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コンドルは飛んでいく?~インカとチベット
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佳子さまがペルーをご訪問。マチュピチュ遺跡に「とても壮大な」と御感想を述べられたという。まさに「壮大」の一言。もう少しつけくわえるなら、神秘とロマン。古代インカの人たちは、どのような方法でこの空中都市を作り上げてきたのだろう。文字をもたなかった彼らが滅びてしまった今では、それは永遠の謎だ。
ペルーといえば、フォルクローレ。フォルクローレで一番有名な曲といえば、やはりこれではないか。
『コンドルは飛んでいく』(El Condor Pasa)
ポール・サイモンは1964年、パリのフォーククラブに出演中、同地で活躍するフォルクローレ・グループ、ロス・インカスと親しくなり、この曲に感激。『明日に架ける橋』のアルバムに独自の英語歌詞をつけて収録した。演奏はインカスのレコード音源をそのまま使っている。S&Gのレコードで同曲を知ったという人も多いだろう。僕もそうである。
▲は1974年のソロ・ライブのもの。伴奏するウルバンバンは、旧インカスを再編成したグループで、リーダーはチャランゴ(アルマジロの甲羅で作った弦楽器)担当のホルヘ・ミルチベルク(2022年、93歳で死去)、ケーナは、あのウニャ・ラモス(!)。冒頭のMCで、「ウルバンバというグループ名はペルーの古都市マチュピチュを流れる河から付けられた」とサイモンの解説が入る。
もともと、この曲は、1913年にペルー人の作曲家ダニエル・アロミア=ロブレスが同名のオペレッタのために書き下ろした楽曲だった。サイモンの英語歌詞の他に、スペイン語の歌詞も複数存在する。アレンジもさまざまだが、僕はやはりインカス版が一番好き。ラモスのソロレコードも同アレンジだった。
El Condor Pasaはそのまま直訳で、「コンドルは飛んで行く」だが、定冠詞elがつくことから、このコンドルは、インカ帝国を意味しているという解釈もできるし、現に僕はそう解釈している。つまり、「コンドル(インカ)は飛び去って(滅亡して)しまった」、スペイン人によって奪われたかつての栄華をなつかしみ憐れむという思いがこもっているのではないか。
勇猛果敢なインカの戦士たちだったが、わずか180名のピサロの軍勢に打ち負かされ、改宗を拒否した皇帝は処刑されてしまうのだ。ここに栄華を誇ったインカ帝国は滅亡してしまうのである。1533年のことだった。
インカには文字の他、車輪の文化がなかったことが、異国人の侵略を容易にしたともいわれている。ピサロ軍は、台車にインカ人には未知の銃器を積んでゆうゆうと宮殿を包囲した。急な山道だったが、現地人に教えてもらったコカを葉をたっぷり食べた牛馬は疲れを知らなかった。帰りは帰りで、皇帝から奪った黄金の宝物をいっぱい乗せて台車は下ってくるのである。
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僕はインカの滅亡を思うと、反射的に現在のチベットの姿がそこに重なりあって仕方がない。
インカとチベット、実は似ているところは多い。
インカの首都クスコは標高3400メートル、チベットのポタラ宮は標高3700メートル。まさに空中都市の趣である。
インカもチベットもコンドル(ハゲワシ)を神聖視しているのも同じだ。
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チベットでは鳥葬などの儀式で、カンリンと呼ばれる人間の大腿骨で作った笛を鳴らすが、アンデスのケーナ(足笛)も昔は人間の骨で作られていたのだという。昔、鹿という名の生年が王族の娘との身分違いの恋に落ちた。若い恋人は手に手をとって逃亡するが、結局、娘は死んでしまう。鹿は恋人の大腿骨を拾い笛にし愛の形見とした。ケーナ―の哀愁極まる音色はここに誕生したのである(諸説あり)。
実 際、今も遺跡などから人骨や動物の骨で作ったケーナ―が出土するという。
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そして、インカは大航海時代の16世紀、チベットは現在進行形で異民族の侵略を受けていることである。
2006年、中華人民共和国は青梅省西寧からチベットに向かう青蔵鉄道を開通させた。中共政府は、チベットの経済発展、観光開発、物資流通のためといっているが、いつその鉄の車輪が人民解放軍の狼どもを送り込まないともしれないのだ。
スペイン人は南米全土で、インディオの女性との間にメスチソ(混血児)を残したが、チベットでは民族浄化が始まっている。男は去勢され、女は漢族の男と強制結婚させられているのだ。このままいけば、50年を待たずして純血のチベット人は地球から消えてしまうとさえいわれていう。
アンデスのコンドルは飛んで行ってしまった。ヒマラヤのコンドルもその運命をたどるのか。いや、まだ辛うじて間に合うのだ。
(書き下ろし)
おまけ。ロス・インカス版。インストで聴くと、改めてこの曲のよさがわかるよ。
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