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この人生は暴力と不名誉の繰り返し / トゥルー・ディテクティブ シーズン1〈あらすじ・ネタバレあり〉
評価:82点 / 100点
マシュー・マコノヒー演じるラストは、2012年の聞き取り調査中にずっとローンスターというビールを飲んでいる。ローンスターは、テキサス州の町名、ビールブランドであると同時にマコノヒーが出演した1996年の映画【真実の囁き】の原題でもある。
なぜラストがビールを飲みながら話しているかというと、単にアルコール依存症だから・・・というわけではなく、話した内容から法的効力を排除するため。つまり、話した内容が自分に不利なものにならないように立ち回るキレ者を意味してるが、警察官たちはその意図に気づかず見事に罠にハマった。
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4〜5話にかけての興奮度は、シーズン最大のピーク。バイカー・ギャングへの違法な潜入捜査→6分間ノーカットの低層住宅街での強盗シーン→無抵抗な容疑者の殺害→隠蔽工作の流れに加えて、彼らが聞き取り調査の刑事に話す内容とは違う"真実"が、視聴者に映像として伝わるのも面白い。
10年絶縁していたラストとマーティだけど互いを守るための嘘をちゃんと覚えてるあたり、彼らがほんの僅かだとしても、まだ互いを大事にしてるのが分かる。
第4〜5話では、マーティがPink Floydのアルバム【The Division Bell】のTシャツを着ている。【The Division Bell】は、人々のコミュニケーション不足による対立を描いたコンセプト・アルバムで、まるでラストとマーティを暗示しているようだ。
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第4話には、バイカー・ギャングの仕切るクラブのシーンで製作総指揮のニック・ピゾラットがちょい役で出演している。
第6話では、復讐のセックスを決意したマギーがバーに繰り出すのだが、彼女の薬指にはちゃんと指輪が・・・。これは単純にミスったのか、それとも"不貞に対する抵抗"のメタファーなのか曖昧。
〈あらすじ・ネタバレあり〉
1989年、テキサス州。
テキサス州警察の刑事・ラストは、乳児の娘に覚醒剤を打って死なせた男を報復で殺害し、逮捕される。
州検事から起訴しない引き換えに潜入捜査官への転身を命じられたラストは、93年にヒューストンで麻薬組織の構成員3人を殺害し、自身も負傷。
殺人課への異動を希望したことで、彼はルイジアナ州への転属を命じられる。
娘を亡くして妻とは離婚、眠るのさえ一苦労でたとえ眠っても悪夢を見る生き地獄を送っていた。
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1995年、ルイジアナ州。
保安官の要請を受けた州警察の刑事・マーティは、3ヶ月前にテキサスからやってきた相棒・ラストと共に、儀式殺人を彷彿とさせる絞殺死体の見つかった現場に赴く。
死体には渦のマークが描かれており、体内からは麻薬が検出される。死体のすぐそばには枝細工があった。
特捜部もこの事件に興味を持っていたため、ラストとマーティは期限付きで捜査の指揮権を持つ。
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被害者には性器ヘルペスがあったため、ラストは娼婦の線を疑って同業者に聞き込みを行う。予想は的中し、被害者の名前がドーラ・ラングであることを突き止める。
シリアルキラーについて勉強するラストは、犯人が秩序型殺人犯でドーラ以外にも犠牲者がいると推察する。
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ドーラの家族や友人に話を聞きに行き、彼女がスパニッシュ湖にある女性保護のシェルターで暮らしていたことが分かる。
だがシェルターとは名ばかりで、一帯は女だけが暮らす売春宿と化していた。
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シェルターでドーラの日記を手に入れ、手がかりを得るために彼女の通っていた教会に向かうと、そこは火事によって原型をとどめていなかった。
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放火された日まで教会を借りていたテリオット牧師と彼の助手から話を聞き、ドーラが1度だけ"顔に傷のある背の高い男"と伝道会に参加したと証言する。
ラストは1人で、州内で見つかった死体のファイルに目を通し続け、3年前アルヴィルの洪水で上がった女性・リアンヌの死体とドーラの死体に共通点を見つける。
リアンヌの生前の恋人・ルドゥーが仮釈放中の身にも関わらず8ヶ月前から失踪していることも判明。しかも、ルドゥーが刑務所に服役していた時の同房者は、ドーラにDVをしていた夫・テイラーだった。
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彼がドーラの写真をルドゥーに見せたことで、彼女は犯行の標的にされた
テイラーから話を聞いたところ、服役中にルドゥーが"悪魔崇拝者たちによる子どもを生贄にする儀式殺人がある"と話していたことを明かし、「タイロンという人物が何か知ってるかも・・・」と。
その頃マーティはプライベートで問題を抱えていた。裁判所の書記・リサと浮気していたのだが、彼女が他の男と一緒にいるのを見て嫉妬し、脅した。そのせいでリサはマーティの妻・マギーに浮気を暴露し、マギーは2人の娘と出ていったのだ。
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リサにとっては遊びでしかないのに
マーティは、自力でタイロンを見つけ出すと彼に銃を突きつけ、テキサスのバイカー・ギャング【アイアン・クルセイダーズ】のためにルドゥーが麻薬を製造していることを聞き出す。
潜入捜査官時代に【アイアン・クルセイダーズ】と麻薬取引をしたことがあるラストは、マーティと共に違法捜査に手を染めることに。
従来の捜査手順ではルドゥーを捕まえるのに時間がかかるため、【アイアン・クルセイダーズ】に接触してルドゥーの身柄を拘束するという作戦だ。
テキサス州、ボーモントへ向かったラストとマーティ。
【アイアン・クルセイダーズ】の幹部・ジンジャーに無理やり協力させ、ルドゥーの相棒・ドゥウォールを見つけ出して尾行し、麻薬工場へ辿り着く。
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計画が失敗したので、無理やり協力させる作戦に変更
工場内で、麻薬漬けにされた少女・ケリーと既に亡くなっている少年の死体を見つけたマーティは感情的になり、ルドゥーを射殺。
ドゥオールにその現場を見られてしまい、口封じで彼も殺す。
2人はこの件で口裏を合わせ、"ルドゥーに襲われたので撃ち返した"ことにする。子どもを手にかけるクズを殺したところで彼らを責める者はおらず、英雄扱いされる。
"銃撃戦を生き抜いた刑事"という話を聞いたマギーは、マーティの不貞を赦して子どもたちと家に戻る。
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儀式殺人の犯人はルドゥーとして処理され、事件は解決した・・・かのように思えた。
2002年。
相変わらず州警察内で浮いた存在のラストだが、彼の捜査能力と犯人から自白を引き出す手腕は誰が見ても超一流なので、誰も文句を言わない。
一方でマーティは特別目立った実績があるわけでもなく、ラストの相棒であることぐらいしか価値がない。ラストが事件を解決し、マーティは彼の相棒だから一緒に評価されてるようなものだった。
2人の間ですれ違いが起きはじめる。
ラストは麻薬中毒の強盗・フランシスの取り調べを行った際に、「儀式殺人の真犯人はまだ犯行を続けている。"黄衣の王"について知りたいか?」と尋ねられる。
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大きな権力を持つ悪魔崇拝者たちに命を狙われて自殺
"黄衣の王"は、ドーラの日記にも書いてあった名前。
真犯人が別にいる説を信じたラストは、フランシスから話を聞くため拘置所に向かうが、彼は自殺していた。
ドーラの儀式殺人を州警察の特捜部が執拗に横取りしようとした件も思い出し、何か大きな権力が働いて事件をもみ消そうとしたのでは?と考え、単独で動き始めるラスト。
ルイジアナ州内の事故死や不審死、失踪扱いされている人々の中から儀式殺人の被害者候補を数名見つけ、遺族に接触。
彼らの口からは、"タトル牧師"というワードが頻繁に出てくる。
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