前科もの#03
D警察署の留置所で20日居た訳だけど、ここは今思えば会話に対しては緩かった。
だから英語すら余り話せないウズベキスタンのU君とも、身振り手振りも交えて、向こうに彼女がいるだとか、○盗の仕方やら何とか分かるようになり、便箋に中国人のC君含む3人の似顔絵とかU君が描いたり、インスタアカウントを書きあってたら、バレて烈火の如く怒られた。
そもそも便箋は手紙を書く為だけに使用OKで、絵、ローマ字、など日本語以外は書いてはいけない。
のに落書きして遊んでたら怒られて当然。
他、トイレにはトイレットペーパーは無く、外に置いてあるキッチンペーパーみたいのを数枚持って入るのだけど、それに3ヵ所穴を空けて美容パック~とかやったのは良いとしても、それをそのまま置いて検察庁に行って帰って着たら、全部自分のせいになっててこれまた烈火。
となりの房にはS宿のボクサー兼ヤ○ザSが居て、壁をボコボコ殴るのだけど、中々良いリズムなのでこっちも、向こうが終わると同じリズムで壁を叩いてたら、今度は逆サイドの部屋からバンバンと反応が来て、即興ドラム大会みたくなってて拳が痛くなった。
S氏はエロ本を沢山持っているとUから聞いて、差し入れでエロ本OKなのだと知った。
しかしこんな所でエロ本読んでも欲求不満になるだけだろう。
自分は、朝に廻ってくる本棚から手塚治虫「ブッタ」樹木希林「一切なりゆき」星野源「よみがえる変態」「スラムダンク」3巻で挫折、などを読んだ。
ここに居るときは、この後の事は想像だにしていなかったので、Uとマッサージをしあったり飛び蹴りの練習をしたりわりかし元気だった。
S氏は不起訴になったっぽく、釈放されるとき、檻の外からこちらを振り返り、ガッツポーズのサインをした。
先に行くぜ、ということだろう。
僕には自分に負けんなよ、とのようにも受け取れた。
いつだって敵は常に己だけだ。
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