続けます。
ところが、1972年にコダックが110フィルムという規格を導入したことで日本のカメラメーカーもすべて110フィルムカメラを採用していきます。カメラ初心者を狙った110フィルムは、日本人が考える精密カメラとは程遠いものなのに、これにより日本で独自な発展を遂げていた16フィルムカメラは minolta-16QT (1972)を最後に開発の幕を閉じてしまいました。
おわりに
ここで紹介したminolta-16 は、1960年に千代田光学精工から発売された II型です。このタイプは電気的な部品を一切使っていない、純粋にレンズと金属機械でできた清々しいカメラです。特に、
機械式のシャッター音がここちよい!
フィルムが入手困難なこのカメラ、実用的価値はゼロですが、ヤフオクなんかですごく安く落札されています。機械好き/歴史好きのみなさま、一台ポチっておかれるのもいいのではないでしょうか?