【ブランド作りを考える④】ローカルで活躍するには?~土地のオリジナリティを引き出すブランディング支援~
こんにちは、スパイスボックス・採用広報担当の阿久津です。
先日、Soicial Branding Lab.主催で「SNS時代のブランドづくりとキャリアについて考える【ブランドと人生のデザイン論】」というテーマで、オンラインイベントを2日に渡って開催いたしました。
その中でも、今回はスパイスボックスの卒業生でもある富川岳さんのお話を一部、記事として公開します。
第1弾「土屋きみさんパート」の記事はこちら▼
第2弾「河尻さんカンヌパート」の記事はこちら▼
スピーカー紹介
メインスピーカー:富川 岳(ローカルプロデューサー)
スパイスボックスを経て、2016年に岩手県遠野市へ移住。Next Commons Lab 立ち上げを経て独立。デザインや情報発信を生業としながら、岩手の豊かな地域文化に傾倒し、民俗学の視点からその土地の物語を編み直し、ツーリズムや商品開発、デザイン、コンテンツ開発、教育機関と連携した取り組み等様々なプロデュースワークを行う。プロデューサーとして岩手ADC2018コンペ&アワード グランプリ受賞。遠野文化研究センター運営委員。遠野文化友の会副会長。遠野遺産認定委員。宮城大学非常勤講師。岩手県経営・技術支援事業専門家。遠野市観光協会理事。
インタビュアー:小谷 哲也(コミュニケーションプロデューサー/ソーシャルプランナー)
幅広い業界業種のクライアントで、デジタルマーケティングの戦略設計・プランニング~エグゼキューションまで従事。近年はSNSにおいて、トライブを起点としたエンゲージメントコミュニケーション/大型キャンペーンの設計を多数実施。過去に担当した「#このラジオがヤバい」では、 #Tweet/RT:約60万、エンゲージメント:約310万、日本のハッシュタグレンド1位を獲得。Markezine・DIGIDAYなどでも実績掲載。
ローカルに飛び込んだきっかけ
小谷:本日は、「土地に新しい価値観をもたらすブランディング支援とは?」というテーマで、ローカルでのブランディング支援についてお伺いしたいと思います。では、まず自己紹介をお願いできますでしょうか?
富川:はい。僕自身はスパイスボックスに入社してからしばらくは食品メーカーのデジタルプロモーションを担当していました。この当時は地域文化とか民俗学は全く知らない状態でした。ただ、新潟県の田舎出身でしたし、大学が群馬だったこともあり、ずっと東京で働くよりかは、地方移住を考えていたので、29歳のときにスパイスボックスを退社し「地域おこし協力隊」制度を活用した起業家育成プロジェクトの立ち上げメンバーとして遠野に移住しました。
今は、「地域文化×デザイン」というテーマを軸に独立して株式会社化し、お祭りのブランディングや、お守りを作ったり、小学校の演劇のプロデュースしたり出版をしたり、多岐にわたって仕事をしています。
小谷:なぜローカルに興味を持ち、飛び込んだんですか?
富川:地方のよいものが顕在化されていないなぁというなんとなくモヤモヤしたものが学生時代からずっとあって、東京に出てからもその思いは変わらず……。そこで、30代での自分の働き方や、働く場所を考えたときに「地方で働く」選択がより色濃くなっていきました。
ローカルで活動する際にスキルより大切なこと
小谷:実際に移住してから6年目とのことでしたが、どのように活動していったのですか?
富川:まず1年目は土地に慣れるところからでした。冬はマイナス20度になりますし、親戚もいない状況。地元の人たちとの関係性作りを意識していたら、徐々に映像やパンフレット作りの仕事の依頼が来て、それらを見た人がまた依頼をしてくれてっていう連鎖が始まりました。4年目にもなると任されるスケールが大きくなっていったり、任される領域も増えていったりしてパブリックな仕事もいただけるようになりました。
小谷:ローカルで活躍したい場合は、「関係性作り」がやはり重要なのでしょうか?
富川:東京などではスキルに対して、お給料が発生すると思うんですけど、地方では、関係性を築く前にスキルを前面に出しすぎると、懸念を示す方も出てくるんです。どうしても上から目線に聞こえてしまうこともあるので、個人としてどういう想いをもって土地に向き合あおうとしているのか?など、 まずは1人の人間として認識されるかが重要だと思います。けっこうな確率で「どこ出身なんだ?」「いつまでいるんだ?」とまずは聞かれるので、スキルよりも、自分がどんな人で何がしたいのかを少しずつ伝えました。その後に仕事がくるイメージです。以前制作させていただいた神社のお守り作りは、いくらかっこいいデザインができる人でも、外から来てすぐの人には任せてもらえない仕事ですからね(笑)。
「ローカルでブランドを作る」「ローカルをブランドにする」
小谷:ここからは実際に事例も踏まえながら、活動についてお伺いしたいです。
富川:今年は「遠野が香るアロマスプレー」を開発しました。遠野はカッパが有名な場所でもあるので、妖怪や神様と出会う瞬間のハッとした気持ちをイメージした香りになっています。実はこのプロジェクトも、アロマを作れる岩手のスタートアップ会社さんから「富川さんなにか一緒に作りませんか?」ってお声がけいただいたのがきっかけなんです。僕も香りのプロダクトを作ってみたかったので、世界観やコンセプトは僕たちが作って、何度も香りの施策を試して商品化していきました。
小谷:遠野だからこそ、カッパや妖怪というテーマに目をつけたのでしょうか?
富川:そうですね。例えば、これがもし愛媛に移住していたらみかんについてだったかもしれないです。ただ、どの地域に行ったとしても、その土地の人が気づいていない良さや、伝えきれていない良さをピックアップして、より掘り下げてPRしていきたいという気持ちはあります。地元の人が地元の良さに気づけないことはどの地域でも起こりうるので、僕みたいに外から入った人が新鮮な目で見られるのは強さでもあります。
小谷:その地域ならではの良さやアイデンティティは、どうしたら見つけられるものですか?
富川:長く続いているものにはそれ相応の理由があるもの。環境や地形的要因なのか、保存食や知恵なのか、他の地域ではなかなか真似できないものがあると思うんです。差別化要因になりそうなものを、客観視して見つけて、ブランディングしていくことが重要です。ローカルで挑戦してみたい人は、土地が持つ要素と、自分が持つ能力や関心領域とを掛け算して差別化していくといいのかなと思います。
自己をブランド化していくのも重要?
小谷:富川さん自身が遠野で自分のブランドを確立されている印象ですが、ご自身としてはどうですか?
富川:実感はありますね! 間違いなく東京にいた頃よりも知名度が上がっていますし、遠野の力を借りて、自分のブランドが形成されている感じはします。地域に対してよいことをしていき、地域からもフィードバックをもらいながら相乗効果でブランドイメージが形成されたり、よい関係性が築けていると思います。
小谷:最後に、学生も多く見ていますので、学生が今すべきことはありますか?
富川:学生のうちからその地域に入っていくのは重要だと思います。「入る」という言葉を使うくらい地方は別世界というイメージもあるかもしれませんが、実際に2,3ヶ月でも現場を見ることで、どんな暮らしをしていて、どんな習慣があって、どんな時間が流れていて……というのが分かると思うので、頭でっかちじゃなく、自分の言葉でその地域を話せるようになることが重要なのかなと思います。そこから就活に挑んでもいいと思いますし、東京に戻ってもいいと思います。
社会人の方でもリモートワークが増えていて、どこの地域でもお仕事できると思うので、ぜひ皆さん岩手にも遊びに来てほしいです!
対談を終えて
小谷:自分自身も鳥取・島根という山陰地方出身だったこともあり、同じように遠野で働くことをキャリアの選択肢にして、チャレンジしようか非常に悩んだときもありました。ローカルに飛び込むということは、勇敢さも必要だと思いますが、それ以上に僕は「自分がその地域に入って貢献できるスキルへの自信」も大事だと思っています。
実は、遠野のイベントに参加したことがあります。服に名札をつけるのですが、そこに「名前」と自分が持つ「スキル」を書くんです。しかし、自分が何を持っているのか、自分に問うたときに、何も書けなかった。そのことがずっと心残りで結局、僕は東京に残ることを決めました。そこに何も書かない、という「勇敢さ」でも良かったのかなと今となっては思うところもありますが、当時僕は書けませんでした。
という背景もあるので、勇敢に飛び込めるタイプではないけど、地方で自分が貢献できるものを見つけたいと思う方は、富川さんがおっしゃられた通り、①その地域の人や文化、歴史、特性などのアイデンティティを知ること、②自分がそこである種“ソトモノ”として関われる起点となるスキルと自信を持つこと これらに向き合ってみることをおすすめします。