悪夢の殺人鬼はニュー・ライン・シネマの救世主 / 今更【エルム街の悪夢】全作品を見た〈あらすじ・ネタバレあり〉
【エルム街の悪夢】
2024/10/22鑑賞。58点。
当時破産直前のニュー・ライン・シネマは、本作が興行面で成功したことにより立て直した。
オハイオ州スプリングウッドに位置するエルム街が舞台。夢の中に現れる、鉤爪をはめた連続殺人鬼フレディ・クルーガーと彼と対決する人々を描いた人気ホラー・フランチャイズの1作目。
後に判明するフレディの弱点"自分を恐れない人間が増えること"の伏線が張られている。
当所は殺人鬼ではなく小児性愛者のレイプ犯という設定だったが、撮影直前に変更された。レイプ犯という設定は、リメイク版に反映されている。
フレディのモデルは、監督のウェス・クレイヴンが幼少期に見た人々。
フレディの服は近所に住んでいた怖いホームレスから、火傷の設定は同級生からインスピレーションを受けている。
クレイヴンはフレディが消滅するオチにしたかったが、本作のヒットとそれに伴う続編制作を視野に入れていた製作のロバート・シェイは、ナンシーを殺してフレディが生き延びるオチを検討していた。互いに譲歩したため、本作のオチが曖昧になっている。クレイヴン自身もこのオチには不満があったようで、3作目にて"その後“が描かれる。
ジョニー・デップのデビュー作としても知られているが、これはクレイヴンの娘が推薦したから。
フレディ・クルーガーはかつて20人もの子どもたちを殺害しながらも、証拠不十分で釈放された。フレディは、エルム街の住民に焼き殺され、彼らによって死体は隠される。
夢の中の殺人鬼として蘇ったフレディは、自身の殺害に関与した者の子どもたちの命を狙っていく。
親友やボーイフレンドを殺された主人公・ナンシーは、フレディに立ち向かうが・・・。
【エルム街の悪夢2 フレディの復讐】
2024/10/23鑑賞。60点。
夢の中で襲ってくるというコンセプトが素晴らしいのに、2作目にしてそれを壊す行為はただのスプラッター映画に成り下がってしまい、当時は失望した客が多かったはず。
しかしその失望を掻き消すほど、"主人公の肉体を乗っ取ろうとする"という設定は素晴らしい。そう言えるのも、パーティーを血祭りに上げる展開までだったが。パーティー会場での殺戮シーンは、前作の監督ウェス・クレイヴン自身も反対していた。
前作の主人公・ナンシー・トンプソン一家は引っ越し、彼女たちの暮らしていた家では新たな住人が生活をしている。
本作の主人公・ジェシーは、フレディ・クルーガーの悪夢にうなされ、前の住人であるナンシーの日記を見つけたことから彼女もフレディに悩まされていたことを知る。
フレディは、ジェシーの肉体を乗っ取って現実世界に復活。
ジェシーの恋人・リサは、ジェシーとフレディを切り離そうとするのだが・・・。
リサ役の女優キム・マイヤーズがメリル・ストリープに似ているなと思ったら、スタジオ側はストリープに似てるから起用したというちょっと雑な感じ。
ロバート・イングランドに関しては、本作の撮影が始まる段階でフレディを演じる予定はなかったが、急遽復帰が確定した。
フレディの鉤爪グローブは、本作の撮影中に紛失し、後にオークションに出されたことが判明する。
【エルム街の悪夢3 惨劇の館】
2024/10/23鑑賞。61点。
ウェス・クレイヴンの意に反して製作されたこのフランチャイズは、本作が完結作になるはずだった。元々は、時間を遡って赤ちゃんのフレディを殺害するというオチになるはずだったが、あまりにもセンシティブだったのでボツになった。
チャリに乗る女の子がジグソウの人形に見えたのは秘密。
パトリシア・アークエットやローレンス・フィッシュバーンといった後のスターたちが出演し、1作目の主人公・ナンシーが復帰。
刑務所に誤って閉じ込められた修道女が、大勢の囚人にレイプされて宿した子どもがフレディであることも明かされる。
1作目では"自分を恐れる者がいなくなること"が弱点として描かれていたが、本作では"恐れる者が増えるほど強くなる"ことも判明。
1作目のラストから6年後。
殺人鬼フレディ・クルーガーは前作で消滅したかに思えたが、着実に復活の準備を進めてあ。
夢の中でフレディに襲われたティーンエイジャーのクリスティン(演. パトリシア・アークエット)は、自殺を図ったと疑われ、精神病院に送られる。
そこには、クリスティンと同じようにフレディの悪夢に悩まされる患者たちがいた。
彼らの親は、かつてフレディを殺害したエルム街の住人・・・。
大学院に進学して精神病院でインターン中のナンシーは、クリスティンたちと共にフレディとの対決に備える。
【エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃】
2024/10/23鑑賞。46点。
前作のラストで、1作目の主人公・ナンシーは死亡し、フレディ・クルーガーは消滅した。
しかし再び復活を遂げたフレディは、前作の主人公・クリスティンを殺害する。
クリスティンには"他人を夢の中に引き込む能力"があり、彼女は殺される直前にボーイフレンドの妹・アリスにフレディの存在を知らせる。
夢の中でも自分の思い通りに行動できるアリスはフレディとの対決を決意し、一方でフレディは自分を永遠に葬り去るほどの力を持つアリスを殺そうと目論む。
【エルム街の悪夢5 ザ・ドリームチャイルド】
2024/10/26鑑賞。37点。
赤ちゃんの頃のフレディはETみたい。
コメディ色が以前よりも増しており、シリアスな内容になるはずなのにそれを感じさせない。
前作の主人公・アリスは、教会の鏡を使ってフレディ・クルーガーを葬り去った・・・はずだが、アリスはフレディの復活を感じ取る。
ちなみに、厳密には鏡がフレディの弱点なのではない。フレディは殺した人間の魂を取り込むという設定で、教会の鏡にフレディが映ることで、彼に取り込まれた被害者たちが反乱を起こしてフレディを殺した。意外と誤解されてるので、念のため補足。
アリスの読み通り、フレディはまだ生きており、彼女のお腹に宿る赤ちゃん使ってこの世に戻ろうとしていた。
フレディの母・アマンダこそがフレディを倒す最終兵器。未だに見つかっていないアマンダの死体を発見して、フレディとの最終決戦を迎えようとするが・・・。
"フレディの魂が赤ちゃんに宿る"という設定は、3作目の企画段階でボツになった内容。
スティーヴン・キングとフランク・ミラーに本作の監督・脚本のオファーが来たものの2人は断り、スティーヴン・ホプキンスが起用された。撮影期間がかなり短かったのでホプキンスは苦戦して寝る間も惜しんで働き、その話を聞いた20世紀フォックスは、彼の働きぶりを評価して【プレデター2】の監督をオファーした。
【エルム街の悪夢 ザ・ファイナルナイトメア】
2024/10/26鑑賞。47 点。
ジョニー・デップとアリス・クーパーちょい役でカメオ出演。
プロデューサーとしてフランチャイズに関わってきたレイチェル・タラレイがついに監督。
【ロード・オブ・ザ・リング】フランチャイズの監督で知られるピーター・ジャクソンが当初は脚本を手掛けていたが、意見の相違から降板している。彼は本作で、フレディに殺された人々のその後を描きたかったらしい。
不良少女のトレイシーは結構タフなので、生き残る資格があると思う。
未成年者の矯正施設で働くマギーは、新しく入所してきた不眠症の青年・ジョンと全く同じ夢を見ていることを知る。
夢が何を示しているのかを知るため、唯一のヒントであるオハイオ州スプリングウッドのエルム街に向かう。
やがてマギーは、自身がフレディ・クルーガーの娘・キャサリンであること、そしてフレディの過去を知る。
精神病棟の囚人たちにレイプされた修道女・アマンダ・クルーガーによってフレディが産まれたことは過去作品で明かされているが、彼は残忍性も父親から受け継いでいた。フレディはエルム街の子どもたちを次々と殺害し、そのことを知った妻も口封じで殺害。娘・キャサリンにも殺人鬼であることを知られるが、まだ幼かったため手をかけなかった。
その後フレディは、ご存知の通り、自身が殺害した子どもたちの遺族によってリンチされた後焼き殺されるのだが、死の直前に3体の悪魔と取引をする。"肉体は失っても永遠の命を得る"という条件で生き延びたフレディは、夢の中の殺人鬼として暗躍していた。
【エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア】
2024/10/26鑑賞。59点。
息子を上空からキャッチしてもダメージ0のランゲンカンプが、3作目でフレディに殺されるわけない。
ヘザー・ランゲンカンプは実生活でもストーカーに悩まされており、それを知ったウェス・クレイヴンは彼女の許可を得て作品に取り入れた。
作中で何度も地震が起きているのでフレディが現実に現れる予兆か?と思えるが、実際に当時のロサンゼルスで地震が起きたため、それを反映しているだけ。
映画【エルム街の悪夢】の主演女優であるヘザー・ランゲンカンプは、悪夢に悩まされていた。
そんな中、夫は運転中に事故を起こして死亡し、息子・ディランは「鉤爪の男と子どもたちを夢で見る」と言い出す。
1作目の監督であるウェス・クレイヴンに相談すると、"フレディや彼に宿る悪魔は完全なフィクションではなく、クレイヴン自身が見る悪夢を題材にしていた"と判明。
そして、ナンシー・トンプソンではなくヘザーこそがフレディを倒す存在だと聞かされる。
フレディと悪魔は、映画の世界と現実世界の境界線を越えるためディランを人質にして、自分たちの脅威となるヘザーを殺そうとする。
【エルム街の悪夢 (2010年, リメイク版)】
2024/10/29鑑賞。55点。
本作は、【13日の金曜日】のリメイクに続き、マイケル・ベイ率いるプラチナム・デューンズが製作を手がけた本作では、オリジナル版でボツにされた小児性愛症のレイプ犯という設定が、フレディ・クルーガーに加えられた。
【テキサス・チェーンソー】のヒットをきっかけに、ベイはホラー作品のプロデュースに力を入れるようになった。ベイが手がけた作品は大ヒットするためハリウッドの最重要人物だったが、彼の弱点は莫大な制作費をかけてしまうこと。だがホラー映画を撮影する場合は、抑えめのコストで良い。
新しい才能を発掘するため、あえて知名度の低い監督を起用し、自身は完全にサポートに回るベイのやり方は、映画会社にとっても低コストで大ヒットを生み出せるのでwin-winの関係。
フランチャイズ最大のヒットを果たしたので興行面での大成功は誰が見ても否定できないが、作品としての評価は賛否両論。
ベイが製作に関与したホラー・リメイク作品は、"オリジナル版よりももっとダークに描く"という共通点があるが、本作も例外ではなく、1980〜90年代に製作されたフランチャイズと比べると陰気だ。
80〜90年代の【エルム街の悪夢】を知らない層からすれば良作だが、知っている層からすれば駄作認定されるのも仕方ない。
フレディ・クルーガーの他に、マイケル・マイヤーズやジェイソン・ポーヒーズといった"殺人鬼が主役のスプラッターホラー"が70〜80年代に人気を博したが、90年代になると【ラストサマー】や【スクリーム】、【ルール】といった謎解き要素を含むサスペンス路線のホラーがヒットするようになった。
本作は、90年代のサスペンス路線が濃く、当フランチャイズの"フレディとの戦いに備える"ではなく"主人公が自ら手がかりを探しに行く"内容に切り替わっており、謎解き要素が強い。これこそが古参のファンから不人気な理由だ。
フレディ・クルーガーの過去を知ってるファンからすれば、謎解き要素は時間の無駄でしかないし、ビジュアルの「これじゃない感」も・・・。
また、過去作品から引き継がれている登場人物は、フレディとナンシーだけ。つまり他の学生キャラは殺される要員でしかない。
いっそのこと、2作目でフレディに肉体を奪われる青年・ジェシーを出すぐらいぶっ飛んでた方がマシかも。
最大の謎は、小児性愛者のフレディがなぜ成長したナンシーへ性的に執着するのか。オリジナル版では、自分を殺害した相手の子どもを狙う復讐要素や自分を倒す力を持つ相手を先に殺すという"やられる前に叩き潰せ理論"で動いていたのだが・・・
冒頭の不気味なウェイトレスの正体が、1・7作目の主人公を演じたヘザーランゲンカンプであることはほとんど知られていない
カイル・ガルナー、ルーニー・マーラ、トーマス・デッカー、ケイティ・キャシディ、ケラン・ラッツといった当時はハリウッドの未来を担うと思われた若手スターが大集合しているが、大成したのはマーラぐらい。