curry menu archive 3 干し鱈のスープカレーのビビンバ
3皿目は干し鱈のスープカレーのビビンバです。
1皿目の韓国カレーのアレンジと言えそうです。
メニューとしてはありがちな感じですが、このカレーには発想のブレイクスルーがあったみたいです。
それまでのizonのカレーは、
『ターメリックライス+ラムキーマカレー+ダルカレー+無水チキンカレー+アチャール=おいしいカレー』という風に足し算的な発想でメニューを考えていました。
ピザを例にすると、
プレーンピザ+サラミ+トマト=おいしいピザ
プレーンピザ+生ハム+パイナップル=おいしいピザ
プレーンピザ+ホワイトソース+海鮮=おいしいピザ
プレーンピザ+牛肉+カレー=おいしいピザ
という感じでしょうか。
ピザ屋や牛丼屋やココイチなんかのメニューは、ベースの上に足し算して自分なりのおいしいを追求していくようなスタイルですので、外食業界では一般的なノリなのだろうと思います。
大手の会社であれば、裏打ちされた理論に基づいて大勢の大人たちが会議を重ねて決定していきますから、『おいしいとは何か』という哲学の沼に嵌りづらいような設計になっているのでしょうが、izonはヨシフジ一人で営業するカレー屋ですので、『おいしいカレーとは何か』という哲学的な問題にたった一人で立ち向かわなければなりませんでした。
ヨシフジはこの頃、自分の作るカレーが本当に『おいしいカレー』なのかよくわからなくなって悩んでいたようです。
足し算的なメニューの考え方は、『おいしいカレー』が明確にあって初めて有効ですが、『おいしいカレー』がブレブレな場合、何を足していいかよくわからなくなります。
こうしたジレンマの中で、干し鱈のスープカレーのビビンバが生まれたわけですが、メニューの考え方の部分に革命が起こっています。
このカレーは『ビビンバは、最後にスープをかけて食べると美味い』というヨシフジの体験がベースになっています。
何かを足して『おいしいカレー』を創造していくのではなく、『おいしいビビンバの食べ方をカレーで再現する』という風に、食べ方からアプローチするという点が革命でした。
韓国料理屋や焼肉屋の石焼ビビンバに付いてくるスープ、いわゆる中華スープの一般的なレシピを私は知りませんが、鶏ガラと塩、みたいなシンプルなレシピなのだろうなと思われます。
それをカレーへアレンジする際に、過去に作った干し鱈のスープカレーの別バージョンが採用されています。
以前成功したココナッツミルクとの組み合わせではなく、中華スープに寄せたのだろうなと推察されます。
写真ではわかりづらいですが、ミンチの下に3種類のナムルがあり、それぞれスパイスでアレンジしてあります。
ゴマの葉のペースト(高級)も添えてあります。
ビビンバですから、ターメリックライスではなく普通に炊いたジャスミンライスです。
これがカレーなのかどうかはよくわかりませんが、やると決まってからは何の迷いもなくスムーズに完成して、「自分のやりたいことに近づいた気がした」とのこと。
一人で毎日同じ仕込みをして、悩みながら改善を重ねていくことから脱出しています。
こう書くと投げやりな雰囲気が漂いますが、次のステップに進むためのポジティブな決断です。
『おいしいカレー』の追求は他の店に任せて、『izonにしか作れないカレー』をやろうという英断のように思います。
決意はかっこいいですが、それを継続していくために、アイデアを出し続けなければならない、というまた別の苦しみを抱えることはこの時点では気づいていなかったとのこと。
上手くいったと一人でほくほくしていたようです。
干し鱈のスープカレーのビビンバを食べた記憶のある方からのコメント、ご連絡をお待ちしております。
リアルな感想が発掘できれば随時追記予定です。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
つづく。