〔憲法コラム19〕平等原則違反の違憲審査基準
1 二段階審査
法の下の平等は、他者との比較において成立する相関的な権利である。平等原則の問題とするためには、比較可能な第三者を措定し、自分に対する取扱いがそのものに対する取扱いよりも劣ることを主張しなければならない。すなわち、基本的には①別異取扱いが存在するか→②それが正当化されるかという思考の流れをたどることになる。この点で、①権利として保障されるか→②それが制約されているか→③その制約が正当化されるかという思考の流れをたどる自由権の制約に関する問題とは違いが生じることになる。
2 14条1項後段列挙事由
⑴ 後段列挙事由該当性
同項後段が列挙する「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」という文言につき、これを制限列挙と捉えるか、例示列挙と捉えるかが従来から議論されていた。「法の下に」平等であるという文言の解釈について、立法者非拘束説を採る場合、後段列挙事由による差別の禁止だけが立法者を拘束すると解するため、制限列挙と解する立場が導かれる。これに対し、立法者拘束説を採る論者の多くは例示列挙と捉える立場を採用していた。
また、現在では後段列挙事由を例示列挙として捉える立場においても、列挙された事由による差別は原則として不合理な差別に当たるというように、単なる例示列挙以上の一定の意味を認めようとする傾向がみられ、その意味付けの程度の差によって以下のように立場が分かれている。
〈論点1〉例示列挙説を前提に14条1項後段列挙事由をどのように解するか。
A説(判例)
結論:単なる例示列挙であり、特段の意味はない。
B説(通説)
結論:後段列挙事由による区別は原則として不合理な差別に当たる。
C説(芦部)
結論:後段列挙事由による区別の場合には、原則として不合理な差別と推定され、これを合憲とするためには強度の正当化理由の存在が必要であり、その挙証責任は公権力側が負う。
⑵ 「社会的身分」
14条1項後段列挙事由のうち、「社会的身分」の意味については判例・学説で様々な立場が存在する。
〈論点2〉「社会的身分」とは、いかなる意味か。
A説(狭義説)
結論:「生来の身分」とか、「出生により決定された社会的地位又は地位」というように、狭く解する。例えば、被差別部落出身、帰化人の子孫、特定の地域の出身者であること等が「社会的身分」である。
B説(中間説)
結論:「人が社会において一時的ではなしに占めている地位で、自分の力ではそれから脱却することができず、それにつき事実上ある種の社会的評価が伴っているもの」と解する。
C説(広義説 判例)
結論:広く「人が社会において一時的ではなしに占めている地位」をいう。例えば、各種職業や居住地域等も含まれる。
[重要判例]東京高判平9.9.16百選Ⅰ(第6版)[31] 東京都青年の家事件