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【公開】長編小説『独白』が完成するまで②【アイディアを具体化する】

 こんにちは、山本清流です。


 2019年の9月に『独白』という小説を書きました。

 登場人物の独白形式で、物語が展開する長編ミステリです。↓

 無料(結末以外)なので、ぜひ。


 この作品の創作過程をちらりと公開していく企画です。

 ①アイディア、②アイディアを具体化、③プロット、④執筆、⑤推敲の5つのプロセスに分けて、解説します。今回は、②のアイディアを具体化、です。

 ①をご覧になりたい方は、こちらへ。

 あくまでも僕の一例ですが、「こんな感じで小説を書いているのか」とイメージできるかと思います。

 さっそく、創作過程を覗いていきましょう。


 【アイディアを具体化】

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 今回は、アイディアを具体化していく工程です。

 ぼんやりしたアイディアを具体的な形に落とし込んでいきます。


 【アイディアはなにか】

 前回お伝えしたように、『独白』のもととなっているのは、「遠回しに攻撃してくる人」というアイディアです。

 いやぁーーな感じのアイディアですが。


 リアルに描けたら、面白い作品になると思いました。

 むしろ読んだら嫌になるくらいのリアルさを追求したい気持ちでした。


 このアイディアを、具体化していきます。


 【舞台はどこか】

 最初に考えたのは、たぶん、舞台でした。

「遠回しに攻撃してくる人」というテーマに適した舞台はどこなのか。


 マスコミ関係だとストレートすぎるし、OL同士の戦いだとありがちになると思いました。

 そこで思いついたのが、中学校という舞台です。


 「中学校」と聞くと、暗い感じな印象を受けますが、その暗い感じの印象がジャストフィットだと思いました。

 当然、遠回しに攻撃されたら嫌な気持ちになりますが、中学校という舞台なら、その嫌な感じが表現しやすいと思ったのです。


 【キャラクターは誰か】

 次にキャラクターを具体化していきました。

 まずは、「遠回しに攻撃してくるキャラ」が必要です。


 そのキャラクターはどんな人か。想像をめぐらしました。きっと、クラスでは人気者に違いない。人から好かれていて、裏でこっそりと人を傷つけている。明るい人だろう。明るい雰囲気で、なにげなく、遠回しに嫌な言葉を口にするのだ……。 

 もちろん、女子生徒で……。


 続いて、ターゲットにされるキャラクターです。そのキャラクターは、そもそも、被害妄想の強いキャラだろう。なにげないことにも反応しやすい。だからこそ、遠回しな攻撃にも気づきやすいし、簡単に傷つく……。

 こちらも女子生徒で……。


 こんな感じで、キャラクターを具体化していきました。


 【関係性が大切】

 この工程では、キャラクターの関係性を意識していたと思います。

 キャラクターを単独でつくっていくのではなく、他のキャラクターとの関係性の中で、どういう特性のキャラが面白いか、と考えました。


 例:攻撃者とターゲットの関係

 遠回しに攻撃してくる女子生徒Aが明るくて人に好かれているという設定をつくったことで、ターゲットにされる女子生徒Bは、女子生徒Aに簡単に反発できないという状況に追い詰められます。

 このようなストーリー展開にも影響する関係性を意識して、キャラクターの特性をつくっていきました。


 【ストーリーはどんなか】

 『独白』をつくったときは、舞台とキャラクターが揃ったあとで、ストーリーを考えていきました。


 主な登場人物は二人で、攻撃する人と、攻撃される人です。まずは、この二人が出会うところから。


 どのように出会ったか。出会ってからなにがあったか。どのように嫌がらせが始まったか。その後、どのように嫌がらせが発展したか。そうして、結末はどうなったか。


 細かく想像をめぐらしていきました。この段階で、攻撃される人が自殺に追い込まれる結末にしようと決めていました。


 【大袈裟なほうがわかりやすい】

 自殺なんて、ちょっと大袈裟では、と思われるかもしれません。

 でも、大袈裟に書かないと、読者に読み飛ばされちゃったりします。


 大袈裟にするくらいが意外と読みやすいのでは、と山本は考えております。


 以上のように、ぼんやりとしたアイディアを具体化していきました。


 【僕が注意したこと】

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 アイディアを具体化する中で、僕が注意したのは、チェーホフの銃です。

 以下で、解説します。


 【チェーホフの銃とは】

 簡単に言えば、伏線を回収することです。

 もっと言えば、「伏線にならないものを物語に入れてはいけない」という鉄則です。


 つまり、無用な要素が物語にあってはいけない、ということ。


 物語に登場する要素にはすべて役割があって、何らかの形で物語に貢献しているはず。

 そうではない要素が物語の中に入っていたらダメ、との話です。


 【アイディアで統一する】

 僕は、なるだけ、チェーホフの銃の戒めを守りたいと考えました。

 そこで、物語の要素をアイディアで統一しました。


 すべての物語の要素は、アイディアを支えるものでなければいけない。

 そう考え、「遠回しに攻撃してくる人」というアイディアに関連付けるように、練り込んでいきました。


 ときどき脱線したりもしましたが、そういうときは己を律し、「初心忘るべからず」と、自分に言い聞かせました。


 中心になるアイディアを常に意識していると、なんとか、必要な要素だけが物語に残っていくと思います。


 【具体化するときがいちばん楽しい】

 今回はこれくらいで。

 僕が思うに。ぼんやりしたものを形に落としていくこの工程がいちばん楽しいです。

 

 もちろん、うまく形にならなかったり、しっくりこなかったりすると苦しいですが。


 上手に形にしていけるときは、とても楽しい。美しい彫刻を彫っているような気分になります。


 次回は、『独白』のプロットを公開します。こちら↓

 ここまで、長文、読んでいただき、ありがとうございました。山本清流でした。