目からビーム! 170「人間の感覚として」どうなのだ
起こるべくして起こる事故だったのだろう。辺野古新基地建設の土砂搬出が行われていた名護市安和の桟橋で、ダンプの前に立ち進路妨害中の反対派活動家の女性を制止しようとした警備員の男性が車体と接触して死亡したのだ。
僕も辺野古での活動家の無謀な抗議活動はこの目で見て知っている。それまで談笑していた男女(中高年がほとんど)が、ダンプがくるたびに手製のプラカードをもって、その前に立ちふさがり、あるいは後方に回りこみ、運転手や作業員に罵声を浴びせるのだ。驚いたのは、車体の下に滑り込もうとしたおばさんもいたことだ。危なっかしい限りである。
彼らのその行動の速さには驚いたし、かなり場慣れした感じだった。どんなに急に飛び出しても、ダンプは自分たちの面前で停車してくれるという安心感もあっただろう。運転手のほうも、毎度のことと慣れっこになったのか、いら立った素振りもなかった。人間、慣れが一番怖いというが、結局は最悪の事態が起こってしまったのである。
むろん、基地に反対する自由は保障されるべきだ。基地問題の複雑さも理解できる。とはいえ、「沖縄は米軍基地の七割を押し付けられている」などというが、基地というのは、どこにあってもいいものではない。「最低でも県外」などという発言は無責任の極みだ。その一方で、投機目的の軍用地売買が平然と行われ軍用地成金といわれる人もいると聞く。沖縄は僕のような本土人から見ると、矛盾の宝庫だ。
今度の事故を受け、反基地活動家のグループは、防衛局に警備員の遺族に謝罪を求めるなどの要請文を出したという。事故の原因を作った側が、被害者側にすり替わってしまう、これも沖縄の矛盾か。いや、反基地マジックといっていいかもしれない。
「人が一人死んでいるんだよ。すぐに焼香にいくのが普通だろうが、人間の感覚として」と声を荒げた活動家の小説家は、かつて高江の作業員相手に車で人身事故を起こしているという。事故は今回だけでなかったのである。「人間の感覚として」これに関してはどう思うのだろう。またこの人物は、大坂府警から派遣された機動隊員を挑発し、怒った機動隊員から「土人めが」という暴言を浴びせられたことでも知られる。むろん、どんな過激な活動家に対してもそのような暴言を認めるわけにはいかない。その上で、僕もその機動隊員も沖縄の事情に疎い本土人であることに免じて許してほしいと作家氏にはいいたい。そう、本土人も“本”の字を取れば、土人なのだから。
初出・八重山日報
よろしければご支援お願いいたします!今後の創作活動の励みになります。どうかよろしくお願い申し上げます。