目からビーム!105 暴走老人よ永遠に~石原慎太郎都を偲ぶ
石原慎太郎元都知事が亡くなった。(※本稿は2022年の記事です)
確かに失言、暴言の類の多かった人ではあるが、東京都知事として、これだけ仕事をした人もいないだろう。ざっとみまわしたところでは、海の森公園構想、ディーゼル車排ガス規制、臨海副都心開発、東京都総合防災訓練(ビッグレスキュー)、米軍横田基地の一部返還、東京マラソンの開催などがある。何かと目の仇にされるカジノ構想ももとはといえば、そもそも石原知事の発想である。多くの都民の理解を得られなかったが、社会党系の美濃部亮吉都政のきれいごと政策によって廃止された公営ギャンブルの復活が年頭にあった。公営ギャンブル廃止は都の財政を逼迫させ、パチンコ産業だけを潤わせる結果を生んだ。美濃部が北朝鮮と深い関係にあったことは今では公然の秘密ですらない。
ヨットマンでもあった石原知事は、領海、領土に関しても並々ならぬ関心をもっていた。72歳のとき、コンクリートで固められた沖ノ島を視察。ウェットスーツを着て素潜りのパフォーマンスも見せた。そして、なんといっても、尖閣諸島を都が地主から買い取るという仰天構想。その資金は全国から募るという。結果的にこれが、事なかれ主義の野田政権(当時)を動かし国有地化が進んだ。しかし、石原知事の求める港湾施設の整備はされず、今もって国民が、沖縄の漁民が自由に尖閣に渡ることはできないのである。
仕事ぶりを比べるのも酷だが、作家、タレント、議員、都知事といった似た経歴を持つ人物に青島幸男氏がいる。この二人、1968年の第8回参議院選にともに初出馬、1位(石原)、2位(青島)で当選を果たしたという因果浅からぬ仲である。
石原氏の暴言はよくやり玉に上るが、青島氏の発言もよくよく聞くとかなりヤバいものがある。たとえば、参議院時代の予算委員会での代表質問で、時の佐藤栄作首相に向かって「財界の男メカケ」と言い放った一件がそうだ。また、三島事件の報を受けて「おかまのヒステリー」と評している。現在の感覚でいえば、これらの発言は、女性蔑視、性的マイノリティ―差別のそしりを受けるに充分だろう。
批判や物議を怖れず信じる方向にまい進する。そういう政治家はもう日本にいなくなってしまったようである。残るのは事なかれと八方美人だけだ。
(初出)八重山日報
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