【コラム】気象とは、変化し続ける複雑な循環システムである

風は、太陽光が大気を熱した結果によるものだ。太陽光そのものが直接大気を動かしているわけではなく、太陽光により熱せられた海面が蒸発し、空気が膨らみながら上昇する。上昇した空気は上空で冷やされ、より温度が低い方へと流れていく。これが循環のはじまりであり、風の発生メカニズムだ。

1m²の面積に加わる大気の圧力を気圧というが、とある2つのポイントの気圧を比べると、より大きい数値・より小さい数値が割りだされる。小さい数値のポイントから大きい数値のポイントを眺めたときに高気圧と呼ばれ、その逆に大きい数値から小さい数値を眺めると低気圧と呼ばれる。

このように、地上から2つの気圧を比べると高気圧の部分と低気圧の部分が出てくるわけだが、高気圧の頂上付近から低気圧を眺めると、滑り台のような傾斜となっているのだ。暖かい空気は傾斜に従って温度が低いエリアを駆け抜けながら、同時に温度も中和されていく。

地球上で太陽光によってもっとも熱せられるのは赤道付近だ。赤道付近の海面が激しく蒸発して水蒸気になっていることが、大気の上昇にかなり貢献している。北半球に焦点をあてて説明する。赤道付近で上昇した空気は上空で北半球と南半球に分かれ、それぞれ30度付近で海へ降下する。

海へ降下した空気は南北へ分かれる。南へ向かった風は赤道付近へ向かい、再び上昇していく。北へ向かった風は北緯60度付近で上昇し、上空で南北に分かれる。南へ向かう風は、北緯30度付近で海へ下降する。北へ向かう風は、上空だけでなく海面付近も北へ向かう。

北緯60度付近では、上空だけでなく海面付近も北へ向かう。大気全体が北極点へ向かうのだ。このように、地球全体を取り巻く空気の流れを大気循環という。30度ずつ存在する大気循環を赤道付近ではハドレー循環、中緯度をフェレル循環、北極付近を極循環という。

太陽光によって生じる大気循環に加えて、地球の自転も大きな影響を与えている。今までの説明では、風が南北へ向かうという言い方をしているが、実際のところは地球による自転の力が加わることで、力の方向がねじ曲がる。これを、コリオリの力という。

コリオリの力が加わると、それぞれの循環において東・西へ流れる力が加わることになる。赤道から北緯30度の大気循環（ハドレー循環）では、海面付近は南西へ、上空では北東へ流れる。赤道で上昇し、上空で北東へ流れ、30度付近で下降し、海面を南西へと流れているのだ。

中緯度のフェレル循環では、30度付近を下降し海面を北東へ流れ、60度付近で上昇し上空で南東へ流れる。北緯60度から北極点の極循環では、海面も上空も北へ流れる。ただし、この3つの循環が通用するのは、地球をシンプルな球体とみなしたときだ。

地球は球体だが、その表面は平坦ではなく、山や谷などの地形が存在する。緯度を保ちながら、日本から西へ向かうと、ヒマラヤ山脈にあたる。この高山地帯に大気があたると循環が乱れ、約6000km離れた日本の天候にも大きく影響を与えてくる。

地球上の大気循環は、点と点を結んだだけのシンプルな線形システムではなく、様々な条件がリアルタイムで変化する複雑な非線形システムだ。人類が自然現象を理解し始めた太古の昔から、大気は絶え間なく流れ続けている。このような複雑性と変動性ゆえに、天気予報に誤差が生じるのは避けられない現象なのだ。