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izonのスパイスカレー 38皿目 ジャールナン・パンタチャートカレー
こんばんは。
38皿目は2022年10月、KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭とコラボした時のカレーについてです。
演劇祭に出店するだけでは面白くないということで、izonの店主ヨシフジ君は出店当日行われている舞台芸術をテーマにカレーを創作することにしました。
当時のインスタから引用します。
明日?今日?10月15日の17時位からロームシアター京都の広場でカレー作ります。
@kyotoexperiment さんとのコラボカレーです。
タイのアーティスト、ジャールナン・パンタチャートさんの作品をカレーにしたいと思い、やっとメニューが完成致しました。
タイ🇹🇭とミャンマー🇲🇲との事を題材にされてるそうで、京都EXPERIMENTさんのインタビューの一文。
タイ北部のチェンライ県にあるメーサーイ地区の市場に行くと、シャン語*2、北タイ語、タイ語、ビルマ語という4つの言語が飛び交っています。
タイとミャンマーの国境付近の町では、色んな言葉が行き交っているそうです。
で、出来たメニューですが…
ビルマ語🇲🇲ミャンマー、ライギョ出汁のスパイスモヒンガー
シャン語🇲🇲ミャンマー、シャン族の方々は、発酵食品をよく使うそうなので、納豆のアチャール。
北タイ語🇹🇭タイ、塩サバのナムプリック。
タイ語🇹🇭タイ、バイマックルー、レモングラス香る、ココナッツミルクスパイス炊き込みご飯。
これで決定したいと思います。
お楽しみに〜。
で、できたのがこれ。
![](https://assets.st-note.com/img/1684159760983-NYlSd2NkQr.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1684159847971-xiT13MP3d2.jpg?width=1200)
演劇の内容は、タイとミャンマーの国境にまつわる様々な状況をテーマにしたものだったようです。
その複雑な諸所の問題の中から、言語と地域性を抽出してカレーへと落とし込みました。
見えないボーダーを挟んで仲が悪いという事例は枚挙にいとまがありません(ご近所トラブルや知人との不仲なんかも含めて)が、タイとミャンマーもご多分に漏れず複雑な問題を抱えているようです。
そういった状況をすぐさま解決することは難しいでしょうが、「そんな状況なんだ」と内外の人々が知ることは、改善のきっかけになる可能性を秘めています。
ジャールナン・パンタチャートさんも舞台芸術を通じてその状況を表現することで、何かのきっかけになればという気持ちもあったのではないでしょうか。
(違ったらすみません)
izonの今回のカレーは「いろいろあるけど仲良くやってこうよ」というメッセージも込めてワンプレートを創作したそうです。
![](https://assets.st-note.com/img/1684161459233-PLQSrcQs1k.jpg?width=1200)
複数のカレーを会場へ持ち込むのは物理的に難しかったのでカレーは1種のみ、「雷魚出汁のスパイスモヒンガー」、副菜に「納豆たくあんアチャール」「塩鯖のナムプリック」「カチュンバ」、ご飯は「ココナッツミルクスパイス炊き込みご飯」という構成でした。
モヒンガーとは、ナマズ出汁を使ったミャンマーの麺料理の名前です。
ナマズを仕入れる予定だったのが売り切れていて、急遽雷魚へ変更となりました。
ヨシフジ君も初めて扱う魚だったのでどんな出汁が出るか不安だったようですが、いいスープが取れました。
淡水魚特有の臭みは無く、魚と動物の中間のようなまろやかなスープが取れて成功を確信したようですが、雷魚の身には小骨が細かく入っていてほぐすのに苦労したようです。
「雷魚出汁とほぐし身を使った」「モヒンガーのスパイスアレンジスープを」「麺ではなくご飯にかけた」訳ですが、これは広義のカレーだと思われます。
そして「納豆たくあんアチャール」ですが、
『ミャンマーのシャン族の人たちは発酵食品を食べているらしい』
『その中には納豆のようなものもあるらしい』
ということで、日本を代表する発酵食品の納豆とたくあんをアチャール(オイル漬け)にしました。
なぜこれが今まで無かったのか!と誰かに怒りたくなるくらい美味しくて、「カレーの付け合わせ、何が一番か論争」の新たな候補として推挙しておきます。
ヨシフジ君の着想の原点となったシャン族に感謝申し上げます。
納豆たくあんアチャールは「納豆たくあんアチャール奴」というアテミールスとしてizonの夜営業にたまに登場しますので、また食べる機会があるかもしれません。
日本のカレーの付け合わせにはまだまだ無限の可能性があるのだ、ということに改めて気づかされた副菜でした。
本場のインドやスリランカなどにある副菜をそのまま作るのではなく、『日本のスパイスカレーには何ができるのか』ということを真剣に考えていないと出てこないアイデアじゃないかなあ、なんて思ったり。
福神漬けやらっきょうは勿論美味しいですが、そこに安住せず求道するからこそ発見があるのだと思います。
「塩鯖のナムプリック」は塩鯖のディップです。
直訳すると、
ナム=水
プリック=唐辛子
となります。
塩鯖、水、唐辛子、をペーストにしたものだと思われますが詳細なレシピは不明です。
ヨシフジ君は『副菜を含めたワンプレート全体の塩分濃度をどうするか』ということを常に考えているようです。
今回はメインのカレーがしゃばしゃば系でしたので、そちらの塩分濃度を上げてしまうと「最初は美味いけど、後半しょっぱい雑炊みたいになってしんどい」ということが起こります。
なのでスパイスモヒンガーは「完飲しても全く問題ない塩分」に留めておいて、ナムプリックで塩気に立体感を出していくような試みだったのではないでしょうか。
ポークキーマとかだと雷魚出汁の良さがわかりづらくなってしまうような気がするので、塩気も含めたパンチと旨味を補完する意味で塩鯖は適任だったように思います。
「カチュンバ」はizonのカレーに頻出する角切り野菜のサラダです。
インドではレモン果汁を使うようですが、izonではライム果汁を贅沢に使っています。
ライムのフレッシュな酸味と生野菜の食感がカレーに彩りと食べやすさをプラスしてくれます。
ジャールナン・パンタチャートとは関係がないのかと思いきや、「タイ料理のサラダのドレッシングは、レモン果汁だったらがっかり、ライム果汁だったらテンション上がる」ということをヨシフジ君が以前語っていたので、タイ風のカチュンバである、と捉えれば整合性が出てきます。
(さすがにこじつけかもしれない)
「ココナッツミルクスパイス炊き込みご飯」はタイでよく使われるハーブのバイマックルとレモングラスを使用。
平たく言うと、グリーンカレー風味の炊き込みご飯です。
グリーンカレー美味しいですよね。
カレーを1種しか使えない分、ご飯をカレーらしくすることで実質2種、という乱暴な解釈もできますし、それに、炊き込みご飯には何故だか食べた時のお得感があります。
実質2種。
![](https://assets.st-note.com/img/1684172741962-sbQKes7x3s.jpg?width=1200)
KYOTO EXPERIMENTの会場である京都ロームシアターの広場で1日のみ出店、翌日izonの店舗でも1日のみ提供されました。
出店時には「ジャールナン・パンタチャートカレー」と書かれたボードも用意して気合を入れて臨みましたがなかなか売れず。
『舞台芸術とカレーのコラボとか意味わからんすぎるし雷魚なんて無茶やったんや』と悲観するチームizonでしたが、運営の方が来場者・演者の方々に宣伝して下さり、一気に長蛇の列。
なんと一瞬で完売しました。
改めてKYOTO EXPERIMENT運営の方々に感謝申し上げます。
そして後日、アーザーデ・シャーミーリーさんをモチーフにしたカレーを作ることになるのですが、それはまた次の次くらいのご紹介になります。
izonのインスタグラムでも当時の様子が確認できますのでよろしければそちらもご覧下さい。
最後までお読みいただきありがとうございました。
では。