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進歩することで失うこと~旧岩崎邸庭園で「今」をみてきた話~

OpenAIの動画生成AI「Sora」が公開された。20秒の(当初1分とされていたが、)自然な動画生成が可能とのこと。未来がどんどん更新されていきますね。

そんな中、東京都台東区にある旧岩崎邸庭園を訪れる機会に恵まれた。ここはNHK龍馬伝のロケ地!!弥太郎ー🐓!!!(大興奮)

旧岩崎邸庭園とは、三菱財閥岩崎家の本邸だった建物とその庭園で、園内の歴史的建造物は国の重要文化財に指定されている。
メインの見どころである洋館は1896年(明治29年)に竣工。三菱財閥初代の岩崎弥太郎が屋敷を構え、そして岩崎久弥と引き継がれたとのこと。

その日はちょうど2年に一度の障子の張替えの日で、和館の縁側が全開放しており、いつもよりも開放的な景観を楽しめることとなった。

なんとも幸運なことに、張替え作業で来園していた現場監督さんが、建物の技術やちょっとした裏話をしてくれたのだ。

有名な洋館2階の壁紙(一面に金箔が施されていて、柄が凸凹のエンボスになってる。この壁紙の部屋が欲しいw)

復元された金唐皮紙の壁紙。革のようにした紙を型押しして、金箔をはった後に絵の具で彩色するらしい。手間も技術も費用もとんでもない。部屋一面に張られているが奇抜な様子はなく品が良いおもてなし空間になっている妙。

壁紙を作る技術も特殊な日本が誇る伝統工芸。鹿鳴館でも使用されている金唐皮紙というもの。この壁紙を張り替えるのに一部屋1億円はかかるという。そうそう気軽に張替えることはできないが、技術者を育てるためにも長く間をあけたくない。という葛藤があるみたい。

型押し用の版木ロール。これを再現させるだけでもすごい。


東側。あとから増設したというサンルーム。

東側のサンルームには雨戸がない。一面ガラス張りなのに。問題なく維持できているそうだが、ここのガラスは割れてしまうと復元はできないらしい。
その理由は、「技術が進みすぎて同じガラスが作れないから」なのだそうだ。
1階上段のアーチ状の窓ガラスをよく見ると、移る景色や向こう側が少し歪んでいる。純度が低いのだ。現代はガラス制作技術のレベルが上がり、透明度の高いものができてしまうので、レベルの低いゆがみのあるガラスをつくることが難しいらしい。

他にも、屋根のスレート瓦の材料は福島県産なのだが、今保管している在庫が切れたら終わりだそうだ。原料となる石材はすべて津波で流されてしまった、と。地下に保管されている在庫が終わるまでには代替品を探さなくてはいけないとおっしゃっていた。

屋根の上にのかっている尖がり帽子みたいな三角のオブジェは銅製。銅はGHQ占領下になった際に押収される対象だったが、没収されないよう(変な色に)塗ってまぬがれたとのこと。職人の知恵で守られた部分だと。

発展する事でできなくなることのパラドックスを思い知らされた。
・技術の進歩や発展で、逆に作れなくなってしまうものもある。
・自然界の原材料には限りがあるので、地球上になくなったら終わり。
・AIやロボット技術者の育成で伝統工芸や技術がどこまでのこせるのか。

原材料の減少滅、維持費の問題など、物理世界にはどうしても限りがある。
土地も含む空間の有効化をかんがえたら、こういった歴史的な建物などは、将来的にはバーチャルな世界に移設されたりするのだろうか。

仮想空間でよりリアルな歴史空間を体験したりできるようだし。一部の資料館などではプロジェクトマッピングやIT技術を駆使して街並みや場面の再現が体験できると聞いたことがある。それはそれで教材エンタメとしても面白いので増えるといいなと思う。

テクノロジーの進歩という意味では、バーチャルな生成AIや宇宙開発は面白い。それをさらに、こういう伝統や歴史的な教育教材みたいなところへの還元も期待したいなー。(ひと部屋の壁紙の張替えに1億円かぁ)

ということで、旧岩崎邸庭園でテクノロジーの進化と歴史の移り変わりの間に立たされていることを実感。時間の傍観者ホロスコープ (ギリシア語で「時の見張人」の意味)として「今」を体験してきたのでした。ではまた。

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