目からビーム!177 島耕作に会ったら、よろしくと
こんな騒動でもなかったら、「島耕作」シリーズが今も続いていることも知らなかったかもしれない。『課長島耕作』の連載が始まったのは、1983年というから、ゆうに40年間以上のロングランということになる。現在のタイトルは『社外取締役島耕作』である。会社勤めを経験したことのない僕には、社外取締役というのが、どんな役職なのかはいま一つよくわからないが、まあ、それはどうでもよろしい。
「こんな騒動」とは、言うまでもなく、作中の登場人物に、辺野古の埋め立て工事の抗議活動家がアルバイトで日当を貰っている旨の発言をさせたことで、活動家周辺と沖縄のメディアが作者の弘兼憲史氏及び掲載誌の出版元・講談社に対し説明を求めた一件である。
これに対し、講談社は、「(日当云々の話は)複数の県民から取材の過程で聞いた」としながらも、「確認の取れない伝聞」であると認め「にもかかわらず断定的な描写として描いた」ことをお詫びし、単行本化に際しては該当箇所を修正すると回答している。
興味深いのは、「伝聞の類でなら複数聞いた」としている点である。実際、僕も沖縄で、その手の伝聞をいくつか耳にしている。いや、辺野古の座り込み活動家から直にこんな話も聞いた。座り込みには、労働組合の指示で来ている人も少なくなく、その場合、1日3千円が出るそうだ。「自分の払った組合費から3千円戻ってくるのだから、日当ではない」というのが、彼の理屈だった。今から7年前、やはり反基地運動にからむ日当報道などで、活動家から批判を浴びたDHC『ニュース女子』の騒動のころの話である。
会社勤めを経験したことのない僕には、組合費の相場というのはよくわからないが、3千円のバックというのは結構大きいのではないか。月3回座り込みすれば、9千円となり、収めた組合費を超えるかもしれない。取材中ずっと、一泊2千円のゲストハウスに泊まっていた僕の感想から言えば、沖縄で9千円といえば、結構使いでのある金額である。『島耕作』該当号にも出てきた、海を望む屋外ラウンジ付きの素敵なレストランに、4人で食事したが、6千円そこそこで済んだのは感激ものだった。沖縄が好きな理由のひとつでもある(だから、全国一律最低賃金には反対だ。そんなことをすれば、地方の観光業は死滅する)。
平日の昼間、座り込みに参加するのは、ストライキ権の行使にあたるのだろうか、会社勤めの経験のない僕にはよくわからない。わかったのは、組合からもらえば、日当にはならないということだ。そう、断じて日当ではないのだ。当事者がいうのだから。
初出・八重山日報