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わが青春、自販機エロ本の世界⑥
エロ本界というのは、意外に離合集散の激しい業界で、自販機本もまたしかりだった。業界最大手のアリス出版とナンバー2のエルシー企画の合併は、その最たるものだろう。新生アリス出版では、アリス出版社長の小向一実は第一線を離れ、エルシーの明石賢生が現場を担当することになる。それに伴い、小向の盟友だった亀和田武が退社。よくも悪くも書生っぽさが身上の亀和田とサブカル&アングラ色の強いエルシー一派とでは肌が合わなかったようだ。その後の亀和田の活躍は以前、記したとおり。
この大合併も長くは続かず、明石は旧エルシー一派と旧アリスの明石派を引き連れて再度独立、群雄社を立ち上げるのである。群雄社は、その後、ビニール本で一時代を築きあげるが、主力商品はやはり放尿モノで、スカトロの群雄社の異名をとった。
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僕は、ひょんなことでこの群雄社にわらじを脱ぎ、ビニ本、自販機本の世界に身を置くことになるのである。
当時住んでいたアパートのそばにエロ本自販機があった。夜中、酔っ払いがこの自販機を破壊、中のエロ本を根こそぎ奪っていく事件があった。その破壊された自販機に一冊取り起こされた雑誌、つまり泥棒も盗まなかったエロ本――「ガールハンター」という雑誌だった。パラパラめくると、「大竹しのぶにみるうんこの丸め方」という意味不明な記事な目が飛び込んできた。巻末の「今月のブス登場」というグラビアのモデルは本当にブスで笑えた。僕はそれまで、実話エロ雑誌で細々と原稿を書いてはいたが、「ガールハンター」には、書店売りのエロ本には感じることのない、どこかアナーキーでナンセンスなオーラを放っていた。
この雑誌を作っているのはどんなヤツらなんだろ。俺もこの雑誌に書いてみたい。そう思った僕は、群雄社を訪ねてみることにした。19歳の秋だった。(次回へ)
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初出・東京スポーツ(若杉大名義)
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