curry menu archive 36 スパイス&ハーブ アテミールスセット
こんばんは。
本日は2022年9月の仮営業期間の集大成であるアテミールスセットをご紹介します。
アテミールスとは、アテ(お酒のアテ、おつまみ)+ミールス(スパイスを使ったおかず)というイメージのヨシフジ君の造語です。
これまでの間借り期間はランチのみの提供でしたが、新店舗の正式なオープンを見据えてコツコツと準備を進めていました。
カレーを食べるだけでなく、仕事帰りに軽く一杯、という使い方もできるように、スパイス一品料理の試作を重ねていたのです。
ワンプレートのカレーであれば、カレーや副菜の中に個性的なキャラクターを据えても全体のバランスが取れていればそれでOKですが、一品料理となるとそうはいきません。
「物足りない」「刺激が強すぎる」=まずい、ということになってしまいます。
カレーは試作しませんが、一品料理の試作を重ねていたのは、このあたりに理由がありそうです。
初めての試みですので試作にはなかなか苦労したようですが、その成果をワンプレートに全部盛ってしまおう、という夜営業の宣伝も兼ねた企画だったようです。
まずはメニューを見てみましょう。
驚異の16種盛りのミールスセットです。
ざっくり大別すると、
1. 居酒屋メニューのアレンジ
2. アジア料理のアレンジ
3. インドの副菜のアレンジ
4. その他
に分かれるのではないかと思います。
1.に入るのは、「あさりのスパイスディル酒蒸し」「とり肝のココナッツミルク煮」「台湾風からあげ」「ホルモンスパイスどて煮」「スパイスなめろう」でしょうか。
居酒屋メニューへと翻訳すると、「あさりの酒蒸し」「とり肝煮」「とりから」「どて煮」「なめろう」となります。至ってベーシック。
例えば、あさりの酒蒸しは居酒屋だと日本酒を使いますが、白ワイン、ホールスパイス数種、ディルという香草を使って新たな味わいへ昇華させています。
アイデアの基は居酒屋メニューにありますが、そこからの発展は様々です。
とり肝煮は生姜と一緒に甘辛く炊いたものが付き出しなんかによく出てきますが、世界の暑い地域でよく食べられているココナッツミルク煮へアレンジ。
台湾風からあげはいわゆる鶏排といわれる台湾屋台名物のからあげではなく、八角の効いたルーローハンぽい味付けのからあげであるところにオリジナリティがあります。
どて煮にはごろごろとホールスパイスが入り、なめろうは自作したスパイス味噌とアジを叩いて大葉を盛り付けています。
1.のメニューたちは、『日本の居酒屋文化に既に存在する定番をスパイス料理へ昇華したアテミールス』
という感じでしょうか。
続いて2.に入るのは、「豆もやしのクミンナムル」「青パパイヤのサラダ」「干し豆腐のナンプラーパクチー和え」「タラのハーブニョクマム煮」「スパイス麻婆豆腐」です。
ナムルは韓国、ナンプラーパクチー和えと青パパイヤのサラダはタイ、ニョクマム煮はミャンマー、麻婆豆腐は中国、となりましてアジア各国の食堂メニューですね。
現地メニューのレシピにスパイスやハーブが入っているものが多いですし、特に気を衒って新しいことをする訳ではなく、基本的に現地風の味付けで、日本人でも食べやすいようにアレンジしたり、スパイスを加えて個性を出したりしているのがポイントです。
2.のメニューたちは『世界の定番料理を、食べやすくアレンジしたアテミールス』という具合になると思います。
続いて3.に入るのが、チキンターメリックスープ、明太ダル、山芋のタマリンドアチャール、ナスのアチャール、ジャガイモのサブジです。
インドの定食に添えられる副菜たちを、そのまま作っているものもありますし、アレンジを加えているものもあります。
チキンターメリックスープは手羽元を使った鶏スープがベースですので、手羽元の煮込みの派生ともいえますが、けっこうな量のスパイスが入っていますので、インド風のスープを目指したものと思われます。
(いろいろ調べていたらタイ南部の料理に似たようなレシピがあるようなので、そちらかもしれません)
明太ダルは、過去に作ったことのある料理で、curry menu archive 33にも紹介しています。
インドの母の味である豆カレーと明太子を合わせたものですね。
続いてアチャールですが、まずはアチャールとは何かを簡単におさらいします。
アチャールとはインド及び周辺国でよく食べられる漬物の総称で、オイル漬け、酢漬け、塩漬け、なんでもアチャールと呼びます。
日本のカレーの付け合わせといえば、らっきょうや福神漬けが一般的ですが、インドでは「〇〇のアチャール」となるようですね。
山芋は生のまま、酸味のあるタマリンドという果実と一緒にオイル漬けにしました。
居酒屋メニューの山芋短冊も意識しているのだと思います。
ナスのアチャールはインドでは定番の副菜です。
副菜とは箸休めであり、メインの料理とまぜまぜして食べる脇役でもあったりするアンニュイな存在で、定義も曖昧でつかみどころが難しいですが、izonにおいてはアテミールスとして提供する場合には、その一品で完結するように作られていて、ワンプレートのカレーを構成する一員として提供する場合には、互いを補完する一部なんだとご理解いただければと思います。
ジャガイモのサブジはじゃがいものスパイス炒め煮で、インドでは定番の副菜です。
インドの人々は宗教上の理由から大っぴらに酒を飲みませんので、アチャールやサブジは「定食における副菜」というポジションに甘んじていますが、日本であれば、奨励こそされませんがアチャールでのかけつけ一杯は可能ですので、今後アチャール・サブジ飲み文化が醸成されていくのかもしれません。
3.のメニューたちは『インドの副菜を、酒に合うアテミールスへアレンジ』したものと言えると思います。
4.に入るのが、「シナモン香る焼ブドウとクリームチーズ」です。
フルーツのオーブン焼きとクリームチーズの取り合わせは、ヨーロッパでよく食べられるワインのお供という感じがしますが、そこにシナモンパウダーをプラスしてエスニックな感じに仕上げています。
4.は『欧州版居酒屋である、BALメニューからの派生アテミールス』と言えるかもしれません。
そして全部盛ったものがこちら。
もはや何料理かはわかりませんが、izonの初期アテミールスを盛りに盛ったらこうなったという一皿です。
2023年4月現在、アテミールスは仕入れや仕込み状況に応じて日替わりで用意するというスタイルに落ち着いています。
このアテミールスセットから半年以上が経ち、ヨシフジ君のアテ調理スキルもかなり高まってはいますが、世界一周カレーの仕込みが最優先なため、あったりなかったりするのが実情です。
ご来店の際にはスパイスカレーizonのインスタグラムのストーリーズを参照していただくか、電話で直接問い合わせていただければと思います。
「市場に行くのが一番楽しい」と本人の弁ですので、市場で仕入れた新鮮な魚介を使ったアテミールスが、ある日にはあります。
(ない日にはない!)
最近だとウナ肝のアチャール、牡蠣・マンボウの腸・ホタルイカの自家製キムチ、コッペガニのウカエブ、サザエのスパイスアヒージョなどを提供していました。
アテミールスの記録やトッピングについても憶えている限りnoteに書いていきますので、今後ともよろしくお願いします。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
またまたー。