curry menu archive 32 izon的チキンカレー
こんばんは。
今日は2022年9月ごろに作ったカレーについてです。
前回のフィジーカレーをもって間借り営業は終了となりまして、2022年10月から実店舗での営業が決まりました。
新たな場所は京都の有名店、naturemian spice curryさんの営業されていた店舗で、内装やキッチンの設備などはそのまま引き継ぐことに。
元々営業されていたnaturemian spice curryさんは京都の人気店でした。
店主の江美さんは素晴らしい人格者で、そんな江美さんのお人柄とスパイスカレーに魅了された人たちがたくさん集まる素敵なお店だったようです。
(naturemian spice curryさんのインスタグラムにて、営業されていた当時の様子を垣間見ることができます。店内に立派な花が飾られていたり、ピラミッド型のカレーも美しく、素敵すぎます。カレーファンならずとも要チェックです)
お店は継続されたかったのだと思いますが、諸事情により2022年8月をもって惜しまれつつの閉店となりました。
そのまま空き店舗になってしまうのもなあ、というところにたまたまizonのヨシフジ君を紹介して下さった方がいらっしゃって、偶然、そして突然、ヨシフジ君は間借りのカレー屋を卒業し、店舗を持つ一国一城の主になることが決まります。
いきなり営業はできないということで、9月は試作を兼ねた不定期営業の期間に。
その時に作ったのが、izon的チキンカレーです。
これまでは、世界一周カレーということでどこかの国をテーマにカレーを作ってきましたので、スタンダードなカレーらしいカレーをほとんど作らずに店を切り盛りしてきたヨシフジ君。
やはり定番があったほうがいいだろうということで、カレーらしさを重視したチキンカレーを作りました。
ただそれだけでは飽き足らず、
「甘味、苦味、酸味、塩味、辛味のペーストを混ぜながら食べる」
という趣向を凝らします。
この試食会には僕も参加していたので、遅ればせながらレポートさせていただきます。
まずは、甘味のバナナミントココナッツペースト。
バナナにミントの爽やかさとココナッツのコクをプラスしています。
クラッカーやビスケットなんかと一緒に、コーヒー紅茶のお茶請けとして食べたいような味わいです。
このペーストだけではごはんと合うようなものではないですが、チキンカレーと合わせると不思議と調和してコクと甘味が増しました。
酢豚のパイナップル、ポテサラのリンゴ、などに代表される『おかずにフルーツは必要か』論争は、日本の各家庭、友人間などでずっと続いているかと思いますが、世界の食文化を見渡せばおかずにフルーツは当たり前、どころか極めて自然に溶け込んでいるので、日本人もそろそろ積極的に取り入れるべきではないでしょうか。
その入り口としてスパイスカレーはとっつきやすいような気がします。
(誰が提言しているんだ)
色がきれいですね。
京野菜の万願寺唐辛子のペーストです。
万願寺唐辛子を食べたことのない方向けの補足ですが、万願寺唐辛子には”唐辛子”というワードが入ってはいますが、別に辛くはないです。
見た目は巨大なシシトウという感じで、じゃこと一緒に出汁で炊いてごまと鰹節をふって食べることが多いように思います。
炭火でばりっと焼いて塩で食べるのも美味しいですね。
そんな万願寺唐辛子を苦味担当のペーストに。
ペースト単体でも酒のアテには抜群の味わいだと思いましたが、カレーと合わせることでなんともいえない滋味が広がりました。
色鮮やかな酸味のトマトペーストです。
これはシンプルトマトの味わいでした。
izonではトマトを使ったカレーを作る際には、あえて酸味が飛ぶまで煮詰めてトマトの旨味を優先する作り方を採用することが多いようですが、今回は酸味を狙ったペーストですのでトマトの酸味を前面に出したシンプルな仕上がりになりました。
カレーと混ぜるとフレッシュなトマトがイタリアンな雰囲気を演出してくれます。
こちらは塩味担当のイカの塩辛バターペースト。
写真を見るとクミンが結構入ってますね。
イカの塩辛自体も塩分がありますし旨味も凝縮されている食材ですが、更にバターも追加してかなりパンチのあるコクウマスパイスペーストになりました。
このペーストをプレートの右サイドに配置することで(右利きの人の一口目)、「カレーの初手はパンチのある味を」を心掛けるizonらしさを押し出しています。
このペーストもスティックサラダと一緒に、酒のアテで食べたい一品です。
こちらも色鮮やかな大根のペースト。
大根おろしの辛味とチリパウダーの辛味、種類の異なる辛味をミックスしたペーストです。
食べてみると、辛さの質がちゃんと分かれて感じれるのに、大根のみずみずしさと旨味がそれぞれの辛味を包み込んでいて不思議なまとまりがありました。
辛さを追加する場合にはチリパウダーや山椒などの辛いスパイスを振りかける、追いスパイス方式が一般的かと思いますが、たっぷり水分を含んだ大根チリペーストを使うことで、全部混ぜた時のバランスや食べやすさも考慮したのだと思います。
生の大根にはアミラーゼ(糖質分解酵素)、プロテアーゼ(たんぱく質分解酵素)、リパーゼ(脂質分解酵素)などが含まれていて、カレーと一緒に食べるのは栄養学的にも最高のチョイスだと思います。
完成系のチキンカレーです。
最終的に大根チリにはグリーンチリを使ったようで、写真は緑色になっています。
カレー自体はシンプルなチキンカレーですが、ペーストを少しずつ混ぜると表情が変わり、全部混ぜるとよくわからないけどうまさが増す、スリランカカレー的な要素も含んだカレーになりました。
五味のペーストはヨシフジ君の頭の中で味覚のマトリクス図を作成して、甘味、苦味、酸味、塩味、辛味をチキンカレーと混ぜた時にいい塩梅になるように配分したそうです。
(マトリクス図は、年配の方ですとボキャブラ天国でタモさんがネタを貼っていたボードを、若い方は『マトリクス図 ゲーム』とかで画像検索して参照していただくとわかりやすいかと思います)
このチキンカレーとても美味しいのですが、定番メニューとして継続的に提供することはできませんでした。
世界一周カレーとの両輪で営業しようとしたところ、仕込みが大変すぎて物理的に不可能だということがわかったため、現在は世界一周カレーと夜営業用のスパイス料理での営業となっています。
(それでも2週間スパンで変わるカレー3種と副菜4種、市場での仕入れ状況によって変わるスパイス一品料理を10種ほど作り続けているのは驚異的です)
「スパイスカレーの付け合わせには大根おろしとフレッシュフルーツ」という新機軸を打ち出した斬新なチキンカレーですが、現在は休眠中で、またいつか訪れる復活の日を首を長くして待っています。
この時作ったペーストのアイデアはその後の世界一周カレーの副菜にも引き継がれていて、
「あっ、あの時のあいつみたいなのがいる」
ということがありますので、今後のカレーにも注目していただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次のカレーもよろしくお願いします。