僕が聞いた学徒出陣壮行会
学徒出陣というと、まず思い浮かぶのは神宮の雨の壮行会である。NHKのドキュメント番組なんかだと、当時の記録フィルムに悲壮感たっぷりのBGMを被せて、重々しい雰囲気を演出するのが常だが、僕が元学徒兵の方々から聞いた話はまったく受ける印象が違う。
「女の子がキャーキャー言うので気持ちよかった」とか「割り当てが足りなくて、理系のやつらに助っ人頼んだけど、みんな面白がっていたよ」とか「ドキュメントフィルム見ると、お、俺映ってるじゃん」。さらには、「雨が降ってかったるかったんで、サボって日劇にレビュー観に行ったよ」とか。別にサボってもペナルティがあったわけではないらしい。
それにしても、昭和18年になってもレビューをやっていたというのは驚き。題目は戦時色の強いものだったろうが、「これで踊り子の脚も見納めなあと思った」というから、ラインダンスは健在だったらしい。
これは学徒動員ではなく、海軍予備学生の方のお話だが、なぜ志願されたのですかと聞くと、「当時、大学、しかも私学に通えるというのは裕福な家の者と決まっていた。しかも、学生さんは国の宝ということで、とても大事にしてくれた。旅行に行っても、学生さん、うちでご飯食べていきなさいとか泊まっていきなさいとか。そういう人たちに、恩返しできると思ったから」と答えてくれた。
また、別の予備学生の方は、「新聞を読んでると、刻々と戦況は悪くなるばかりで、ここで我々若い者が立たなければいけないと」
あのう、当時の新聞って、戦意高揚記事ばかりで、軍に都合の悪いことは載せないと聞いたのですが…と僕。
「ハハハ。敵艦何隻撃沈とかの記事は確かに数字の誇張はありましたが、よく読んでみれば、日本がジリ貧なのはわかりますよ」。
そうだよな。当時の大学生といえば、エリート候補生、バリバリのインテリだし、それくらいのリテラシーはあるはずだ。
悲壮、その一言だけで学徒兵を語れない。可哀そうだけで語ってもいけない。わだつみだけが学徒兵の声ではない。