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目からビーム!83 中国語とジェノサイド

 台湾のメディアでは連日、卓球女子で五輪メダリストの福原愛ちゃんの離婚騒動でもちきりだそうだ。日台の卓球界の大物同士のカップルだけに、破局を惜しむ声も多い。
 現役時代、台湾をはじめ中華圏内での愛ちゃん人気はかなりのもので、反日暴動が繰り返されていた当時でも彼女は別格のアイドルとして認知されていたという。
 僕が、愛ちゃんで思い出すのは、得点を入れたときに発するサーッというあの独特の掛け声である。一説によると「ヨッシャ!」の「シャー」が訛ったものとも言われていたが、僕は長い間、中国語の「殺(シャー)!」が語源ではないかとかなり本気で思っていた。
 話は日支事変にさかのぼる。日本軍は「突撃!」の号令で敵に突っ込むが、国民党軍も八路軍も「殺!殺!殺!」を号令にしていた。日本人にとって身を捨てて戦うことが戦闘だが、中国人にとっての戦闘とは、殺しつくし、奪いつくし、焼きつくすことなのである。しかもその殺し方も臓腑を引きずり出す、生きたまま肉を削いでいくなど、残酷を極めた。
 現在の中華人民共和国では「殺」の字も簡体字化して、ツクリがなくなり、「杀」と書くが、この無機質な字面にむしろ、カマキリの捕食のような非人類的な本能を見るようで背筋が寒くなる。
 お次は朝鮮戦争のとき。中国軍の捕虜になった兵士がみな過激なコミュニストになって還ってくるのをいぶかしんだ米軍は、「洗脳」という新中国語の存在を知り戦慄することになる。この英語直訳がBrainwashで、今では辞書にも登場する一般語だ、
 ナチスの「ホロコースト」の語源は燔祭(贄を焼いて神に捧げる)にあるというが、中国はチベットやウイグルでやっているジェノサイドを「民族浄化」と呼ぶ。日本語の浄化には「穢れたものを清める」という意味しかない。中国人からすれば、異民族はしょせん穢れた存在であり、それを皆殺しにするのは、清め掃除することに過ぎないというのだ。
中国大陸でのイスラム教弾圧は今に始まったことではない。清朝時代、回族と呼ばれた漢系イスラム教徒は圧政に対し何度も蜂起し、そのつど徹底的なジェノサイドにあっている。中国の歴史教科書では、この回族皆殺しを「洗回」という言葉で教えている。
 中華思想の恐ろしさ、冷酷さ、それは中国語の語彙の中にも見ることができるのである。

初出・八重山日報


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