見出し画像

もし天2024 参加記

高2(相当)の冬にもし天に参加しました。いろんな人から刺激を受けて、学問に対する姿勢や天文学への興味が大きく変化したイベントでした。
学んだことやこれからの目標などを書いていこうと思います。
(もし天後に振り返りとして書いたトリガーシートの内容を参考にしています)

もし天期間中の公式のnote(毎日の様子をまとめてある)はこれを見てください。

期間中の面白かったことなどをまとめた、私作成に(ふざけた)備忘録については下のこっちの記事を見てください()

(こっちはあとでかきます!!)


0.もし天とは?

まずもし天について軽く説明します。
正式名称は、「もしも君が杜の都で天文学者になったら」です。

もし天は、毎年年末に宮城県仙台市にある東北大学理学部キャンパスと仙台市天文台で行われるイベントです。
全国から作文選考で選ばれた、天文好きの高校生12人(年によって変動あり)が集まって、合宿形式で1週間天文漬けの日々を過ごします。

SLAや教員の皆さんの力を借りながらも、基本的に同じ班の高校生4人を中心に活動します。テーマ決めから観測プロポーザル提出、観測、考察、研究発表までを自分たちの力で完遂します。そのおかげもあって、達成感がすごいです。
(あと終了後はかなりロスになります)

その他詳しい情報は、もし天homepage を見てください。

1.参加前の状況

私の天文学に関しての背景

私は科学の中でも、特にスケールが大きい現象が好きです。

普段は天文学ではなく、古生物学を専門に勉強しています。
古生物学では、地層や化石から様々な情報を読み解きます。
山の中や砂漠を歩いて恐竜化石を見つけたり、あるいは砂粒の微化石から過去の環境を推測することさえできます。
何億年も前の、現代の生物からは想像もできないような太古の地球生命のことを石は保存しています。時代を越える玉手箱みたいですね。
そんなわけで、普段は地質が好きな地質屋をやっています。

恐竜博物館

天文学には、身近なところでありふれている物理法則がはるかに遠い宇宙でも適用できるところにロマンを感じています。
望遠鏡で遠い過去から来た光を見て、物理とか数学を使って広大な現状を説明できることはとてもすごいことだと思います。

小学生の頃からよく望遠鏡を使って天体観測をしてたので、天文(というより星空?)に興味がありました。田舎に住んでるので、夜みる満天の星が綺麗で好きでした。(家から天の川見えます)

転機が訪れたのは中学3年生のときです。
たまたま第1回の開催が決定し、応募者を募っていた天文学オリンピックに参加しました。運良く、国際大会の代表になり、半年近く天文を勉強することになりました。数学も物理もわからない中学生に天文をするのは正直早すぎたので、もちろん最初は何もわかりませんでした。若干数式アレルギーになりかけました()
それでも必死に勉強して、気づくと物理で表す天文に1番興味が湧いてました。

色々あって高校に行かずに家で勉強してたら、高1は天文から離れてました。

高2の夏に美ら星研究体験隊というイベントに参加しました。石垣島で小惑星を探すイベントです。(以下参照)

このイベントに参加し、天文好きの学者さんや高校生と喋ったり、3日間天文に浸ったことで天文学への熱意が再燃しました。

応募前のイメージ

もし天のことは中3の頃から知ってたけど、参加はなかなかできずにいました。
以下の理由(偏見)で参加を渋ってました。

・年末だから飛行機代が高い
(それ以上の価値がありました)

・仙台光害すごそうなのに可視光か…って思ってた
(特に都会なのは駅の周りなだけで山の方は結構暗かった)

・高校生が1週間考えたところで大した研究はできなそう(ド偏見)
(受講生のレベルが高いしSLAや教員の先生方のご協力もあってとても充実した議論ができました)

参加のきっかけ

今年も行くのを渋ってたのですが(前述の理由で)、IAO同期で美ら研にも参加してたななろっさくんから強く勧められて応募を決めました。

行くきっかけになった
アツい

作文選考

毎年希望者が多く倍率が高いので、作文による選考が行われます。
今年はこんな感じでした。

作文課題

課題2は割とすぐ書けましたが、課題1にかなり苦労しました。
前提知識が無いと疑問は生まれないので、まずは分野を興味があった銀河に絞りました。シリーズ現代の天文学を読んだりしながら、自分が知りたい謎をダークマターの正体に決めました。
結局、ミッシングサテライト問題や高速度分子雲、VERAによる距離測定(美ら研の伏線回収)と絡めたりしながらいい作文が書けました。
800字にまとめるのはかなり大変でした。
この作文を納得がいくレベルに書くのはかなり大変なので、早めに取り掛かった方がいいと思います。

受講生に採用されてからもし天参加まで

採用されたあとは、天文の勉強をひたすらしました。
1週間謎について考えるための、知識や天文学史、計算方法などを学びました。
出発前の2週間は、いろんな本を読みながら、自分がどんな謎を解明したいかずっと考えてました。(案を10個くらい持って行った)

2.もし天の様子

前置きはさておき、そろそろ本題に入ろうと思います。

班活動について

もし天は基本的に4人1班の計3班に分かれて活動します。
(各班に受講生より若干多い人数のSLAがつきます)

班活動で心掛けたことは以下の通りです。

①全員が活発に意見交流できる場を作る
私の班は元気な子が多かったので、初日にかなり仲を深められたこともあってここはばっちりでした。中間発表会などでもうちの班の質問回数はトップでした()

②他の人の意見を尊重し、相手の意見に建設的な意見を返すこと
(自己主張が強いだけだと崩壊する)。みんなよく人の話を聞いて濃い議論をしてました。鋭い指摘も飛んでてよかったです。

③全員のレベルを合わせること
私は最初これの重要性がよく分かってませんでした。正直、周りのレベルに合わせるのは面倒だと感じていました。でも、先生からご指摘をいただいてその重要性に気がつきました。「全体のレベルが上がってみんなが同じ理解度になれば、おもしろい意見が出てくる」ということを、徐々に実感しました。
(幸い、1日目のうちに気づくことができました)
おかげで、私の班は1週間、全員が高い理解度をもって熱い議論を交わせる良いチームになりました。このことはもし天で得た大切な気づきのうちの一つです。
なので私は、よく話の進行をまとめて理解度を揃えたり、宿で同じ班の子に知識を共有したりしてました。(SLAのお手紙でリーダーシップ…って書かれまくった)

④楽しむ!
1週間ずっと過ごすけど、もし天が終わったらなかなかあえません。写真をたくさん撮ったり、ご飯の時間にたくさん話したりしました。

1週間の成果

他班との交流

基本的に同じ班の人と過ごす時間が圧倒的に多いので、私は積極的に他班に喋りかけに行きました。普段あまり人と喋らず、話すことが苦手なので、行く前はかなり不安でした。でもそれを全部捨てて(いい判断)初日に全員と喋って受講生全員のライングループまで作りました(すごい)。
宿にいる時間や登下校中、休み時間などにたくさん喋った結果、12人全員と仲良くなれました。他班のSLAともたくさん喋れました。

また、クリスマス会や中間発表などで他の班と喋れる機会が多かったのもうれしかったです。

クリスマス会

SLAや先生方

SLAや先生方ともたくさん話す機会がありました。
特にSLAはあまり歳が変わらないのに優秀な方ばかりで、大いに刺激を受けました。自分たちがやりたいことをより高い精度でやるためのアドバイスをたくさんいただきました、ありがとうございます。

先生方にはプロポーザルや発表会でするどいご指摘をたくさんいただきました。
その質問は専門的なことばかりではなく、研究の本質をつくものや、ぼんやりしていた仮定を明らかにしてくれるものばかりでした。

みんな発表前は緊張しまくってたけど、私はどんな新しい意見が来るのかすごく楽しみでした。(中議論やってたことも…)

また、宇宙なんでも相談会では先生の話を聞いて将来のビジョンの参考にしたり、宇宙の面白さを再確認することができました。

東北大の見学

東北大学で基本的に活動していたので、キャンパス内のいろんなところを見たり学食を食べたりしました。いい経験です。

青葉台キャンパス

3.受けた刺激

ここからはトリガーシートの内容をそのまま持ってきたので、敬語じゃないのも混じってます

自分自身から

普段はあまり人と話すことがないので、自己が認識している自分しか知ることがなかった。また、もし天で自分がどんな風に意見を交わして研究するかも想像がつかなかった。
実際参加してみて、自分自身で気付いたことと、他の方からの指摘で気づいたことがある。

自分自身では、
・自分がこんなにも天文学が好きな人間だということに気づけた。
・考えること/しること に対してこれほどまでに興奮できて楽しめるんだということに初めて気づいた。

また、他の参加者から指摘されて気づいたのは
・自分に割とリーダーシップがあること(協調性がないと思っていた)
・考えたり議論することが本当に楽しそうに見えた(らしい)

もし天は自分の科学/天文への興味の深さに気づかせてくれた上に、その興味を増幅してくれた。人生の分岐点の一つになったと思う。

他の受講生から

主に2つです。

・天文への自信をいい意味で壊してくれた
(参加者のなかでは)かなり天文学に詳しい自信があったし、天文の興味も自分が1番だと思っていた。
実際来てみると、班の中ですら自分より遥かに多い知識量を持つ子や、論理的思考がすごくできる子、知識がなくても毎晩質問して必死についてくる子がいた。天文学への興味、知識、根性など全ての点で自分がまだまだなんだと気付かされた。
しかしこれはあまり悲観せず、自分が成長するためのいい機会になったと認識し、これからのステップアップに繋げたい。

・天文への姿勢
自分の興味が狭かったことに気付かされた。
また、最初から研究をうまく進めるために、観測限界や物理的計算の難易度から研究内容を絞ってしまっていたことを激しく反省した。
プロポーザルでは「なぜそれをやろうと思ったかの動機」にはじめはうまく答えられず、持っている知識で可能性と興味を狭めていたことに気づいた。
また他の班を見ると、壁にぶつかっても挫けずに、その分野に対する興味とモチベーションで戦っていた。
自分はその壁をはじめから避けていたことを実感するとともに、今後研究する上での大切なキーポイントになった。

SLAから

・数年後の目標として
自分とほぼ変わらない歳のスタッフが、天文や物理に対する知識をすごく持っていて感心した。数年後の自分を考える上でとても重要なロールモデルになった。

・SLAの姿勢
多くの知識をもって冷静に指摘してくれるのがSLAだと思っていたが、それだけではなく受講生と同じくらい楽しんでいたのが印象的だった。また、学問に対しての謙虚な姿勢を尊敬したい。
受講生にヒントを与える前に自分で考察してすごく盛り上がってたスタッフや、楽しそうに教えてくれるスタッフ、自分たちをみて嬉しそうにしているスタッフをみて、数年後の自分がこうであればいいなと思った。

・こんなSLAになりたい
議論中はレベルが高い話をしながらも、自分たち全員が理解できるように話してくれた。
ただ数式や方法を投げるんじゃなくて、なんでそうなるかを教えてくれたり、なんでこの研究がやりたいかを根本から見直させてくれた。
このおかげで、班の全員が能動的に一週間を過ごせたり、自分の力で楽しんで考察をすることができた。
自分がこれをやるにはまだ力が足りないので、いろんな勉強をしていく上でこういうことができるSLAになりたいと思った。

先生方から

・楽しむ研究者になりたい
教員の先生方に自分の研究分野の話を聞いてみると、とても楽しそうに話されていたのが印象的だった。自分もこんな研究者になりたいと思った。

・研究に対する考え方
プロポーザルや中間発表でするどい質問が飛んできたことで、研究自体に関する考え方が大きく変わった。研究しようと思うモチベーションが明確じゃないと、研究そのものが不透明になることを痛感した。知識の羅列ではなく、自分が知りたいことを真摯に追い求める姿勢が大事だと思った。
研究方法をとことん吟味することになったが、それがなにより自分の知りたいことを知るために必要なことだと分かった。

・研究者としての目標
各分野の第一人者の先生が多くて驚いた。「結局研究者になるには自分が1番分かってる分野を一つは持たないと」と言われ、本当にその通りだと思った。

通りすがりの学部生から

・c班によくきてくれた通りすがりの学部生がいる。
SLAじゃないにも関わらず、1週間よく顔を出してアドバイスもたくさん頂いた。
知識量と考察力が凄すぎて大学院生だと思っていたが学部生で驚いた。
学年やレベルに関わらず、自主的に天文を勉強してるとこんなにすごい人になれるんだなと思った。 また、SLAでもないのに真摯に質問に答えたり内容の復習を手伝ってくれた。天文に心の底から興味がある人の素晴らしさに感心し、自分もこうなりたいと思った。

もし天の経験から学んだこと

・研究は気合い(?)
ひとみ望遠鏡を用いたプロポーザルを作成したが、天候不良のため思うように観測ができなかった。すばる望遠鏡などを用いる場合でも、天文学ではこのようなことがよく起こることを知った。研究がうまくいかずに研究計画を一から練り直すことになっても、現実を見てやれることを探して知りたいことを知ろうとする根気強さが必要だと思った。

4.気づいたこと、心に残った言葉

The most incomprehensible thing about the universe is that it is comprehensible.

Albert Einstein,もし天テキストより

私の天文学への熱意の根幹の部分をこんなに簡潔に表す名言が!!

「なぜその研究をやりたいか」ここをはっきりしておかないと、将来「あれ私なんでこの人と結婚したんだろう…」ってなっちゃいますよ(笑)

教員の先生より、観測プロポーザルにて

研究に対する姿勢のイメージを大きく塗り替えたひとことです。

気合いでやろう!!!

SLAの方より

研究にはpassion が大事なんだなという教訓を得ました。

このマニアックな観測の何に魅力を感じたんですか?

教員の先生より、プロポーザルにて

何を知りたくてなんでその観測をやりたいと思ったのか、1番大事なところが欠けていました。

できれば1人だけが質問に答えるのではなく、みんなが意見を出して質問に答えられるようになってほしい。そうすると、全員の理解度が高い状態ができて思いもよらなかったアイデアが出てきたりするから。

教員の先生より

当初の私にはなかった考えです。これ以降1週間この考えを大切にしました。

そして…スライドの文字が小さい!!(笑)

教員の先生より、成果発表会にて

スライドの文字は大きくしていきたいです。

もし天という"非日常的な"場所で得た価値観・創造力を、必ずこれからの"日常に"持ち帰ってください。これから先の高校生活ではSLAも先生方もいません。これを読んでいるあなたが、自分の力で道を創っていくのです。

トリガーシートより

もし天で得たものをここで終わらせず、これからの鍵にしていきたいです。

5.現在の心境

非常に深刻なもし天ロスになっています。

1週間がこれほどまでに充実していて、離れたくないと思った経験は私の人生史上初めてです。同時に、この1週間に対しての後悔はあまりありません。

スタッフの皆さんや班員のみんなが活発に議論してくれたりサポートしてくれたおかげで、私が当初想定していたよりもはるかに充実した1週間になりました。

1日が過ぎるごとに、研究のレベルや根幹となるモチベーション、進捗などが急増していったのがかなり快感でした。
みんなで激しく議論したり、プロポーザルで落とされたり、根幹から考え直した時は、しんどいというよりもむしろとても楽しかったです()
なぜなら、ここで深く考え直すことが自分たちが知りたいことを知るために最も重要なことだということをもし天からまなんだからです。

発表前はかなり緊張しましたが、対等に議論したり考えたりすることが、途中から何よりも楽しみになっていました。(おそらくプロポーザルも、参加者で1番楽しんでいた。)

6.もし天の魅力

・1週間同じメンバーで天文についてひたすら考え続ける時間。
これは他ではなかなかできないもし天だけの財産だと思います。

・全国から集った天文好きの高校生、いろんな大学から来たすごいSLA、天文学の最前線を行く教員の先生と会話できること
この3タイプの人と同時に交流できるのはすごいです。

・SLA さんがもし天OBOGでもし天が好きな人たち
もし天愛に溢れてるので素敵な一週間をすごせます。

・考えることの楽しさを知れる
自然と天文への興味が増すでしょう。

7.これからの展望

[今後を考える上で重要な分岐点となったもし天での経験]
もし天に参加したことで、天文への興味が自分で認識していたよりも遥かに大きくなっていたことに気づいた。
また、サイエンス全般がどれほど好きなのかに気付かされた。
(とくに研究方法を吟味したり、結果から興味深い事実を見つけたり、考察でこの研究の可能性について考える時は、興奮で全身が沸きたって発狂しそうな感覚を覚えた。)

[高校生の間のビジョン]
今まで、大学では古生物に専念して天文は高校生まででやめるつもりだった。
しかし今は天文の方が好きになりつつある。
好きな二分野を両方とことん追求するのは大変だと思うが、これが自分の幸福値を最大化する唯一の方法だと気付いた。
そのために、今年度はダブルメジャーできる大学に行くことを第一に目標として努力に励みたい。
同時に、もし天で得た天文への興味を忘れないように好きなことを追求したい。

[大学に入ってからのビジョン]
上記のように、古生物と天文両方への興味を完全燃焼させたい。
そのため、まずは物理や化学、数学、生物、地学、英語…などさまざまな基礎勉強に励みたい。その後は自分の興味の波に乗ってひたすら好きな研究をやりたい。 もし天で通りすがりの学部生を見ていて、大学生って楽しそうだなと心の底から感じたので、このような勉強も非常に楽しみである。

[SLAになったらやりたいこと]
もし天への執着が強いので、私はSLAとして絶対に戻ってくる。断言できる。 もし天で真剣にレベルが高い議論をしているSLAを見て、かっこいいと思ったし、とても楽しそうだと思った。
受講生から刺激を受けつつ、数年後の姿として「楽しそうで羨ましい」と思われるスタッフになりたい。
また、自主的に考えさせて天文学への興味を増幅させる一方で、きちんとサポートして1週間走り抜けさせてくれたAndrometal班のスタッフのような人になりたい。

8.まとめと感謝

もし天は天文についても、他の人の考えを理解する中でも、考えることがこんなにも楽しいんだと気付かされたイベントでした。
これは今までどんな勉強をしていても、ここまで実感することはできなかったことです。
得た知識や考え方、研究方法はこれからとても役に立つでしょう。 
しかし、それ以上にこの気づきは人生においての大きな進捗になったと思います。 もし天は確実に、今後の人生の指針や考え方を大きく変えた経験です。

この感動を引き継ぐために、またSLAとして戻ってきます。
天文への興味を大切に、これまで以上に頑張りたいです。

いいなと思ったら応援しよう!