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#161 成瀬になりたい

最近のドラマを観ていると作風が暗く考えさせられるものが多いなと強く感じる。

ただ単に希望や夢を描く作品は少なく、
暗闇の中から光を。絶望の中から救いを。
そんな作品が増えたなと年々思うようになったし、作品を作った人達から「あなた達はこの作品のテーマについてどう思う?」と我々に質問を投げかけ、各々作品について考えさせられるというスタンスのエンタメが増えてきたような気がする。


何も考えずに「あ〜楽しかったなぁ」と思える作品は少ないのではないだろうか。


(たまには本でも買って読むか〜)
本を小さい頃から読まない自分はごく稀に
このような事を決心するのだが、本屋に行くのを躊躇ってしまうので、この決心が行動に移されることは殆どなかった。

ただ今回は違かった。ここではどうしても
書けない事情があるので割愛させてもらうが
久しぶりに(この本を読みたい)と思う出来事があったのだ。


(本屋に行くのは余りにも面倒だったので
Amazonで注文した)


自分が購入したのは2024年の本屋大賞を受賞した「成瀬は天下を取りにいく」という作品だ。

表紙に描かれている西武ライオンズのユニフォームを着た女性は熱烈な西武ファンの友人を持つ自分からするととてもインパクトがあり、読む前からワクワクが止まらない。


話の内容に関しては多分他の人のnoteやAmazonのレビューをみた方が分かりやすいと思うし、この話を上手くまとめる自信がないのでここでは余り触れないでおこうと思う。


読み終えた時に(成瀬(主人公)みたいになりたかったな)という思いと(いや、まだ成瀬みたいになれるのではないか?)という思いが自分の中にあった。

成瀬は独特の感性の持ち主で、小さい頃から芸に長けており色々なことで表彰されている。つまりなんでも1人で出来てしまうスーパー人間だ。

物語の中では「M-1グランプリに出る」「高校卒業まで髪を伸ばす」などといった「それをやった所で何の意味があるの?」と言いたくなるような挑戦をしているのだが、彼女は結果を期待していない。

「やってみないとわからないことはあるからな」成瀬はそれで構わないと思っている。たくさん種をまいて、ひとつでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験はすべて肥やしになる。

新潮社 宮島未奈「成瀬は天下を取りに行く」
187ページ

という記述がある。今まで沢山の人に言われたことなのだがかなり大掛かりな挑戦をしてきた成瀬が言うと説得力が増す。

結果なんて気にせず何事も楽しむことが大事。
得られることがあればラッキーだし、何も得られなければそれでも良い。そんなマインドの持ち主だ。


作中で成瀬は突拍子もなく挑戦をし始め、急
なタイミングで挑戦をやめるのだがそれで良いのだ。思ったら始めれば良いし、どこかのタイミングでやめれば良いのだ。

そのくらい挑戦は気軽で良いんだ。


成瀬は「200歳まで生きる」という夢を持っていて周囲の人たちはこれを真に受けてはいない。

ただ、成瀬はこう主張している。

「わたしが思うに、これまで二百歳まで生きた人がいないのは、ほとんどの人が二百歳まで生きようと思っていないからだと思うんだ」

新潮社 宮島未奈「成瀬は天下を取りに行く」
155ページ

この言葉が凄く胸に刺さってしまった。

実際世の中には「そんなもの出来るわけない」というものが数十年後、数百年後に誕生し
当たり前になっている。

根拠も何もないが成瀬は200歳まで生きることができるような気がする。


序盤から外から見た成瀬を描いているのだが
物語の終盤、成瀬視点で物語が進んでいく。

成瀬の中にもあったある'思い'が
より成瀬を成長させるのだが…。

ここはぜひ読んでもらいたいので触れないでおこう。


noteの最初に言及した
最近の作品は暗いものが多いという話を思い出して欲しい。


観ていて辛いというか、
被害者意識が強い作品が多く
現代社会の生きづらさ」がテーマとなる作品が本当に多くなったなと思っている。


この作品も「普通」という誰かが勝手に決めた価値観がうじゃうじゃ存在している社会の中で「変わった人」というレッテルを貼られた成瀬がどう生きていくのかという話。

と「現代社会の生きづらさ」をテーマにするのならばこのようにまとめることが出来るだろう。

ただ、成瀬は生きづらさなんて微塵も感じていない。

自分のやりたい事をやりたいと思ったタイミングで実行している。


つまりこの作品は、成瀬がこの社会で自分らしく生きていく話なのだ。




時間をかけずに読めて元気や生きる活力をくれるし、間違いなく成瀬あかりのことをあなたも好きになると思う。



ここにいる成瀬あかりの虜になった人のように。

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