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香野式ベストハンドレッド2024[ジュウブンノイチ編]

2024年が始まった時「今年はベストハンドレッドやるぞ!」の予定だったのですが、目論見は壊れたので、規模を縮小してお届けします。

(完全に、さやわか式ベストハンドレッドに虎の威を借りる狐です)

はてさて、2024年に世に放たれたコンテンツはどうだったのか。振り返るにしても、自分の触れる機会が少なすぎた。時間と健康問題のおかげで、サンプル量が圧倒的に少なくて、ベストハンドレッドを作るにも、目に触れたコンテンツすべてをベストにするような事態になりかねない。なので、思いっきり圧縮して、ベスト10を選び抜いた。


第10位:STARTO周辺の「名づけ」

「あの名前を使うな。そんな名前使うなんて非人道的行為だ」と言っていたメディアの人や事務所を批判したい人が積極的に使っているのは不思議な気持ちになる。けっきょくのところ、誰かを精神的に袋叩きにしたかっただけなんだろう。

※SHOCKシリーズの終演に際しての朝日新聞の取材に答えた堂本光一の素朴な疑問がそのまま載っているのは、新聞社の良心なのか……(※2024年3月の記事です。やりとりは有料部分に書いてあります)

それにしても、改名して「SUPER EIGHT」になると聞いてホッとしたのに、彼らが「KAMIGATA BOYZ」を率いることになったのも2024年だった。これは衝撃ですよ。だってこれじゃあ「ぼくら関西の少年です」から抜け出せないじゃん……でも、もういいのか。

ちなみに、DOMOTOはパチンコのコンテンツになったら凄みがあるよね。

しかし、この手の騒動で先駆者であるところの東方神起を見るにつけ「結局はステージに立ち続けること」で勝ち続けられることがよく分かる。2人で20周年を迎えた東方神起は、たぶん今が一番格好いい。ステージに立ち続けることで、名前がついてくる。日本には兵役もないわけだし、キンプリもNunber_i も、願わくば素敵に年を重ねていってほしい。

第9位:期間限定配信アニメーション『雲のように風のように』


日本ファンタジーノベル大賞の第1回大賞受賞作・酒見賢一『後宮小説』を原作にしたTV特番用アニメーション。新作じゃないのにランクインさせていいのか?そんな葛藤もありましたが、この画質でネット公開したのは初めてだし……まぁいいだろう。

放映当時、ビデオデッキがない家だったので録画もできず。これから5年と経たずにWindows95が発売され、すぐにインターネットが始まるわけですが、キャラクター設定など、たぶん今では文化盗用とか色々問題あるので、古典として観るのが良いです。

『魔女の宅急便』などでキャラクターデザインを務めた近藤勝也の名前が目立つが、ジブリ作品の作画スタッフが大勢参加しているという。道理で、自然の風景や調度品などで、至るところに片鱗がある。制作時期は、『魔女の宅急便』のパイロット版になるのか、同時進行だったんだろうか?

いま観れば、キャラクターや世界観の描き方、演技など、もう少し凝ってほしい部分もある。ただ、1回限りの特番アニメーションでこれをやってしまおうというところに、謎の気合いを感じる。それは、オールドメディアという呼称とは無縁の、メディアとしての若さだ。


第8位:AQUA QUTTO/MYTREX

https://mytrex.jp/aqua-qutto/

トレーニングと聞いて、『帯をギュッとね!』を反射的に思い出してしまうネーミングですが。バスタブに沈めた器具の上に15分座るだけで、EMS刺激でトレーニングができちゃうよ!という、噓みたいな手軽さが良い。トレーニングというか、むしろリラクゼーション目的で使っている。

・とにかかく身体を、鼠径部のまわりをストレッチできる
・デリケートな場所の緊張をほぐす
・腰のポジションが定まる
・まるで、よもぎ蒸しの後のようなポカポカさを手に入れる

気づかないうちに、身体の中が緊張していたことがよくわかる。踊らなくなってずいぶん経つが、腰のポジションがわからなくなり、姿勢の治し方がわからなくなりがちだった。(姿勢がもともと悪い人なので)なのに、腰のポジションを身体が自然と取り戻してくれるので、翌日以降も楽に過ごせます。

つい1つ前のランキングと落差が激しいですね……仕方あるまい。

ちなみに、最初は感電のおそれがないのかおそるおそる……でしたが、今じゃもう、できれば毎回やりたいぐらいにハマっている。※入浴剤と併用できないのが難点

第7位:4回転の神、新時代へ(イリア・マリニン)/フィギュアスケート

フィギュアスケートは、常に、ずっと面白い競技であり続けている。2024年3月に開かれた、モントリオール世界選手権で、マリニンが2019年以来破られていなかったネイサン・チェンの記録を超えた。「4回転ルッツ-1回転オイラー-3回転フリップ」の3連続コンビネーションジャンプを史上初の成功を決めたからで、なんだかんだ言って、競技としては点がすべて。

彼の存在は、ロシア・ベラルーシの不在について、もはや誰も触れないことについての、不均衡をつないでいる。彼が美しいジャンプを決めるたびに、きっとすぐに戦争が終わって次のオリンピックには間に合うんだろうなんて、根拠もなくタカをくくってしまっていた自らの愚かさを常に意識してしまう。

歴史にIf(もしも)は存在しないが、もしも。そうだ。もしもマリニンがアメリカで生まれておらず、ロシアを出生地としていたならば……このタイミングで観ることは叶わなかっただろう。

それと同時に、2024年の年の暮れには、織田信成がショートにマツケンサンバⅡを選んで4回転を決めたことにも触れておかなくてはならない。日本人でありながらフィギュアスケートを面白いと言うのは、クラシックバレエや音楽と同様に、旧来の偏見に満ちた基準を愛することへの覚悟が求められる。全日本で「みんなが盛り上がるから」という理由を述べているけど、それに対する1つの回答でもあると思う。

第6位:MEDI NECK/MYTREX

https://mytrex.jp/medineck/

またEMSかよ、という誰かの声が聞こえてきそう。しかし、ジェルが要らないのに本格的な温熱EMSを家庭で操作できるのが素晴らしすぎて、泣く泣く削っているのだ。色んな人に紹介されすぎのMEDI NECKとあって、ここで取り上げなくても……とは思うのだけど。

医療行為である通院と比べるのはよくないけど、やっぱり、毎日(自由診療でも)通院できるわけじゃないので、家でいつでもできるというのが良い。首がのびて温まることで、コンテンツ摂取にも多少役だってくれた。これがなかったら、とっくに倒れていたと思う。

MYTREXは「これなしでは生きていない」とさせるのがうまい。それは2000年代前半のタワレコにあった「NO MUSIC, NO LIFE」を思い出させる。本当に試合巧者だ。


第5位:人文ウォッチ爆誕

人文系のネタを拾い、全国で開かれる読書会やトークイベントが日付ごとにリストアップされているサイトが爆誕した。「イベント」「新刊」「ウォッチ」の3つのタブで整理されている。(新刊ウォッチは、ただいま更新にかかるコストが大きすぎるためお休み中とのこと。残念!)さらにYouTubeでも週1に紹介する、開かれたヲチ専用サイト。

古式ゆかしいテキストニュースサイトだが、クロールサービスが衰退しているときに、更新大変だろう。個人的には「ウォッチ」部分へさらなる期待をしている。これ以上の拡充は、担当の植田さんの負担が大きくなりそうで、なんとも言えないですが、人文系が扱うさらに幅広い分野を拾っていただけるといいな……と、勝手に応援しております。

イベントに一覧に関しては、自分がほとんど東京圏から出ずにいることを実感する。東京と言ってもイベントスペースの文化がある地域は限られていて、私のいる地域なんて無縁な感じもあるのだが。それでも、フラッと出かけられる場所にはある。それにも関わらず……東京にいると、いろいろ甘えていることを忘れてしまう。

全国のイベント一覧については、2009年以降に2回ほど(人文系に限ったものではなく)「ぴあみたいなやつ、できそうなんだけどなぁ」と思って手を付けた時期があったので、勝手に(意思を継いでくれる人がいる!)と思ってうれしい。


第4位:世間の目を知る「プリキュア フレーズ写真館」

プリキュアを親として魅せる世代のフォトグラファーとコラボレーションをして、プリキュア歴代作品の「名言・名フレーズ」を軸にした写真を集めた企画だ。

 広告に掲出されているプリキュアのフレーズは、写真家たちが子どもたちに伝えたいメッセージや、過去に自身のお子さんとプリキュアを見ていた時に胸に響いたフレーズなどの観点から選定いただきました。
 今回、あらためてプリキュアのフレーズにフォーカスした企画が実施されることについて、プリキュアシリーズ 初代プロデューサーの鷲尾は「プリキュアに連綿と受け継がれているテーマやフレーズには、“大人になってから思い出せば心に染みる言葉”がたくさん込められています。写真家の皆様が切り取った日常の瞬間とともに、大人の皆様にもぜひお読みいただければと思います」とコメント。プリキュアが紡いできた、親から子へ伝えたくなるような胸に響く言葉たちが、多くの親子が乗車する日比谷線車両でのトレインジャックやSNSにて広告が展開されます。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000318.000059287.html

最初の感想は「ヤバいものを見てしまった」という罪悪感しかなかった。

2次元と3次元のミックスされた世界が、通勤中の車内にワサワサ貼られているのである。それだけで頭が混乱しそうになる。繁忙期なのに、まったく気が気でない。毎日ドキドキしてしまった。

しかし、そんなことを思うのは少数派である。これを見て「ヤバいものを見てしまった」と思う人間こそヤバい側にいるという認識に至った。

自分と同年代のフォトグラファーたちは、未来ある子のために与える世界のための視点で作品を選んでいるらしい。自分が励まされてきたわけじゃない。プリキュアで育った高校生フォトグラファーでもなく、妙に詳しい20年選手のお友だちでもなく、子どもたちを「正しく導ける大人」の作家のメッセージである。

興味のない人には何の傷も残さないし、心温まる写真が並んでいるだけの、心地いい空間だったのだろう。そしてそれが、圧倒的なマジョリティだ。世間の尺度が可視化される瞬間は、いつも突然に訪れる。

2024年は、プリキュア20周年イヤーだったということで、いろいろなキャンペーンが投入されていた。本編の『わんだふるプリキュア』では、毎週ペットの写真を募集していて、その可愛さにかき消されてしまった向きもある。しかし、あの車内の様子は忘れられないし、そんなものにときめきを覚える感情は公式から認められていないし、これからも認められることはない。そんな些細なことでも、書き留めて覚えておく必要がある。

第3位:連続テレビ小説のお供に!『就職氷河期世代 データで読み解く所得・家族形成・格差』近藤絢子

連続テレビ小説『おむすび』とセットで読みたい。就職氷河期世代を、1993~2004年に「高校・大学など」を卒業した世代として研究。同世代の現象に、心を痛めつつも自身の思い込みとは別の話として読み解きを進めようとしている点が良い。その姿勢が、定量的な分析と定性的な分析の中庸をとっている。

ちなみに、『おむすび』の主人公は、2009年に専門学校を卒業しているため「ポスト氷河期世代」にあたる。主人公の姉の方が、「就職氷河期世代」まっただ中だ。このドラマについては、「ギャル」と「就職氷河期世代」についてクロスオーバーする部分を削ぎながら、2つの震災を「食べること」でつなごうとしている意図が感じられる。本書を読むと、思わずドラマで削ぎ落された部分を脳内で埋め合わせしたくなる。

以下は本書を読みながら考えたことなのだが……究極の没個性で、はみ出した者を「じゃない側」へ追いやることで自分らの縄張りを主張するギャルが、いつのまにか神聖化されていることについて、誰かちゃんと「違うよ」と言ってあげてほしい。自らを見世物として価値の最大化を図りながら、ギリギリのプライドを保つような生き方を、自分で選んでいるような錯覚は、まったく良いものであるはずがない。それは、世紀末だけが理由ではなかったと思う。もしも就職氷河期への対策がきちんと取られていたら。ギャルはもう少し違う形で大人になれたかもしれないし、そもそもあそこまでギャルが過激にならずに済んだのかもしれないし、「トー横キッズ」に至る流れも、少しだけ変わっていたはずだ。

第2位:呪術廻戦展(東京)

まだ大阪会場で待ってる人、すみません。でも良いものだった。デジタル作画のリアリティが伝わってきた。作者が信頼できる語り手であると思った。

大阪で待っている方におすすめなのは、音声ガイド。聞かないと損です!

これは完全に私情だけど、勤務先が壊される(新宿西口でお勤め中だからさ……)シーンが大写しになってて、これはスカッとしてしまった。仕事中につらくなったら、あのシーンを思い浮かべることにした。これが非常に気分が良い。感情が落ち着く。

なにより、完結おめでとう!!


第1位:南飛騨アートディスカバリー

美術館という「箱」に対する、壮大なアンチテーゼが、小気味よく流れる場だった。会場のサイズ感が、それを意識するのにちょうどいい。

個人的には、田中泯の舞台が観れなかったのと、マルシェを味わえなかったことは大きな心残りで、来年行くとしたら、もう少しゆっくり旅程を組もうと思う。

どの作品もすごかったけど、特に弓指さんの作品が、圧巻すぎた。外から観るのではなくて、いつの間にか絵の中に自分もいて、それはノベルゲームのセリフを一つひとつ読みながらクリアしていくようだった。3次元すべてを使った結果、時間という4次元も超えてしまうかのような、不思議な気持ちにとらわれた。

また、下呂温泉は良い湯だ。

まとめ

結局のところ……とにかくEMSが2つもランクインしたのは偶然ではない。身体がが資本だというのは、身に沁みてわかった。

来年も身体の不調は続きそうなので、インプットもアウトプットも、できることは着実に、やる。年末の最後には、ちゃんとベストハンドレッドを作りたい。それが2025年の目標ですね。

#今年の振り返り

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香野わたる
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